コナン・ドイル「シャーロック・ホームズ最後の挨拶」(1917)を2018年駒月雅子新訳角川文庫で読む。自分はこれでシャーロックホームズ8冊目。1908年から1917年にかけて初出した7本の短編を収録。では順に読んでいく。
HIS LAST BOW by Sir. Arthur Conan Doyle 1917
「ウィステリア荘」
ホームズの元へ電報を打って駆け込んできたエクルズ氏の話す奇妙な体験。出会って間もない友人の招待でウィステリア荘を訪問。一夜明けたらその友人も執事も料理人も消えてもぬけの殻。そしてウィステリア荘の主人としてふるまってたスペイン人らしきガルシア氏が草地の中でボコボコにされた死体となって発見。
暗号文、窓からのぞく野獣のような不気味な顔、アヘンを盛られた婦人の救出、台所で発見された八つ裂きになった鳥の死骸、血液と動物の骨の入ったバケツ。いろんな要素。
中南米の独裁国家から財を持ち出し逃亡する「サン・ペドロの虎」と復讐のために追いかける組織の戦い。短編にしては面白かった。とくに動物の死骸と骨の正体には驚いた。
「ブルース・パーティントン設計書」
政府中枢にいるシャーロックの兄マイクロフトからの依頼。兵器工場事務員カドガン・ウェストが地下鉄線路上で死体となって発見。盗み出された潜水艦設計図10枚中7枚は発見できたのだが最重要機密の3枚が不明。国家の危機。
シャーロックは聴き込み捜査開始。死体発見現場に血痕がほとんどないことから列車の屋根に死体を乗せ、カーブ地点で落下したのでは?と推測。(このトリックはドラマTRICKにも出てきた)
そして国際的スパイの陰謀。潜水艦の設計図ってクリスティーのポアロ短編でも見た。最初のオリジナルはコナン・ドイルだったのか。これも十分に面白い。
「悪魔の足」
コーンウォールの恐怖とも呼ばれた事件。トランプ遊びに興じていた中年の兄ふたりと妹、翌朝になって妹は恐怖にゆがんだ顔で死んでいる。兄たちも正気を失っている…という事件。さらに、夜まで現場にいた長兄モーティマーまでも同じような状況で死亡。悪魔の仕業か?!
ワトソンがシャーロックを間一髪救うふたりの友情エピソード。
「赤い輪」
下宿屋のウォレン夫人が持ち込んだ「姿を見せない下宿人」の話。通常なら引き受けない依頼だけど勉強のために引き受けるか…。
そしてNYからやってきたイタリアマフィア「赤い輪」の悪党ゴルジアーノが迫る…という社会派スリラー小説。ホームズには英米欧州大陸をまたにかける悪党がよく出てくる。ホームズさんはイタリア語もできるのか。
「レディ・フランシス・カーファクスの失踪」
独身中年資産家英国婦人がローザンヌのホテルを急に出発した後行方不明になった事件。婦人はもう死んでるかも…と、ホームズは令状のないまま相手を銃で脅して家宅捜査などかなり強引。これも横から急に悪党が出てくる展開。
ホームズ「オーストラリアという国は歴史が浅いにもかかわらず、骨の髄まで性根の腐った極悪人の吹きだまりだね。」19世紀末の英国人のオーストラリア人感ってそんななの?
「瀕死の探偵」
クーリーたちに交じって調査してたら東洋由来の感染症にかかってホームズは瀕死の状態?こんな憐れなホームズを見たことがない。驚き慌てるワトソンくん。
ホームズは仇敵だが感染症に詳しいカルヴァートン・スミス氏を何がなんでも呼んできてくれとワトソンに懇願。
これも悪党をおびき寄せる罠?ホームズは詐病も研究範囲?
「最後の挨拶」
第一次大戦間近のドイツスパイの風景。またしてもホームズさんは長期にわたる潜入捜査?
この時点でホームズもワトソンも老齢。ホームズはサセックスの農場で養蜂しながら隠遁生活?
どれもが謎の事件は大物悪党やスパイが裏で手を引いてるというパターン。個人的には「ウィステリア荘」「ブルースパーティントン」が面白かった。
大人気名探偵シリーズもそろそろ終わり。長編4作、短篇集4冊を読み終わった。残すところ「シャーロック・ホームズの事件簿」のみ。
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