2022年1月31日月曜日

岩波新書1785「独ソ戦 絶滅戦争の惨禍」(2019)

岩波新書1785 大木毅「独ソ戦 絶滅戦争の惨禍」(2019)を読む。この本は歴史好きの中でも戦史に興味がある人によく読まれているらしい。

第二次大戦というと日本とアメリカの死闘も酷かったのだが、ヒトラーとスターリンの独ソ戦はスケールが違う。ソ連は解体消滅までその被害を秘匿してたのだが、その後に人的被害が上方修正され、2700万人が失われたらしい。

その途方もない数字はナチスドイツ軍の強大さにもあったのだが、スターリンの陰湿な性格と空前絶後スケールのアホさかげんによるものな気がする。なにしろ独ソ戦開始以前にトゥハチェフスキー元帥以下、有能な赤軍将校たちの大部分を粛清処刑してるのだから。

さらに、日本に潜伏するゾルゲやその他の諜報員からもたらされた「ドイツの侵攻が近い」という情報をことごとく握りつぶしていた。その後に正しかったと判明した情報を握りつぶしてた事実すらも隠匿。現実が見えていないというか、希望的観測で対処し、1941年の開戦から多くの混乱と惨禍をまき散らした。
緒戦の連戦連敗の責任も軍人たちに押し付け、モスクワに召喚して処刑。この時代の徴兵年齢のロシア人に生れなくてよかった。(日本も酷かったが)

双方が怒り狂って戦ったために戦時国際法は最初からほぼ無視。ソ連の捕虜もドイツの捕虜も双方でほぼ殺された。ドイツは捕虜の中にいる政治委員をまず殺した。結果、どうせ殺されるならと必死の抵抗。それはやめたほうが…という現場からの要請もヒトラーは無視。

軍人でないヒトラーは作戦に介入し軋轢。クラウゼヴィッツの伝統を持つドイツ軍人たちはモスクワを攻めるべきと考えたのだが、ヒトラーはコーカサスの油田にこだわった。マイコープ油田を占領したものの、敗走するソ連軍は施設を破壊。結局、石油を得られてない。

1941年の冬は1812年のナポレオンの冬と同じぐらいに異常気象で寒い冬だったらしい。クソ田舎のロシアはフランスみたいに道路がしっかりしてないしガソリンスタンドもない。ドイツはポーランド侵攻と西部戦線で失った将校の10倍以上を独ソ戦開始2年で失った。
一方でスターリンはドイツ軍はモスクワへやって来ると思い込みから脱することができない。議論ばかりで何も決まらないのもよくないが、独裁者もよくない。

そして2度目の冬。スターリングラード攻防戦というさらなる悲劇。スターリンの名前がついた都市を攻略するという目的にこだわったヒトラーの死守命令に、現場の第6軍パウルス司令官も困惑。
さらに第11軍のマンシュタイン元帥を南下させ救援に向かわせるのだが、その第6軍がヒトラーの命令で動けず突囲してくれない。結果、第6軍は消耗しきって1943年1月31日に降伏投降。
スターリングラードで包囲された枢軸国軍の数が今も不明。19万から38万人と推定に開きがある。そのうち生きて帰れた者は6000人。もう呆れるしかない。ハンガリー軍やルーマニア軍はヒトラーのアホ命令に従う義務はないのでは?

独ソ戦は多くの映画になったり本に書かれていてなんとなく知ってはいたのだが、この本を読んで、さらに全体像がよく見えて来た。どのように展開したのかがとても分かりやすかった。つづけてもう一度読み返した。新たにいろんなことを知ることができた。オススメする。ずっと手許に置いておきたい。

PS. ウクライナ情勢が緊迫している。NATO軍によるロシア軍殲滅プーチン退陣バルバロッサが見たい。今度こそ世界はロシアを戦犯国側にしないといけない。ドイツも日本も戦勝国側になるチャンス。
北方領土奪還のためにこつこつ点をかせぎたい。ウクライナはクリミアを、フィンランドもカレリア奪還を。

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