2022年1月29日土曜日

泡坂妻夫「奇術探偵曾我佳城全集」(2000、2003)

泡坂妻夫「奇術探偵曾我佳城全集」という文庫本が2020年に創元推理文庫から新装版上下巻として発売されたので手にとった。

泡坂妻夫(1933-2009)は日本のミステリー小説作家としてある程度有名なのだが、自分はまだ「湖底のまつり」一冊しか読んでいない。あまりよく知らない。
まずは上巻から読む。1980年から1984年にかけて「小説現代」に掲載された短編11本を収録。上巻だけで463ページとわりとボリュームがある。
  1. 天井のとらんぷ(小説現代 1980年5月号)天井にトランプカードを張り付ける遊びが流行してることに興味を持った大学の先生。遊びの出どころを探るうちに殺人事件があったことを知る。トランプダイイングメッセージもの。
  2. シンブルの味(1980年8月号)バンクーバー団体旅行参加者が死体となって発見される。
  3. 空中朝顔(1980年11月号)朝顔が縁で知り合い結婚した夫婦。そして夫の死。これはミステリー小説とは言えない。
  4. 白いハンカチーフ(1981年4月号)なんとお昼のワイドショー形式の戯曲。少女歌劇団の寮で起こった集団食中毒の意外な顛末。番組ゲストの曾我佳城がアッサリ犯人を指摘。
  5. バースデイロープ(1981年11月号)奇術講習会のホテルで起こったOL絞殺事件。凶器は奇術用ロープ?
  6. ビルチューブ(1982年3月号)手品で使用した紙幣が贋札で…という騒動。
  7. 消えた銃弾(1982年11月号)銃弾を使用するサーカスマジックでの誤射死亡事件。
  8. カップと玉(1983年4月号)カップエンドボウル手品のうんちくと暗号。
  9. 石になった人形(1983年8月号)腹話術師が毒殺された事件。
  10. 七羽の銀鳩(1984年5月号)ハト手品の鳩をめぐるちょっとした事件。これもあまりミステリーという感じはしない。
  11. 剣の舞(1984年12月号)奇術にまつわる逆恨み殺人。
引き続き下巻を読んでいく。11本の短編を収録して499ページのボリューム。
  1. 虚像実像(小説現代1985年7月号)ステージ上での殺人事件。
  2. 花火と銃声(1986年1月号)週刊誌記者が射殺された事件。
  3. ジグザグ(1986年12月号)前日のショーでステージに上がった主婦が奇術の道具の中から死体となって発見された事件。
  4. だるまさんがころした(1988年7月号)だるまさんと呼ばれる連続凶悪事件発生中。
  5. ミダス王の奇跡(1990年11月号)雪の温泉の足跡トリック。
  6. 浮気な鍵(1991年7月号)アパートの鍵トリック。
  7. 真珠夫人(1992年6月号)奇術のために借りた指輪をカモメがさらっていく…。
  8. とらんぷの歌(1993年3月号)カードの順番を覚える方法。
  9. 百魔術(2000年1月増刊)江戸時代の奇術伝授本うんちくと毒殺事件。
  10. おしゃべり鏡(2000年1月増刊)鏡文字。
  11. 魔術城落成(2000年1月増刊)曾我佳城、死す?!
泡坂せんせいは1980年から86年まで年に2本ペースで奇術探偵曾我佳城シリーズを発表していたようだ。
今回のこのシリーズを読んでみた理由が、ひょっとするとドラマ「TRICK」の山田奈緒子がマジシャンなのはこの曾我佳城が影響してるのかな?と思ったから。奇術についての豊富な知識が事件の謎を解く。

だが、あまり共通点は感じない。そもそもこの曾我佳城という元奇術師は探偵じゃなかった。たまたま現場にいる。もしくは刑事が頼ってくる。
頭は切れるのだが、それほどのユーモアを感じない。それに美人という以外にキャラと個性がよくわからない。薄い。

正直、期待を上回る面白さを感じたのは「白いハンカチーフ」の1作のみ。このシリーズがそれほど有名じゃない理由がなんとなくわかったかもしれない。やや失望した。

下巻はさらに自分のツボと合ってなかった。最後まで読むことが苦痛になるほど。
結論としてそれほど面白く感じなかったし、事件のほとんどがどうでもよかった。文体も語り口も。
奇術パートが必要性を感じなかった。しかも主人公である曾我佳城はほとんど奇術を使わないという。

この本を褒めてる人も多いのだが、自分としては時間のムダだった。奇術を活字で読んでもよくわからなかったし。
短編は鮎川哲也の「三番館シリーズ」のほうが断然ユーモアがあってクオリティが高く面白い。

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