2021年11月12日金曜日

八日目の蟬(2011)

角田光代の原作小説を映画化した「八日目の蟬」(2011 松竹)を見る。やっと見る。これ、震災の春に公開された映画。監督は成島出。脚本は奥寺佐渡子。
あんまり見たくなるテーマでない気がして見る気が起こらなかったのだが、褒める人も多いので。この年の日本アカデミー賞10冠。それはすごい。

主演は井上真央。自分、この女優の出演作をほとんど見たことがない。名前と顔を知ってはいてもほぼ未知の女優。
そして誘拐犯の母が永作博美。この人は昔からずっと見てる。当時40歳。

子どもが突然いなくなった母の独白から始まる。誘拐した女のほうを本当の母親だと思うようになった4歳の女の子について語る。恨み節。舞台演劇っぽくて映画らしくない。
どしゃ降りの雨の日、秋山夫妻(田中哲司、森口瑤子)の女児恵理菜を希和子(永作博美)は家宅侵入してベビーベッドから連れ去る。ちょっとの外出とはいえ、なぜしっかり戸締りしとかなかった?

希和子は赤ん坊を薫と呼び愛情をこめて4年育てた。だがそれは未成年略取誘拐。懲役6年を求刑。
赤ん坊だった恵理菜は成長して井上真央。居酒屋バイトが終わるとライター安藤千草(小池栄子)が話を聴きたいと接近してくる。もう何も覚えていないのに…。

行方不明だった女児が戻ってきて「よかったよかった」という事件にしてはマスコミが大騒ぎしすぎな気もする。恵理菜はライターが用意し渡した新聞スクラップ集を眺める。
未解決事件でもないのにこんな事件に強い関心を持つライターとかいるかな?

そして現在と過去を行ったり来たりして事件のあらましを段々知っていくドラマ。永作の4年に及ぶ子育てと逃亡の日々の回想。
永作はガチのワンオペ子育て。誘拐が大ニュースになっているので子どもを誰にも預けられない。泣く子に授乳させようとしてさめざめと泣くシーンは女性にしかわからない悲哀。

田中哲司との不倫の子どもは中絶。なのに夫妻は子どもができて幸せな家庭を築いてる。許せなくなる気持ちも想像できる。この男の都合のいい自己弁護が悲劇の元凶。
森口瑤子がわざわざ大きくなったお腹を見せにくる。ああぁぁ…。なんでほぼ同時期にふたりを妊娠させとんねん。
主要登場人物が女性なので、このドラマに共感と感情移入できるのは女性視聴者だろうと思う。

本当の両親の元へもどった恵理菜は両親を本当の親と思えなくなっていた。森口瑤子は母親として一生懸命なのに、子どもの要求に応えられない。この母はだんだんとヒステリック。家庭不和。こちらも悲劇。

成長したヒロインは家を出て一人暮らしの大学生。言い寄ってくる男(劇団ひとり)がいる。この男も妻子持ち。やっぱり不倫の道。永作と同じような女になってしまう。妊娠してしまう。宿命なのか。

希和子は女だけの共同生活をおくる宗教施設エンジェルホームに子どもを連れて入所。どうしてそうなる?
でもそれしかなかったか。世俗から隔離された駆け込み寺。
代表の余貴美子の雰囲気が異常。希和子の堕胎の過去をお見通し。何やら奇怪な歌を唄う女もいる。
やがて施設に警察?取材?が来るというので施設を母子は逃げ出す。

実は、千草もエンジェルホームで育った女だった。他人との接し方のわからない恵理菜はすべてをさらけ出したこの女だけは受け入れる。かつて希和子と一緒に渡った逃亡先だった小豆島へ一緒に行く。

ふたたび回想シーン。恵理菜を連れた希和子連れたは、施設に拾ってくれた沢田久美(市川実和子)の紹介で久美実家のうどん製麺所で住み込みで働くことに。平田満風吹ジュンの夫婦が親切。小豆島の風景がどこも美しい。
薫は島の子どもと友だちになる。母子は島にとけこむ。けど…、この子って小学校へ行けないよね?母子には保険証もないよね?

島の夏の行事に参加する母子は写真を撮られて全国紙に載ってしまう。フェリーで島から逃げようとしたその時、突然の破局。この別れのシーンは号泣必至。(女児を保護する女性私服警察官役で吉田羊さんがチョイ出演してた。)
写真館主人(田中泯)が撮った写真と20年の歳月を超えて対面するシーンも号泣必至。

親子の絆って何なんだろうね?っていう映画。2010年代を代表する大名作。強くオススメする。
主演の井上真央、助演の永作博美も最大限褒めるべきだが、千草を演じた小池栄子も褒めるべき。演出監督と脚本家も褒めるべき。

主題歌は中島美嘉「Dear」。

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