2021年10月16日土曜日

岩井俊二「なぞの転校生」(2014)

2014年1月期にテレビ東京金曜深夜で放送された連続ドラマ「なぞの転校生」(全12話)をようやく見る気になった。本放送直後のBSJAPAN(現BSテレ東)での再放送を録画しておいたものを今になってやっと見る。3夜かけて見終わった。
原作は眉村卓(1934-2019)の「なぞの転校生」(1967)。まだ読んだことない。

2014年テレビ東京版は演出監督は長澤雅彦なのだが、企画プロデュース脚本編集で岩井俊二が参加している。Rockwell Eyesが制作して神戸千木が撮影という、当時注目のドラマだった。1話40分という枠。

中村蒼、本郷奏多、桜井美南の3人が主演。中村と本郷は今も活躍中の俳優。
だが、主題歌も歌ってたヒロイン桜井美南のことを自分はまったく知らない。今回このドラマで見た桜井美南が最初で最後。
調べてみたら、所属していたワタナベエンターテインメントにも名前がないし、ツイッターアカウントも抹消されてるしで、まったく活動が確認できない。
芸能活動を引退したのではないか?もしかすると海外で生活してるのではないか…?

と思いきや、村中暖奈(むらなか はるな)と名前を変えて活動していた。2019年度ミス慶応となり、今年の3月に慶応大文学部を卒業していた。所属事務所も変えて、女優としてさらなる活躍のために毎日頑張ってる様子。よかった。引退してなくて。
背は低いが身のこなしとふるまいに余裕を感じる。この人は慶応幼稚舎から慶応大でミス慶応というエスカレーターに乗った上級国民のお嬢様。

主人公岩田広一(中村蒼)と香川みどり(桜井美南)は幼なじみで同じ東西山高等学校に通ってる同級生。
体育館の倉庫でみどりたち女子は体操服を着替えてる。あ、忘れ物した…と倉庫に戻ると跳び箱の中から男子生徒。
この坊主頭シャクレ男が頭悪すぎて、みどりは明らかにイラついてるw このふたりのやりとりがいかにも岩井俊二。
デジカメで盗撮してた?それ、明らかに犯罪。デジカメを没収しようとしたら、何か不思議な現象が起こる。幽霊?
担任の先生が京野ことみ(音楽担当)。この人も最近あんまり見かけない。
なんか、生徒や先生たちの会話やりとりが岩井俊二らしい落語っぽさも感じる。BGMがピアノソロなのも岩井俊二らしい。

生徒たちは幽霊目撃が気になって深夜ふたたび侵入して調査。肝試し大会のようになってる。みどりはむー君こと岩田に「むーくん私のこと好きでしょ」そういう関係いいなあ。このヒロインは主人公にハッキリと好きアピール。

岩田家の父岩田亨はサイエンスライターで演じるのは高野浩幸。母君子は濱田マリ。
隣人のミッキー・カーチスは認知症っぽい。部屋に突然現れた、小麦粉にまみれたような本郷奏多(転校生山沢典夫)を目撃して岩田家に駆け込む。「若い男が!」「お孫さんとかじゃなくて?」
本郷奏多がコミュ障挙動不審アンドロイド。目つきも動きも異常。見た目がほぼ変態。中村蒼とのファーストコンタクトやりとりがほぼ落語。中村も高校生にしてはやたらへらへらしてる。
ヒロインの花屋さんでのやりとりも、草野球に乱入も、ほぼ内村コント。なんだこれ。「へんな人」で許されるレベルじゃない。

何かデータをインストール中?空中に浮かぶスマホのようなもの(DRSと呼ばれるモノリス)を操る。ミッキーカーチスを洗脳して下僕のように使う。高校の理事も洗脳して山沢典夫(本郷)の転校手続き完了。理事も下僕のように使う。

山沢は香川みどりの勧誘に簡単に乗って吹奏楽部に行くのだが、「僕には肺がないから無理だ」
ヒロインは「ホントにへんな人…」と評価を下してつぶやく。こいつにはずっと戸惑わされてる。
山沢がショパンの「雨だれ」を弾いているのだが、京野ことみが「それ、何の曲?」
音楽教師がこの曲を知らないだと?
吹奏楽部のみどりも「雨だれ」どころかショパンすらも知らない。このドラマの舞台は現実世界の日本だと思って見てたら、どうやらこの世界もパラレルワールドなのか?!

主人公の妹アスカが亡くなって8年。今も夢に見る。あのときの姿だったり、成長して中学生になっていたり。
そして山沢はこちらの世界が遅れすぎていて、容態の悪化する「姫」を迎える準備ができない?

この高校の番長で街の不良サイゾー(葉山奨之)には誰も逆らえない。半グレどころかヤクザ組長の息子?こいつはそれほど悪人じゃないのだが舎弟の冴木が幅を利かせてる。
この冴木が初対面なのにいきなり飛び蹴りで山沢を屋上から転落させるw これには一緒につるんでる不良たちもビビる。死なないのかよ!
第6話になってようやくD8世界の王族とその従者たちが登場。なんか、みんな小麦粉をまぶしたような姿をしてる。
アゼガミとスズシロという偉そうなやつが登場。山沢に強い口調で命令する。こいつらが暑苦しい。現代日本では、縦の関係がはっきりしすぎる王政にある人々は滑稽に見えてしまう。

とくに転校初日の杉咲花と先生クラスメートの「え?」ってゆう異文化コミュニケーションやりとりが面白い。周囲にはっきりわかるほどの主従関係。

過去の事を根掘り葉掘り聞かれたアスカ姫、しどろもどろに答えつつ、さらにつっこまれると「冗談よ!SFふうに答えてみました」と逆ギレとか面白い。まさに姫。
ひとりでは何もできない姫の身の回りの世話のすべてをたのまれるとか、それは男子の夢。第9話では姫の入浴シーンもある。それにしても杉咲花の声質は高貴な姫にぴったり。さも当然のように「オマエは下僕だろ?」というような命令口調がとてもよい。

桜井美南もセリフの声質がとてもよい。状況がよくわかってないけど受け入れるしかない感とでもいうような表情がよい。杉咲と桜井のふたりのシーンはずっと見ていたかった。

最終話でSF研で「なぞの転校生」というメタ映画を撮ろうってなって、アスカ姫が以前話した内容に「アンドロイドの夢」オチが加わって「アンドロイドって夢見るんすか?」に対して、アスカ「SFってそういうもんじゃないのか?」に笑った。
やっぱりテレビドラマらしくない。岩井俊二映画っぽい。これは劇場版をつくってもよかった。もっともっと多くの人に見てほしい。

あと、「3年B組金八先生」で鶴本直の母を演じてたり、岩井俊二作品「リップヴァンウィンクルの花嫁」にも出演していたりりィさんが2016年に亡くなっていたことを今になって知った。

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