2021年10月18日月曜日

岩井俊二「チィファの手紙」(2018)

監督脚本岩井俊二「チィファの手紙」を見る。2020年公開の松たか子主演映画「ラスト・レター」よりも日本での公開は後だったので、てっきり同じ脚本で中国でも撮ったのか…と思ってたら、こちらの中国映画のほうが先だった。

岩井俊二監督がペ・ドゥナを主演に韓国で撮影したショートムービー「チャンオクの手紙」(2018)が企画の出発点。岩井監督によるこの中国映画は長年の友人ピーター・チャンの尽力によるもの。岩井監督は東アジア圏でもわりと有名らしい。
そして撮影も「ラスト・レター」と同じ神戸千木カメラマンによるもの。

ラスト・レターを見た自分はすでにどんな話か知っている。学生時代に輝いていた憧れの女性が悪い男に引っかかってしまって不幸になって死んでいた…という気が滅入る話。

冒頭からチェロがエレジーのような音楽。音楽も岩井俊二。ほぼ全編に渡ってシンプルなピアノが鳴ってる。
葬式の風景。「ラスト・レター」でもあった住宅のドローン空撮。冬の中国の空はどんより曇ってる。道路と家の感じが日本と違う。
抽斗の遺書のシーン。母、娘、従妹がみんな顔の構造が似てる。

中国にも同窓会はあるのか。日本版では福山雅治に相当する物書きロン毛メガネ主人公が会場に行ってみると、女性たちはみんな30代後半ぐらいに見える。だが男はみんな50代後半ぐらいに見える。みんな老けてる。なんで?

で、日本版では松たか子に相当する生徒会長マドンナ袁之南がステージへ呼ばれる。だがそれは妹袁之華(周迅)が死んだ姉に代わってなりすまし代理出席。みんなそれを知らない。
会場を去ろうとするとそこに懐かしい姉のスピーチ音声録音が流れる。ちょっとエモくなる。
帰りのバスを待ってると尹川(秦昊)が追いかけてくる。「覚えてる?」ええ、よーく覚えてる。

このヒロインは図書館で働いてる。旦那がいきなりアフガンハウンド2匹をもらい受けてくる。いろいろラストレターを思い出しながら見る。
ラストレターと同じようであっても、中国版は中国人が見ても納得のいくように様々な箇所で改変されている。
リビングが日本に比べてかなり広い。お年寄りがビルの谷間の公園に集まってダンスをしてるとか、やはり日本と違う。

ラストレターでヒロイン姉の少女時代(広瀬すず)に相当するのが袁睦睦(袁之華と二役・鄧恩熙、簡体字では邓恩熙)。
その妹(森七菜)に相当するのが周飒然(袁之南と二役・張子楓、簡体字では张子枫)。

現代と30年前を行き来する。これ、事前に分かってないと見てて混乱する。できればラストレターを頭に叩き込んでからみないと混乱する。
これを見てるとき、「こいつは森七菜だな」「こいつは広瀬すずだな」と確認しながら見てた。
チャイナ娘たちは鼻が高く尖ってる。鄧恩熙は全アジアクラスの美少女。なんとまだ16歳。

主演の周迅が安藤裕子に似てる大人の美人女優だけど冷たそう。之南が成長してこのおばさんになるとは思えない。
「ずっと恋してる」というメール文面を旦那(サイバーセキュリティ―関連の仕事でわりと裕福っぽい)に見られてちょい修羅場のシーンが日本版とだいぶ雰囲気が違う。これを見ると松たか子さんはすごく愛嬌のあるコメディエンヌなんだなと改めて思う。

中国のほうが暗いイメージだった。神木くんの三枚目的なユーモアとかほとんどなかった。義母の先生宅で化粧品を借りるシーンとか、日本のほうが面白おかしく描いてる。中国のほうがずっとシリアス。

岩井俊二の音楽のセンスがとてもよい。中韓の映画は肝心なところでムーディーな歌謡やヘンテコポップが流れて興ざめになることが多いのだが、岩井が防いでる。

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