2022年1月17日月曜日

ジェイムズ・P・ホーガン「創世記機械」(1978)

ジェイムズ・P・ホーガン「創世記機械」(1978)を山高昭訳の創元推理文庫(1981)版で読む。
THE GENESIS MACHINE by James Patrick Hogan 1978
これは数年前に100円で見つけて確保しておいたもの。実はこれと同じ本を高校時代に持っていた。今こうして取り戻して読んでいる。
今ではホーガンのハードSFは「星を継ぐもの」ぐらいしか読まれてないかもしれない。というのも古本屋でJ.P.ホーガンの文庫本はハヤカワも創元もあまり見かけないから。

若き天才物理学者クリフォード博士(たぶん25歳ぐらい)はニューメキシコの幹線道路を自家用車で走ってる。官有地にある合衆国政府の研究施設へ、たまに会合のためにやってくる。研究の進捗具合を上司から口うるさく文句を言われる。実はこの博士は仕事と関係ないすごいことに気づいていた。

ホーガンの他の著作のように、素粒子物理と統一場理論などの70年代から見た90年代の予測を語ってる。そこはよほどニュートンとかブルーバックスとか読んでる人でないとつき合いきれないかもしれない。
なお、この当時はビッグバン理論と定常宇宙論が拮抗。(ややビッグバン勢力が優勢)

一匹狼研究者のクリフォードは「もうこんな職場を辞めて民間研究機関へ行こうかな」と考えてる。月面の研究施設の博士と連絡を取る。
やがて知らない研究者から自身の書いた素粒子の生成と消滅の論文について質問が来る。そして、研究所内部の様子もなんかおかしい…。

ホーガンはコンピューターセールスマンからSF作家に転じた人。他の著作でも見られるように、軍とか政府のお役人とか大嫌い。全体主義も軍産複合体も大嫌い。この主人公からホーガンの気質が垣間見える。
ホーガンのSF作品ではソ連がまだまだ健在。東西陣営に分かれての戦争と紛争を嫌悪。アメリカは共産主義者たちを倒すために日々最新兵器を研究中。クリフォードもそんな政治に巻き込まれてる。軍事費をもっと人類にとって有効に使うえないのか?

この本の前5分の4はひたすら組織とクリフォード理論。これが70年代の素粒子物理、宇宙論なんかの最新知識を織り交ぜたハッタリ似非科学。ひたすら読まされる。正直早く終われって思ってた。
軍事兵器を座標を指定しての消滅爆破ができるようになる。それをクリフォード博士は見方を騙し、敵国陣営からもアメリカの同盟国からも兵器を無力化して奪う。完璧にコンピュータ(たぶん表紙イラストのような)がそれをやる。

ま、本来であれば短編で良いようなアイデアのファンタジー。あんなこといいな、できたらいいな♪」という作者の妄想ハードSF。こんな発明を実現できた科学者は神になる。

大人になってから読めばさらに面白さがわかるのでは?と思っていたのだが、結果はむしろ逆だった。未来への空想では「断絶への航海」「創造主の掟」のほうが面白かった。
正直この本をもう開くことはない。ホーガンの文庫本はあと「未来の二つの顔」「未来からのホットライン」を読もうと思ってるのだが、なかなか古本屋で見かけない。

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