「楽園のカンヴァス」が面白かったので、引き続き、原田マハ「暗幕のゲルニカ」(2016 新潮社)を読む。
この小説のヒロインも日本人女性キュレーター。揺子は2001年ニューヨーク9.11テロで夫を亡くした哀しい記憶。アメリカと国際社会が殺伐としている今こそニューヨークMoMAに、マドリッド・レイナソフィア芸術センター蔵の「ゲルニカ」を貸与展示できないだろうか?という2003年の奮闘と、1937年スペイン内戦を交互に行き来するフィクション小説。
2003年国連安全保障理事会でイラク攻撃が決定したとき、国連に飾られたゲルニカのレプリカであるタペストリーに暗幕がかけられた…というのは事実だが、あとはすべて架空の国債謀略ミステリー。
かと思ったのだが、その説明もあんまり合ってない。ヒロインは「バスク祖国と自由」に拉致されゲルニカの人質?!
写真家ドラ・マールの目線で描かれるピカソが「ゲルニカ」を制作する過程は、ピカソと美術史に感心のある層にはためになるかもしれない。
ゲルニカと言う絵画がたどった運命に関する知識を得ることはできるのだが、21世紀パートのほとんどは創作フィクション。登場人物も架空。大統領の名前ですら架空。
「楽園のカンヴァス」も創作ではあったのだが面白かった。だが「暗幕のゲルニカ」にはやや失望。21世紀パートの内容が薄っぺらく感じた。
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