2022年1月19日水曜日

12人の優しい日本人(1991)

三谷幸喜:東京サンシャインボーイズの傑作舞台を三谷幸喜自身の脚本で中原俊監督が映画化した「12人の優しい日本人」(1991 日本テレビ、アルゴプロジェクト)を見る。

元ネタはもちろんアメリカ陪審制度での密室会話劇映画「12人の怒れる男」。さらに「怒れる男」と「優しい日本人」の延長線上にあるのが「十二人の死にたい子どもたち」。

ちなみに自分は中原俊という監督をグランドホテル形式女子高演劇部群像劇映画「櫻の園」の監督としてしか知らない。90年代のみで活躍した人。監督とクレジットされている以上、演出は三谷でなく中原?なぜこの人に映画化の話が行ったのかわからない。まだ映画監督経験のない三谷にはまかせられなかった?

もうほとんど忘れられた映画なのだが、今も活躍する俳優が多く出演してるので見る。
これ、映画として見た人には低評価。映画館で見る舞台上演として観た人にとっては面白かっただろうと思う。映画の文法で作られていない。完全に芝居小屋でステージを見てる感覚のお芝居。舞台作品を映画にしたものはたいてい映画ファンから不評。
映画を見る人は作家としてのメッセージのようなものを読み取ろうとする。だが、三谷幸喜の戯曲はクセの強いキャラが舞台上で縦横無尽に暴れまわり、聴衆をクスっと笑わせることだけが目的。映画としての何かを期待してはいけない。

もしも日本に陪審制度があったら?という戯曲ではあるのだが、事件の真相とかそんなものを求めてもいけない。そんな立派なメッセージもない。
ただ長時間、密室でお互いに主張をぶつけてイライラして疲れる様子を見て笑おうってゆう芝居。みんなめんどくさい。見てるだけで腹が立つ。

有罪か無罪か?その評決をするために話し合うのだが、評決を一致させる話し合いにおいて、最も無能で害悪でしかない登場人物を順番に挙げていく。

最悪な戦犯が陪審員7号梶原善。被害者男性がただただ気に入らないという理由のみによって「あんな奴は死んでいい」「だから容疑者(若くて美人)は無罪」という主張に執着。へそを曲げ大声を出したりして悪質で邪魔。こいつは話し合いに参加する資格がない。評決から締め出すべき。

戦犯第2位が陪審員6号大河内浩。ただ帰りたい。とっとと評決取って帰りたい。なのに偉そうで声がでかく威圧的。話し合おう、考えようという気が全くない。邪魔。

戦犯第3位が陪審員4号二瓶鮫一。この人、TRICK第1シリーズの「ミラクル三井」の回に出てた。初めて名前を知った。(調べてみたら現在なんと84歳!びっくり。)
自分をバカだと思ってる初老の男。論理的に考えることを最初から放棄。ただなんとなく容疑者が人を殺すような人とは思えない…という地点から一歩も出ない。こういう人を話し合いの場所にいさせることは無意味で無益。陪審員10号林美智子もほぼ同じ。

陪審員5号中村まり子は裁判のポイントをメモにして整理してる点で役にはたっている。だが、本人の意見や主張はまったくない。プライド高くへそを曲げるのも最悪。
陪審員8号山下容莉枝はただふわふわしてるだけで何も考えないバカ。こいつの言う事も無意味。典型的な80年代の若者代表。
陪審員3号上田耕一も存在する意味のない烏合の衆代表。何も考えられず司会者の補助に回る。(この俳優もTRICK劇場版2に出てた)

陪審員1号塩見三省も、かつて昔陪審員を務めて死刑判決を出してしまって嫌だった…というだけで思考停止している司会進行役。
陪審員11号豊川悦司は前半まったく議論に参加せず、後半思いつきで議論を掻きまわす。検察側も弁護側も何ら争点にしていないことを今さら問題にするな。
(塩見と豊川はこの年の大河ドラマ「太平記」にも出演してた。)

陪審員2号相島一之も最初から容疑者に殺意ありきで有罪を決めつけてる点で有害かもしれない。だが、これぐらい頑張る人がいないと陪審員制度が無意味。
陪審員9号村松克己は偉そうだがいかにも名士という主張で議論を引っぱる。(調べてみたらこの方も2001年に亡くなって故人となってた)
陪審員12号加藤善博は調子のいいだけの仕切り屋だが一応話をしっかり聴いて自分の意見を変えている。(この俳優は80年代90年代の映画で見かける俳優だが2007年に亡くなってる)

守衛役の人は見たことある。映画「タンポポ」にガラの悪いラーメン屋店主役で出てた。久保晶という俳優だと初めて名前を知った。(この方も現在87歳!)
ピザ屋の配達員として近藤芳正もワンシーンのみ出てくる。

つまり、昔の三谷舞台だと思って見た人は楽しめるし、緊迫の法廷モノ映画として見た人は「時間のムダ」だとしか思えない悪フザケ。
だがこの映画は「時間のムダ」それ自体がテーマ。ラストでみんなげっそり疲れてるところを見るとディザスターパニック映画だったかもしれない。
自分としては普通に面白い戯曲だったが、1回見ればもう十分。キャストを替えて舞台で見たいかもしれない。

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