2022年1月25日火曜日

五社英雄「鬼龍院花子の生涯」(1982)

五社英雄監督の「鬼龍院花子の生涯」(1982 東映)を見る。大正昭和の土佐遊郭を舞台に、母と娘の波乱の生涯の実話を元にした、宮尾登美子長編小説を原作とするヤクザ映画。今回これを見るまで原作が宮尾登美子だということを知らなかった。脚本は高田宏治。

長年自分はてっきり夏目雅子さんが鬼龍院花子なのだと思ってたら違ってた。鬼龍院政五郎(仲代達矢)の養女松恵が夏目雅子で、鬼政が女中に産ませた子が花子だった。
それにしてもこのポスタージャケットに驚く。当時たぶん24歳ぐらいの夏目雅子さんにこんなことしていいのか?という衝撃。そして夏目雅子さんが3年後に27歳で病死してしまった衝撃。

昭和15年夏、若い女性が京都橋本遊郭の一隅で死んでるのが発見される。女の名前は鬼龍院花子。
そして夏目雅子演じる松恵の回想が始まる。大正7年の土佐高知に遡る。まだ人力車がクルマと呼ばれていた時代。庶民がみんな子だくさん貧乏。泣く泣く娘をヤクザの養女に譲る。

鬼政仲代達也とその正妻岩下志麻が登場するシーンから迫力がすごい。仲折れ帽をはすにかぶってタバコをくわえる姿がすごい。
賢そうだという理由で12歳の松恵(仙道敦子)ももらうことにする。ヤクザの親分の家の子になる姉と弟。心細い。
そのおとうさんが背中に刺青で日本刀。岩下志麻「はよおとうさんて言うてみ!」とビンタ。学校へ行かせてもらえない。闘犬を見に連れて行かれる。そういう家庭。

闘犬がこの時代の土佐の娯楽?この現場で勢力争い。闘犬の勝負に物言いをつけてきた末長組は勝った土佐犬を嬲り殺し。鬼政は組長(内田良平)と夏木マリに話をつけにいく。ナメた態度の夏木さんは自身の裸を見せつけて落とし前をつけようとするも、鬼政は女中のつるを連れ帰る。

鬼政は末長の顔を焼いた報復に、三日月(綿引洪)にポン刀で襲撃される。兼松(夏木勲)は脚を斬られる。これがヤクザの抗争だ。
しかし丹波哲郎大親分の介入で手打ちに。鬼政不機嫌。正妻歌は酒浸り。

つる(佳那晃子)が妊娠。この女優は「犬神家の一族」で青沼菊乃だった人だ。
鬼政にとって初めての子花子が生まれる。妾たち〆太、笑若は家を去る。妾と子と正妻と一緒に住んでるとかまるで貴族。
松恵はいつのまにか女学校に合格するも進学に父が断固反対。

映画開始1時間、袴姿の小学校教員となった松恵はやっと夏目雅子さんにチェンジ。
時代は昭和。高知の街にも自動車が走る。花子は着物姿で街を闊歩。この子、ちょっと頭おかしい?

あとはヤクザの家を出て自立しようとする松恵。労働運動に揺れる土佐。
鉄道ストライキに悩む地元名士須田から鬼政に職業労働運動活動家をシメる依頼。この時代のヤクザはそんな仕事を請け負ってたのか。ここで若き日の役所広司さんがスト代表者としてチョイ役出演。

依頼主からケガ人を出さないように言われてたのに、「あんたは侠客じゃなく飼い犬」と連呼するインテリ田辺(山本圭)をボコボコ。
だが、鬼政はこの活動家に心頭してしまいむしろ弱者の味方に。須田から絶縁される。丹波哲郎からも見放される。鬼龍院の凋落が始まる。

刑務所にいる田辺に差し入れ面会に行く松恵。相互に尊敬が生まれる。出所した田辺は鬼政に「松恵さんをください」と訪問。花子を田辺と結婚させようと考えていた鬼政ブチギレ。田辺に指を詰めさせる。
そして松恵を手籠め。腸チフスにかかった歌を病院に入れずに家でシロウト看病。ダメだ。やっぱこの人バカだ。

花子の婚約者の権藤も殺されてしまう。田辺も殺される。鬼龍院一家もみんな殺される。橋を爆破するとか昔の田舎ヤクザはメチャクチャ。ヤクザの身内はみんな不幸。
人の一生は儚い。時代の移り変わり。労働運動やってるだけで治安維持法違反だと警察がやってくるとか嫌な時代。
有名な「ナメたらいかんぜよ!」のシーンは終盤のほう。殺された田辺の遺骨を実家から持ち帰るシーン。当時の流行語。これをBABYMETALが引き継いでる。
田辺父が「犬神家の一族」で古館弁護士役だった小沢栄太郎だった。今回見て初めて気づいた。

この映画、ポスターのビジュアルを見ると夏目雅子さんが主演のように感じるけど、実際はほぼ侠客鬼政の一代記。末長組へのカチコミ鬼政の綿引さんとの斬り合い決闘がクライマックス。滅びゆく者たち。

あと、昔の女優さんはいろいろすごい。夏目雅子のような人気若手女優でも有名監督に脱がされてしまう。

0 件のコメント:

コメントを投稿