2021年8月31日火曜日

関水渚「8月は夜のバッティングセンターで。」(2021)

関水渚がドラマ初主演というので水ドラ25「8月は夜のバッティングセンターで。」(テレ東)を見る。なんとアプリゲームが原案のドラマらしい。
自分はまだ関水渚(23)を「コンフィデンスマンJPプリンセス編」「町田くんの世界」でしか見たことがない。今回もまたJK役だ。
ヒロインは夏休みに家でゴロゴロしてるところにおじさん(岡田圭右)がやってきて強引に自身が経営するバッティングセンターでの夜のバイトをさせる。「いるだけでいいから」
この関水の動きが大きくてガサツそう。この子は演技での動きと喋り声がオバさんぽい。
共演は仲村トオル。このおっさんがヒロインのバイト先のバッティングセンターにただ何もせずにそこにいる。座って客が打つのを見ている。
関水は受付デスクで数学の教科書を開いているのだが、このおっさんが視界に入ってきて気になる。不審者?
話を聴けば、元プロ野球選手だという。この人もヒロインのおじさん(友人)に「夜間そこにいるだけでいいから」と説得されそこにいるのだった。夜間に女子高生ひとりで店番とかやはりちょっと不安だったか。

この仲村トオルの得意能力が、女たちのバッターボックスでのスウィングを見ればどんなことで悩んでいるのかをたちどころに見抜くw

夜のバッティングセンターにひとりでやってくる女たちはそれぞれに悩みを抱えている。毎回ゲスト女優が登場。「会社で評価されない」「男性に一歩踏み出す勇気がない」
女が悩みを吐露しているとなぜか突然野球場にトリップする。仲村以外は「なにこれ?どういうこと?!」とパニくる。
そしてそこに毎回プロ野球レジェンド選手が登場。これ、たぶん「フィールド・オブ・ドリームス」という映画のパロディか?
ショートパンツ姿の関水も良いが野球部マネージャースタイルも良い。

仲村の野球哲学がそのまま人生訓。女の悩みはたちまち解決w そういう人間ドラマ。
各回のゲストが木南晴夏、堀田茜、武田玲奈、深川麻衣、佐藤仁美、板谷由夏、山﨑夢羽(BEYOOOOONDS)といった面々。
テレ東に限らず深夜ドラマはこんな一話完結スタイルが好まれる。

2021年8月30日月曜日

綾辻行人「奇面館の殺人」(2012)

2021年現時点において館シリーズ最新刊となっている綾辻行人「奇面館の殺人」(2012年)を講談社NOVELS版で読む。
乃木坂の佐々木琴子もこれを読んでいるらしいので読む。
2018年5月に初めて「時計館」を読んで以来、足掛け3年で館シリーズのすべてを読んだことになる。

館シリーズでおなじみ鹿谷門実が最初から登場。駆け出し怪奇幻想作家日向京助から「自宅にすぐ来てくれ」と呼び出し。「君は自分と似てるから」と、資産家影山逸史の別荘(奥多摩?)で開かれる「会合」に代理出席してほしいと頼まれる。「出席するだけで200万もらえる。半分で山分けしよう!」
(どうせまた殺人が起こるのに200万じゃ割に合わないだろw)

この奇面館が中村青司が設計なので鹿谷は承諾。奇面館へと向かう。奇面という日本語は存在しないらしく変換で出てこない。おそらく、80年代に少年ジャンプ誌に掲載されアニメにもなった「ハイスクール奇面組」から綾辻先生は着想を得たに違いない。(そんなことが暗黒館に書いてあったような気もする)

奇面館に行く。やっぱりちょっと変わった建物。女子大生アルバイトに案内され金属製マスクとガウンを着用するよう指示支持される。なにそれ?「それがルールなんで」
集まった6人がなぜかすべて主人影山逸史と同じ年齢で、しかも生年月日も近い。自称、社長、マジシャン、建築家、教授、警部、そして日向を名乗る鹿谷。

翌朝、影山と見られる死体が発見される。四月なのに季節外れの大雪でやっぱりクローズドサークル状態。指十本が切断された首なし死体。「本当に本人?」
しかも宿泊者は睡眠薬で眠らされてる間に全員鍵付きの仮面をつけられてしまっている!

鹿谷と元兵庫県警の警部らを中心に相談する。フードプロセッサーの中に人間の指らしき物体を発見。電話線も通じない。雪で周辺の人家にも行けない。
しかも館にいる人間たちが登場人物全員が仮面をつけてるという、現実ではありえない状態。こういう状態を読者にリアリティを持つように説明するにはページ数が必要。二段組活字で425ページの大ボリューム。

で、いつものように抜け穴の仕掛け。正直自分はこういうのはどうでもいいけど、これは館シリーズ共通のギミック。これがないと館シリーズではないのかもしれない。ワクワクしない人もいるかもしれない。

これまで読んできた館シリーズはどれもある地点でガラッと見え方が変わってくる新事実とかあるけれど、「奇面館」はそれほど驚けるポイントがなかった。実はこれとこれは同じでこうでした!と後から知らされるという感じ。
今作は死者は一人のみ。犯人もそれほど悪質な感じもしない。今作で語られる男たちの人生もあんまり深みを感じない。

自分としてはシリーズ全作で一番気に入ってない。これを最初に読んではいけない。佐々木琴子は楽しめただろうか?

2021年8月29日日曜日

綾瀬はるか「高台家の人々」(2016)

綾瀬はるか主演作リストに「高台家の人々」(2016 東宝)という映画があるのだが未視聴のままだったのでようやく見た。原作マンガの映画化らしい。
これも石原隆、市川南といった人々によるフジテレビと東宝による映画。監督は土方政人。脚本は金子ありさ。

そもそもこんな映画の存在も知らなかったので何も予備知識がない。名門一族高台家(こうだいけ)はテレパス一族で他人の心を読むことができる。そのへんを映画の冒頭から英語ナレーションで教えてくれる。コンフィデンスマンJPプリンセス編みたい。
ヒロイン平野木絵(綾瀬はるか)は妄想女子OL。名門高台家で自由な妄想をしてる。その空想妄想がことごとくCGで脱線映像化。音楽のセンスとかもすごくフジテレビ感がする。ドレス姿の綾瀬を見ると「今夜ロマンス劇場で」も思い出す。
おばさん同僚OLが堀内敬子なのもフジテレビドラマっぽい。

綾瀬の勤務先企業のエース社員王子様高台光正(斎藤工)がさっそうと登場。この男を見ると「バイトさがしはインディード♪」という歌が聴こえてくる。
この男が綾瀬の妄想と空想がすべて聴こえてる。もちろんそれらはすべて映像として視聴者に示される。それは恥ずかしい。これは映画なの?

テレパス能力を持ってるなら東大だってオックスフォードだって入れるし仕事も出世もできる。人の心がお見通しなら社会でのし上がるのも簡単。なのに「他人の本音なんて知らないほうがいい」とか言う。

妄想の面白さが気に入られ王子様に何度もデートにさそわれて発展。
「この人は人の心がよめるの?」と驚く。しかし、綾瀬はそういう表情とリアクションしてる。ちょっと鋭い男なら相手のしたいことを常に予測してるだろ。
貴族の館のような豪邸に行くと妹茂子が水原希子。弟和正が間宮祥太朗。人のイメージというものは髪型と髪の量に左右されるなと感じた。とくに水原は自分の知ってる水原じゃなかった。
水原は坂口健太郎とつきあってる。この男の心の声もすべて水原に聴こえている。
坂口にはさらに飯豊まりえ(性悪女)がつきまとう。

高台家の飼いネコの獣医が夏帆。間宮と夏帆は友人関係だが、夏帆は光正に片想い。綾瀬、夏帆がそろうと1年前の「海街diary」姉妹。夏帆のJC時代が加藤小夏。夏帆は光正を失って悲しそうな表情。

王子様の両親が大地真央と市村正親。まあ、こういう役だと順当なキャスト。
ママとパパには人の心を読む能力はないし子どもたちにそんな能力があるなど思いもよらない。大地ママは綾瀬を長男の結婚相手にふさわしくないと考える。ヒロインの敵。

おばあ様はシャーロット・ケイト・フォックス。伯爵家令嬢。英国留学中の先代茂正と知り合って恋。日本に押しかける。そんな回想やら空想やらひたすらイメージ映像。そのほとんどに塚地が登場。

途中から心を読まれないように企業ホームページのトップ画面のような草原映像でブロックするとか笑った。
円覚寺と北鎌倉駅を歩く綾瀬を見るとやっぱり「海街diary」感。考え事しながら独り入浴シーンがあるのは日本映画の伝統。

ひたすら心を読まれる女と読む男とその家族のラブコメホームドラマ。それほど集中して見る必要もない楽しいドラマ。見ていてとても楽。
だが、結婚式場から逃げるのはやっちゃダメ。迷惑。あと、綾瀬はるかは田舎道を自転車で走る姿がよく似合う。
主題歌は西野カナ「You & Me」。西野は結婚活動休止して以来その存在をすっかり忘れていた。

2021年8月28日土曜日

川口春奈「九月の恋と出会うまで」(2019)

「九月の恋と出会うまで」(2019 日テレ、ワーナー)という映画があるので見る。松尾由美原作の同名小説の映画化。監督は山本透。脚本は草野翔吾。

何の予備知識もないままに見始める。たぶん主演は高橋一生だが、川口春奈が出ているので見る。
冒頭から高橋の低く太い声のナレーションではーちゃんのプロモーションのような映像。
写真が趣味だとして、勝手によそ様の子どもの写真を撮るのは今では許されないのでは?

住んでる家がイタリアか南仏の邸宅のよう。様々な年代と職業の人々が暮らしてる。世間の若者ってこんなに毎日楽しそうなの?

浜野謙太がいきなり朗々とチェロを弾いてるシーンがあっておどろく。こいつは映画やドラマではいつもキモ野郎役だけど本来ミュージシャンだった。なのにその後まったく登場なし。他の住民が泡沫のような脇役。
そこに通りかかった住民平野(高橋)が不愛想。
なのに部屋で平野が語りかけてくる声が聴こえる。意味不明なことをしゃべり始める。こいつは未来から語りかけている?はーちゃん「何をいってるんですか?」

ああ、普通の恋愛ドラマかと思いきや、やっぱりミラクルファンタジー要素を盛ってくる。こっちが未来であることを証明するために「明日、雹が降ります」
ああ、その証明の仕方は平凡。思わずつっこみ。そんなことより買うべき馬券を教えろ。

「なんで私がそんなことしなきゃいけないのよ!」と平野の指示により現在の平野を尾行するようになる。メガネはーちゃんがぷりぷりしててかわいい。その一方で「僕を助けると思って!」という高橋の哀訴懇願口調がキモい。
大人の恋愛ドラマかと思ってたけど、なんか子ども向けSFっぽく感じる。
現実世界の平野とは出会わないはずだったのに風邪で倒れるはーちゃんを介抱。なぜそこに熱冷まシート?なぜに手料理まで?

空き巣の件でやってきた刑事の話を始める前の思わせぶりなテンションがおかしい。
小説家志望男が、タイムトラベルのパラドックスを、何もわかってなさそうなはーちゃんに熱く解説してるのがおかしい。未来の平野を探せ!じゃないと自分が消える?!

小説を読ませろ読ませないの「けち!」のやりとりのはーちゃんがかわいい。
大学を訪ねたらそこに無意味にシャボン玉のシーンとかなにこれ。
あれだけ他人行儀だったのにいきなり「バカな事いわないでください!」とかキレたように大声だすとか怖い。

ヒロインが他の住民となんら親しくならないまま茅ケ崎へ転勤。このヒロインと同じように、この映画自体もなんら心に響かずに流れるように通り過ぎた。
なにが時間の壁だ。平野のいう事のうさんくささに平気なヒロインがピュアすぎる。

なぜ川口と高橋という人気者がふたりいるのに、もっとちゃんとした恋愛映画をつくれないのか?
なんでこんなこどもだましタイムトラベルSFにしてしまうのか?ドラマにはすごく退屈した。

2021年8月27日金曜日

三島由紀夫「美しい星」(昭和37年)

三島由紀夫「美しい星」(昭和37年)を読む。新潮文庫版で読む。

吉田大八監督の「美しい星」(2017)を先に見てしまった。だがあれは原作とはまったく別物だと思う。なので新鮮な気持ちでしっかり読む。

開始早々に驚く。自分たちを宇宙人だと確信してる一家がUFOを見に行く。この一家が住んでる場所がなんと飯能。そして山の上でコンタクトを取ろうとするのだが、この羅漢山というのが現在の天覧山

自分は過去何回か天覧山に登ったことがあるのだが、この小説の描写がほぼ現地に一致。ということは三島由紀夫は天覧山に来たことがあったのか。

そういえば山頂に茶屋のような廃屋小屋があったけど、昔は営業してたのか。
展覧山はアニメ「ヤマノススメ」にも登場する。飯能市はアニメタイアップで町興しをしてたけど、三島由紀夫に関する標識とか立て札とかは一切なかった。もっとアピールしてもよいのではと思った。

大杉家の主人重一郎(火星人と自覚)は映画では気象予報士キャスターになっていたのだが、原作では材木商の財産を受け継いで株式で暮らすブルジョア無職。短期間大学で教鞭をとったことがあるらしい。同窓会に来てる中年たちが弁護士とか官僚なので、作者は東大とか想定してるのかもしれない。

家族全員が思い込みの強い天然。長男一雄(水星人)は大学をサボり女の子と遊ぶ。大学生の長女暁子(金星人)は赤いベレー帽をかぶったおっとり上品美人。だが思い込みは強い。
兄と妹は、核実験で地球の平和を脅かすソ聯のフルシチョフに手紙を書いたりする。

雑誌の文通コーナーにメッセージを載せる。暁子はその意味に気づいた金沢の男竹宮と連絡を取り会いに行く。そしてUFOを目撃。
飯能に戻った暁子は妊娠4か月。「処女懐胎したの!」
どうやら金沢に行った日にふたりはできたらしい。重一郎は金沢へ竹宮を探しに行くのだが竹宮は偽名。おそらく地元で有名な女たらし色男。

一方、仙台では地球が滅亡することを願う3人の男たち。人が死ぬと喜び祝う。飯能の重一郎宅へ押しかけて人類の運命について双方の主張。もう何が何だかという展開。

この小説をSF小説として読んでる人が多いらしいのだが、思い込みの強い変わり者一家の末路を描いた風刺の効いた社会派ドラマという感じ。そこそこ面白かったけど、宇宙人から見た地球人についての自説演説部分が長くて困惑した。

2021年8月26日木曜日

大政絢「ひとりで飲めるもん!」(2021)

「ひとりで飲めるもん!」というドラマをずっとリアタイで見てた。企画を知ったときてっきりテレ東かと思っていたらWOWOWドラマだった。今やドラマは配信で見る時代になってしまったのだが、これは毎週楽しみにして見てた。主演は大政絢。この女優の出演作を見るの久しぶり。

ヒロイン紅河メイ(大政)は化粧品会社の宣伝部門でバリバリ働くキャリアウーマン28歳。誰もが憧れる美貌と経験と頭脳、能力と機転によって毎日のピンチを切り抜ける。

厳しい上司(紫吹淳、おそらくこの人は監督から宝塚のような雰囲気で!と云われたに違いない演技をしてる)がいて、仲間や部下(村杉蝉之介、谷村美月、大友花恋)がいて、ライバル会社に気になるアイツ(桐山漣)がいて…という、ドラマでよく見る構成要素と文法で作られたトレンディな職場ドラマ。

かと思わせておいてドラマパートは前半のみ。職場の同僚部下たちが「何を食べたらあんなキレイになれるんだろう?」という眼差しを浴びながら、ひとり飲みに出かけていく。
そのすべてが大手外食チェーン。定番メニューにビールやウーロンハイで仕事を終えての一杯。北海道の父と名古屋の母とのハーフの娘は美味しいものを食べると「なまらうみゃあ~」と発声する。
それおかしい。中国系アメリカ人は「ベリーハオチー」とは言わないし、チロル地方のスイス人は「ガンツブオーノ」とは言わない。
しかし、「なまらうみゃあ」は幼少期のメイが両親が仲良くしてほしくて編み出した魔法の呪文…という説明が後にあった。

そして美味しいものを食べると体が縮む?!0.7倍ぐらいに縮む。なにそれ。「ミスター味っ子」とかなら巨大化して宇宙を遊泳するというのに、これは地味。

ああ、満足…という顔で余韻にひたっていると、近くの席の男が自分の知らないメニューで一人飲み。えっ、私の知らない愉しみ方をしてる人がいる…。
こいつがラバーガール飛永翼。毎回どの店にも先回りしたかのようにそこに自然にいる。自分はこの芸人をドラマでしか見たことがない。
このドラマはアンチ東京カレンダーだしアンチ美味しんぼ山岡。外食チェーンで割安に1000円ちょっとで飲んでそれで満足というライフスタイル。
個人営業の店主との人情ドラマとか、そんなものは一切必要ない!という割り切った態度。

とにかく今は外食産業がどこももれなく苦境。少しでも視聴者に「行ってみたい」「食べたい」と思わせることが求められる。そんなドラマ。

2021年8月25日水曜日

ベテルギウスの超新星爆発

幻冬舎新書238「ベテルギウスの超新星爆発 加速膨張する宇宙の発見」(2011 野本陽代)という本を読む。慶大法学部卒のサイエンスライター、翻訳家という著者によるもの。

オリオン座の右肩にあたる赤く明るい星ベテルギウスが超新星間近だという話を聞いて久しい。もし、超新星爆発をすれば、満月と同じ明るさが2週間続くという。昼間でも見える星になるらしい。
ずっとわくわくしてその時を待っているのだが、そういわれ始めてすでに10年以上経っている…。

日本での最初のさざ波が2010年1月10日の朝日新聞。NASAが公開した盛り上がりとみられる白い模様の写真を示し、「オリオン座の1等星ベテルギウスで、超新星爆発へ向かうと見られる兆候が観測されている。」「この15年で大きさが15%減ったという報告もある」専門家「爆発は数万年後かもしれないが明日でもおかしくない」と伝えた。

ベテルギウスは640光年と地球から比較的近く、太陽の20倍の質量、1000倍の直径を持つ。爆発したら地球に影響はないのか?
ベテルギウスの自転軸は地球方向に20度ずれている。ガンマ線ビームが地球にやってくる可能性は低いらしい。
そもそも水素ガスの外層を持っているため通り抜ける間にエネルギーを失うらしい。それ、信じていいのか。
満月が2つそこにあったら動物や昆虫といった生物に影響はないのか?そのへんはほとんど書かれていない。誰も予想できないのかもしれない。

最近になってベテルギウスが暗くなったのは一時的にガスに隠れていたせいでまた元の明るさに戻ったという観測結果が出た。なーんだ。
だが、それでもやっぱり超新星爆発は明日突然やってくるかもしれない。

この本、ベテルギウスそのものに関するページは全体のわずか1割ほど。ほとんどが天文学と物理学の研究発展歴史のおさらいページ。手にとってみてダマされたと感じた人も少なくなかったかもしれない。

2021年8月24日火曜日

飯豊まりえ「ひねくれ女のボッチ飯」(2021)

テレ東で飯豊まりえの主演ドラマ「ひねくれ女のボッチ飯」全8話を完走。テレ東はこんなドラマばかりだが、毎週楽しく見た。

このヒロインが仕事を辞めコンビニバイトをしている。友だちもひとりもいない。ストレスを浴び心の中で毒づく。
インスタのオススメに出てきた「ホワイトホース」(フォロワーはこの女だけ)の食レポを見て同じ店に一人で出かけて同じものを注文し、ひたすら心の声で論評する。
信じられないが本当だ。こんな連ドラが成立する国は日本だけではないのかと思わずにいられない。

で、行くお店がすべて若い男子学生やサラリーマン、労働者が行くような普通の定食屋食堂。店の外観、雰囲気、メニュー、常連客をつっこみながら食レポ。
登場する料理がすべて美味しいので心の声で褒める。ひねくれ女という設定なのでつねに仏頂面。感情を顔に出さないようにして驚いたり、フフフと笑みを浮かべたり。
この女の行く店が実は冴えない営業サラリーマン柄本時生の行きつけの店。なのでインスタ映え度ゼロ。庶民の日常の風景にある外食。
ホワイトホースの食レポポエムは飯豊の脳内朗読ではイケボになっている。
そのへんのネタバラシの描き方に感心。さすがだ。調べてみたら「孤独のグルメ」と同じ制作スタッフたちか。

ひたすら面白かった。まりえは普通にそこにいても面白い。高山に似ていて面白い。
第1話のロケ地が北区の志茂や赤羽だったようだが自分はよく知らない。

話が進むにつれ行く店が豪華になっていく。結局、最終話になっても飯豊と柄本はSNSでしか接点を持たなかった。それが現代。

2021年8月23日月曜日

北川景子「ファーストラヴ」(2021)

「ファーストラヴ」(2021 KADOKAWA)という映画があるので見る。島本理生の原作小説の映画化。監督は堤幸彦。脚本は浅野妙子

主演は臨床心理士北川景子。そして弁護士中村倫也。このふたりが父親を殺害した女子大生芳根京子の心と真実に迫っていくサスペンス…と想像して見ていく。
たぶん「三度目の殺人」みたいな、実直臨床心理士が虚言癖変わり者容疑者に周囲が翻弄される法廷モノ?

北川の料理上手な旦那(写真家)役が窪塚洋介なことに見ていてしばらく気づかなかった。この俳優を久しぶりに見た。
芳根の元恋人役で清原翔。ということは脳出血で倒れる以前の撮影らしい。
殺害された父板尾創路は画家らしいのだが娘芳根をかなり精神的に暴力的に圧迫していた様子。その妻木村佳乃も娘に無関心ヒステリー母。これは見ていて嫌な気分になりそうだ。

北川中村ペアが芳根の過去を調べて回る。芸術家父はかなり気持ち悪い人物。リストカット跡もそれと関係が?
北川自身も成人式の日に母(高岡早紀)から父が海外出張のたびに児童買春していた過去を知らされる。なんでそんなことを話す?「あなたも大人になったんだから男はみんなそんなものだと知っておいて」
学生時代の回想が続く。中村と北川は学生時代に恋人同士。中村も北川と初めて会ったその日に焼き肉店で北川の髪を切るとかなんなの。
だが、ショートカットの北川景子が髪切っただけで一気にあか抜ける。なんでそんなにかわいいんだよ。

デート先で最終バスを逃してふたりはホテル。行為に及ぼうとするのだが北川が痛がってできなかった。中村はセッ〇ス依存症学生。この1回限りでふたりは別れた?だが、中村の兄窪塚の写真展に出かけて窪塚と出会って結婚。

少女の成長過程において関わった男たちがいかに影響を与えるか?男の性がいかに気持ち悪いかがテーマか?これは見ていてつらい。年頃の女の子を持った親は見ていられない内容じゃないのか?
心を隠す少女は真面目な臨床心理士にも心を閉ざす。泣いて笑ってみせて自分を守る。

北川は自身の経験した父の気持ち悪い性癖とトラウマを芳根に話す。芳根は「父を刺してない」と証言を変える。中村弁護士はその告白を信用しない。北川と中村は激しくののしり合う。冷徹な弁護士中村に北川の説得は通じない。

だが、中村弁護士が超有能さを見せる。法廷シーンの中村、北川、芳根、さすがの名優ぶり。とくに芳根京子にとってこの役はキャリア史上もっとも重要。
男の欲望に弄ばれた少女の壊れた心を描いた重苦しい硬派な社会派映画。幼い女の子に興味を持つ大人の男たちを断罪。男性の就職面接官たちの視線が引き金を引いたことも重要。

堤カントクはやっと大人の鑑賞に耐える映画を撮った。
主題歌Uru「ファーストラヴ」。挿入歌は「無機質」。

2021年8月22日日曜日

松本清張「火神被殺」(1973)

松本清張「火神被殺」を文春文庫版(1980)で読む。1970~72年にオール読物に掲載された5本の短編を収録。

「火神被殺」
島根県の山中から女性のものとみられるバラバラ白骨死体が発見される。付近の旅館に宿泊した男女がいないか捜索すると偽名を書いたのちに修正した名前が。
古事記とヒッタイト、コーランの共通点の自説を唱える変わり者青年を追ううちに刑事がたどりついた真相。

清張先生がこの中編を書いたころはまだ出雲の荒神谷遺跡や加茂岩倉遺跡はまだ発掘されていない。古代史を研究する人々は出雲神話に疑問を持っていた時代。なので今読むと「?」という箇所も多い。

「奇妙な被告」
高利貸し老人が殴り殺され手提げ金庫の証書が燃やされた事件。逮捕されたものの無罪を勝ち取った中華料理屋は、以前は法律関係の古書店に勤めていた。国選弁護を担当した弁護士は戦前の英国の判事が書いた本に同じケースを発見してしまう。

「葡萄唐草文様の刺繍」
中年夫妻がブリュッセルで購入したテーブルクロスが殺人事件の重大な証拠になってしまう予想外な話。え、そこ?!っていう着地の仕方でちょっと驚いた。

「神の里事件」
播磨の山奥にある淫祠邪教の神道系新興宗教豊道教の神宝とする古鏡を見に行ったルポライターが「頭に槍が刺さる」神罰を受けて死亡。教団の偉い人も山中で目を槍で突かれて死んでいる…という短編。

これ、小野不由美「黒祠の島」や三津田信三みたいな雰囲気で面白かった。清張らしくない本格っぽくもある。ぶっちゃけ傑作。ドラマ化希望。

「恩誼の紐」
貧しかった清張の幼少時の想い出も交えたフィクション。幼少時に犯罪を犯した男は大人になって再び犯罪を犯す…という暗い嫌な話。

2021年8月21日土曜日

浜辺美波、大酒飲みになっていた

浜辺美波(20)が前回の出演(2020年8月9日)から1年ほどで「おしゃれイズム」(8月15日放送回)に2回目の出演した。オタも知らない近況がいろいろと明らかになった。

前回の浜辺はやってみたいことに「ローラースケート」を挙げていた。だが、前回の取材以降全くやっていないとのこと。

そして、上田からの「20歳になって最初のお酒はどういう状況で?」との質問に「缶(燗?)でぇ…」と話し始めると藤木から「そういうことじゃない」と強めのつっこみ。MC3人からこれほど強く一斉につっこまれる女優ゲストは見たことがない。

浜辺の20歳最初の酒は「スーパーで缶を買ってきてひとりで…」という寂しいものだったという。この世間の状況では実家に帰って家族と一緒にというわけにもいかない。酒とはどういうものか?という興味に負けてしまったという。
一昨年とか怖いぐらいに痩せていたのだが、今現在の浜辺はかなり顔がふっくらしてる印象。
この番組で犬(ポメラニアン)を飼い始めたことも初告白。名前はポップ。若手女優は犬を飼いがち。まだトイレを覚えてくれないのが悩み。
自炊もしてる浜辺。ポーランド食器をちょくちょく集めてる様子。お休み期間はずっと食べているらしい。

浜辺はファスティングという美容に挑戦したらしい。漫画家幸田もも子せんせいと。
2泊3日を予定してたのだが、初日は朝昼まで酒を飲んでいたらしい。「けっこう飲んだんですよw」「3、4缶ぐらいw」 MC3人も「やる気ないだろ!」と呆れまくりツッコミまくり。体がリセットされた感じよりも二日酔いの感じが残ったという…。

最終日前日にはもう何を食べるか考え始め、家に戻ったタイミングで届くようにウーバーイーツ。上田「痩せるわけないじゃん」
幸田せんせいによれば「浜辺美波はお酒好き」20歳になって1年も経たない間に、すでに酒好きの大人と酒量が同じ。

芸能界の友だちは橋本環奈。恋愛相談もする間柄。お姉さんみたい。

池田エライザがVTRコメント出演。「とてもしっかりしてる。年下なのにお姉ちゃんみたい」手土産に魚の干物セット(十何枚)をもらったという話も披露。そのチョイス、浜辺はやはり酒飲みなのか。
池田エライザの家でも恋愛話。「意見を求めるだけですけど」

あと、神木隆之介とは電話で長話をする間柄。
そして高杉真宙がスタジオ登場。浜辺は高杉を「マヒちゃん」と呼ぶ。浜辺も高杉に「みなみたん」と呼ぶように強要。高杉は浜辺が白目向いて寝てることを暴露。
いつもニコニコ自分を飾らず豪快に笑う浜辺。先輩のまさみを正しく背中を追いかけているようだ。

ちなみに、2019年の浜辺は今と顔の輪郭が違う。
女子は痩せてると大人に見える。ふっくらすると少女に見える。

2021年8月20日金曜日

事故物件 恐い間取り(2020)

事故物件 恐い間取り(2020 松竹)を見る。これは事故物件に実際に住んだ松原タニシ氏の著書「事故物件怪談 恐い間取り」を原作とする実話(?)の映像化作品。監督は中田秀夫。脚本はブラジリィー・アン・山田。この映画は昨年そこそこ客を集めたようだ。

大阪のお笑い芸人山野ヤマメ(亀梨和也)が演じてる。瀬戸康史とコンビでコントをやってるのだが劇場が冷めきってる…。これは見ていてつらい。大阪の人はお笑いに厳しいらしいのだが、これは人として酷い。愛想というものがない。スベってても笑ってやれ。

で、相方から解散を切り出される。暗くなってため息。そこに唯一のファン奈緒が出待ちしてて話しかけてくる。この子だけが笑ってくれる。笑いのツボが浅い。

番組の企画を考える会議。どれも目新しさがないのだが、瀬戸が知り合いの芸人が音信不通。そいつの部屋が事故物件。プロデューサー木下ほうかが仕事を失ったばかりのヤマメに「事故物件住んだらええやん!」普通の青春映画っぽい雰囲気。まったくホラー映画を予感させない。映画らしくない。テレビドラマのような雰囲気。

そこで人が死んだという認識が薄い。へらへらしたお笑いのノリ。ヤマメはさっそく事故物件を紹介されカメラを渡され住むことに。「ええもん取れたらええな」

で、いろいろと視聴者をビビらせる仕掛け。ヤマメは事故物件1軒目からオーブの撮影に成功。企画として成功。
奈緒と瀬戸と3人で部屋に行くのだが、奈緒は何かひどく嫌なものを見てしまう。この子は霊感強いらしい。慌てて逃げかえる。

ヤマメに拝み倒されて奈緒が部屋に行って女が殺されるイメージを見てしまう。やがてヤマメは赤い服の女を目撃するようになる。直後にヤマメと瀬戸は事故に遭う。
恐怖体験にビビればビビるほど霊体験番組のレギュラーになるなど仕事が順調。

街の不動産屋で事故物件担当の江口のりこ登場。ヤマメがこの人を見た瞬間にビビるのにはちょっと笑った。

ヤマメは怪奇現象体験を語る芸人として人気になる。そして2件目。畳1枚だけキレイなのだが、引きはがしてみると血痕がそのまま。洗面台も水が流れず溜まったまま。管理会社はなにやってる。
不幸な死を迎えた霊というより、もう最初から悪霊という雰囲気のやつがいる。老婆が息子に殴り殺された部屋?

カメラの顔認証機能ってそこにいる霊に反応するとしたら怖い。霊が見える人は霊が見たいわけじゃないのに奈緒を巻き込むヤマメは酷い。完全にテレビ側の人間。
瀬戸の両親が相次いで病気と怪我。やっぱ何か悪いものが憑いてる。ヤマメは3件目の事故物件で自殺未遂?!

「この物件だけは絶対ダメ!」と奈緒が止めたのに「事故物件で天下とる!」と東京(千葉)へ。事故物件ってどれもこれも場所が悪い気がする。安い物件が不幸な人を呼び寄せてるのかもしれない。

お笑い芸人によるお笑い芸人の映画。よく知らない芸人総登場。濱口と有野が本人役で登場。バービーは出てきただけで笑いをとれる。

4件目の怪奇現象もたぶん見た人は笑う。ドタバタ具合が往年のドリフコント。瀬戸が意外と役に立って驚き。やはり問題作のバカホラー。ふざけた企画を意外に正しく仕上げたのかもしれない。
江口のりこが死ぬ展開がカオス。なんで日本アカデミー賞はこの映画で江口さんを優秀助演女優賞にノミネートした?ある意味ハマってた。

たぶんこういう映画は意外に需要があるんだと思う。だがそれでもやっぱり中田監督には何の才能も感じない。こういうのでよくない?と半笑いな作り手たちが垣間見える。

2021年8月19日木曜日

9人の翻訳家 囚われたベストセラー(2019)

「9人の翻訳家 囚われたベストセラー Les traducteurs」(2019 フランス)という映画があるので見る。日本での公開は昨年1月。俳優はGAGA。全編フランス語の映画。

これはダン・ブラウンの「ロバート・ラングドン」シリーズ第4作「インフェルノ」出版の際、各国の翻訳家を地下室に隔離して翻訳を行なったという実話をベースにしたスリラー映画らしい。この概要を聞いて見てみようと思ったw 脚本監督はレジス・ロワンサル。

9カ国からパリにやってきた翻訳家たちがケータイスマホを取り上げられ、リムジンでフランスの人里離れた村の洋館ヴィレット邸に集められる。出版社が仕事を与える側にしても高圧的。この古い城のような家の庭がただただ広い。芝だけ植えてるのもったいない。なぜに畑として利用しない?

世界的ベストセラーのミステリー小説「デダリュス」完結編の各国語訳(日本では出版されないようだw)にとりくむのだが、海賊行為と違法流出をふせぐために地下要塞に一同を隔離しての極秘翻訳。退屈しないようにリクリエーション設備(映画ルーム、ボーリング場)もあるから楽しく仕事に精を出してね!

戸惑いつつも老若男女が監視下の資料室で毎日20ページずつ原稿を翻訳。
なのに流出してしまい脅迫メール?!
この出版社社長がまるで反社。犯人捜しのために仕事のパートナーである翻訳家たちをボディガードが銃で脅し暴力も振るう。プライベートも暴く。全員を半裸にさせる。やだ怖い。

社長は警察で容疑者と面会。だが、え?途中から展開がおかしい。暴力社長のほうが刑務所にいる?ま、あれだけ酷い監禁と暴力支配をしてりゃこうなるか。

金・金・金!の出版社と社会への翻訳家たちの抵抗と反乱。この展開はまったく予想がつかない。きっと誰もが驚く。鉄道が正確だからこその荒業。ビラケム橋のミラクル。
さらに物語の見え方が二転三転する衝撃の展開。ブラック社長に対する、すごく理想的で完璧な復讐の大ネタ。

ただ、そんな展開あるわけないだろ!?と思わないでもない密閉空間シチュエーションでのギリギリドラマ。その驚きが小出しで、見る人によっては期待通りに展開しないストレスを感じるかもしれない。
あの青年は金に執着心がないわけだけど、どうやって生活を?その下準備にもお金かかってないか?

フランス人のセンスは合わないことが多い。正直、さらにブラッシュアップできたかも…と考えずにいられない。だがそれでもこの映画は驚きで満ちている。日本のミステリー小説に飽きてる人には強くオススメする。
あと、ロシア語担当のオルガ・キュリレンコさんがキレイだ。

2021年8月18日水曜日

暗殺教室〜卒業編〜(2016)

引続き「暗殺教室〜卒業編〜」(2016 フジテレビ、東宝)を見る。製作スタッフもキャストも前作とほぼ同じ。ジャ●ーズが企画した映画。制作はROBOTによる。

あれ?黄色いタコに破壊された月が元に戻ってる?と思ったら前作を回想。前作にはなかった登場人物紹介から始まる。地球を破壊しようという超生物が生徒たちを進路指導。

やはりギャル竹富聖花が目立ってて、今見ると悲しい。知英はぜんぜんタイプでないけど太ももに銃ホルスターという絵は正しい。ラバースーツも正義。

武田玲奈はやっぱりその他モブ脇役で哀しい。上原実矩のほうがかなり重要で目立ってる脇役。自分で製薬してしまう科学者。(なんでE組なんだよ)
やはり一番手は山本舞香。実質ヒロイン。触手を頭から出して戦う。姉が桐谷美玲。せんせいの過去に何が?!だが、そういうのべつに関心ないw

キャストに二宮和也の名前があるのだがどこに出てる?と思ってた。せんせいの声が二宮なことに2作目でやっと気づいたw 野村萬斎口調は二宮のキャラづくりだったのか。
しかもせんせいは宇宙人でなく殺し屋が人体実験で触手と反物質を操れる怪物になった設定だったのか。
さらに、マッドサイエンティスト成宮寛貴も出てるのだが、このふたりの宿敵関係がメインのドラマだった。フランケンシュタインみたいな話だった。シュールな笑いに中途半端なマジドラマ。ナレーションとBGMで感動げにするな。

だが、校庭での山田と菅田将暉の喧嘩シーンに無意味に強風を吹かせる演出はつねに正しいと感じた。画がさみしいと感じたら強風。美術スタッフには賛辞を贈りたい。他のドラマも見習ってほしい。
裏山での防衛省との戦いシーンはわくわくできた。卒業編のほうがSFアクションとして力作。でもそれ以外はべつに面白くもない。やっぱり子ども向け。

2021年8月17日火曜日

暗殺教室(2015)

実写映画版の「暗殺教室」(2015)を見る。フジテレビと東宝によるジャ●ーズ映画。制作はROBOTで監督は羽住英一郎。

マンガもアニメもまったく見ていない。何の予備知識もない。必ずチェックしてる女優が出てるわけでもない。だが、今現在も活躍中のフレッシュスターが多く出演してる。公開から6年たつ。使命として見る。
おそらく、ギャグマンガなんじゃないか?実写化は相当にハードルが高い。

ウルトラマンレオに登場するノーバの黄色い版みたいなものがいる。なにこれ。
こいつが月を破壊し日本の地上部隊を壊滅させ次は地球を破壊すると脅す宇宙人。こいつがマッハの速度で動けるので殺すことが不可能。

なぜにまた日本が地球代表?その点はさらっと説明があるのだが、いい大人は到底納得できない。日本以外の国々だって納得できない。
けど、宇宙人が落ちこぼれクラス3年E組の担任となって、生徒たちを自分を殺す暗殺者として教育するのが希望なんだからしかたがない。日本政府とそういう取り決め。

結論から申し上げて、この映画を楽しめる人はおそらく中1以下のこどもたちだろうと思う。シュールな少年向けギャグ漫画。大人は見てはいけない。

主演はジャ●ーズの子だが、菅田将暉橋本環奈といった人気若手俳優も3年E組クラスメートとして登場。橋本はなんと箱型AIとして教室の後ろに設置されている。あまり出番はない。
女子生徒で一番目立ってるのが山本舞香。次いで竹富聖花
山本は今も活躍中だが、竹富はあまり見かけない。どうやら竹富聖花は結婚引退したようだ。モデルとしても女優として活躍できる舞台がたくさんあったのに、ほとんど芽がでなかった。
知英が出てる。なぜかほんの少しだけ桐谷美玲も出てる。ス●ィートパワー案件映画でもあったのかもしれない。
これはきっと自分と合わないだろうな…と思いつつ、これをチェックした理由は武田玲奈が出ているから。だが、モブシーンで見切れる程度。1回一瞬だけセリフとアップのあるシーンがあった。
こんな映画で一瞬のみの出演では、ファンも親もお金払って劇場で見るのはつらい。
出演者生徒役はみんな「自分はいったい何をやってるんだろう?」と疑問に思いながら演じてたはずだ。

あと、葵わかなが主人公がほのかな恋心を抱く同校の女子生徒として出演。これもわずかなシーンのみ。なにせ主人公たちE組は落ちこぼれ組として蔑まれている。身分違いの恋という悲しいシーン。
見ていてずっと担任の化け物先生の声が嫌。ほぼそのまま野村萬斎の喋り方。完全に意識してるに違いない。

そもそもなんで実写映画化した?子どもにウケてるマンガを何でも映画化すればいいってもんじゃない。こんなシュールなマンガはアニメ化までがギリ。

2021年8月16日月曜日

中島敦「南洋通信」(昭和17年)

中公文庫の中島敦「南洋通信」増補新版(2019)を読む。

中島敦(1909-1942)は1941年7月からパラオ南洋庁国語編集書記として赴任。現地の体験から「南島譚」「環礁」を書く。そしてパラオから東京の妻子に送られた書簡、土方久功氏によるエッセイ、池澤夏樹氏による解説を収録した一冊。では順に読んでいく。

「南島譚」
  • 幸福 パラオ長老と召使奴隷の話。現実世界の幸福と不幸が夢の中では逆転。南の島でも楽園というわけにはいかない。
  • 夫婦 浮気してるのに夫には嫉妬深い淫乱妻。双方が相手と逃げればハッピー?!
  •  世界のどこでも老人は狡くてケチ?でも、死の直前には鶏をくれた…。
「環礁」ミクロネシヤ巡島記抄
  • 寂しい島 女児が生まれずに人口が急激に減っている島の話。
  • 夾竹桃の家の女 上半身裸体で赤ん坊を抱いていたベッピンサンがこっちをじっと見てる。え、パラオって他人の家の軒先に勝手に座ってていいの?
  • ナポレオン 南の島にも不良少年はいる。独領時代のパラオの子どもの名前はビスマルクとかナポレオン?
  • 真昼 ミクロネシアについてのエッセイ。
  • マリヤン 英語と日本語のできる混血美女マリヤンと内地に戻った自分。私小説短編。
  • 風物抄 クサイ、ヤルート、ポナペ、トラック、ロタ、サイパンの見聞録。ヤルートのジャボールではパナマ帽の自分とヘルメットをかぶった官吏とで島民の扱いが違うとか。ポナペでは島民の家で「子犬のまるごと蒸し焼き食べる?1時間ほどかかるけど」と茶色い子犬を指さしながら言われ、ほうほうのていで逃げかえる。サイパンは沖縄人が多くて言葉が通じなかったとか。
そして、この本の約半分が昭和16年6月から17年3月まで、パラオ・コロール町の南洋庁から東京に送られた書簡。
これはついでに読む感じだった。だが、中島がせっせと毎日のように家族に向けて書き送った手紙がとても興味深いし面白い。
戦前の南洋の島々で暮らしてた在留邦人たちと役人たち。そしてパラオやトラック島、ポナペ島などの島民たちの暮らしぶりがとても貴重。

たか夫人に書き送った現地の様子がとても詳しくて興味深い。暑くて参ってデング熱で寝込んでずっと仕事を休んでること。コロールの物価が内地よりも高いこと。食料の種類が少ないこと。
日本の文芸誌を送ってほしいと伝えたりしてる。どうやら航空便が定期的に出ていたようだ。けど、ラジオ放送はまだなかったようだ。

パラオ島民は自分の年齢を知らない。常夏で季節がないから。そしてみんな老けている。40歳ぐらいで70歳ぐらいに見える。暑さのせいか?

マーシャル群島の土人はおしゃれで、どんなボロ家にも手ミシンとアイロンがあり、日曜日には男女が着飾って教会へ行く…とも書かれている。興味深い。

ヤルート支庁で出会った竹内という役人が「風と共に去りぬ」を翻訳した大久保康雄をマーシャルの離島へ案内したことがあると中島敦に語ったとある。え、大久保康雄って、自分はエラリー・クイーンやヘミングウェイの新潮文庫版で名前しか知らなかったあの大久保康雄?!

とくに、長男・桓(たけし 国民学校2年生)に書き送った手紙がとてもすばらしい!
マーシャルやカロリン諸島へ視察に行く船の上で手紙を書く。教科書編纂に関わっていたので、教科書のようでもある。その一葉を引用すると、
昭和16年9月28日 ヤルートにて。中島桓宛
きのうヤルートへつくと すぐ小さい船(ボンボンボンといって走るやつ)にのりかえて、べつの島に行きました。そのとちゅうで いるかが三十ぴきばかり、ぼくらの船をとりまいて、きょうそうするように、およぎました。あたまを出したり、しっぽを出したりして、およぎます。中には空中にとびあがるのもあります。ぼくから十メートルくらい はなれた所で 三匹そろって一どに、とびました。いるかは とても ふざけんぼ ですよ。
ずっとこんな調子。めずらしい南洋の風景や生き物、人々、伝説と昔話などをやさしく書き送ってる。これはもっと多くの日本人に読まれないといけない。

ときには愚痴のようなことも書いている。パラオやトラック島の気候が内地人が健康的に暮らすには向いていないとも書いている。パラオがひたすら暑いし湿度が高くて不快。持病の喘息に悪いと不平不満。東京勤務にしてほしい。南洋の内地人はみんなやせ細ってる。

父親の中島田人氏には
「現下の時局では、土民教育など殆ど問題にされておらず、土民は労働者として、使いつぶして差支えなしというのが為政者の方針らしく見えます。」
「今迄多少は持っていた此の仕事への熱意も、すっかり失せ果てました。」
「とにかく、今のパラオのような生活を一年も一年半もつづけたら、身体はこわれ、頭はぼけ、気は狂って了いそうです。」
とも書いている。そしてたか夫人には…、
「今度旅行してみて、土人の教科書編纂という仕事の無意味さがはっきり判ってきた。」
「土人を幸福にしてやるためにはもっともっと大事なことが沢山ある。」
「今の南洋の事情では彼らに住居と食料を十分に与えることはだんだんできなくなっていくんだ。」
「なまじっか教育をほどこすことが、土人たちを不幸にするかも知れないんだ。」
「オレはもう、すっかり、編纂の仕事に熱が持てなくなって了った。」
「昔は彼らも幸福だったんだ。パンの実、ヤシ、バナナ、タロ芋は自然にみのり、働かないでも、そういうものさえ食べていれば良かったんだ。あとは、居眠りと、踊りと、おしゃべりとで、日が暮れていったものを、今は一日中こきつかわれて、おまけに椰子もパンの木も、ドンドン伐られてしまう。まったく可哀そうなものさ。」
なんか、急に絶望感がしてきて驚いた。戦前の日本人で、しかも南洋庁で働く人間がすでに皇民化教育に疑問を感じていた。「教育をほどこしてやった」と考えてる人は今も日本に多い気がする。現地で島民たちと接していた中島敦の言葉が重く響く。

サイパンへ行くと涼しい!夜は汗をかかない!物価が安い!道がキレイで広い!ガラパンでは岩波文庫を売ってる書店がある!と、サイパンを褒めている。それは意外だった。
その一方で、子どもたちがやたらハキハキテキパキしててまるで軍人みたいに教育が仕上がっていて嫌悪。

映画化希望。なんなら朝ドラ化希望。しかし問題点がある。現地の女性が半裸…。

2021年8月15日日曜日

長澤まさみ「広島・昭和20年8月6日」(2005)

長澤まさみ出演のSPドラマ「広島・昭和20年8月6日」(2005年8月29日放送)を見る。放送当時に地上波アナログで録画したDVD-Rを見る。再生がいろいろとギリ。
これはDVDソフトとして販売されているらしいのだが実物を一度も見たことがない。ほしい。再放送か配信をしてほしい。(してるのかもしれないが知らない)

当時のまさみは高校3年生。この時期は「ドラゴン桜」が放送中。さらに主演映画「タッチ」の宣伝もしていた。この時代のNo.1アイドル。
人生の一番楽しいはずの青春の時期が、日本史上もっとも悲惨な戦争と重なってしまった不運な人々。広島に暮らす矢島家の三姉妹と末っ子の弟の4人家族の物語。みんなその日をささやかに、懸命に暮らしていた。
長女松たか子、次女加藤あい、三女長澤まさみ。当時の主演女優クラスを集めたかなり豪華なキャスト。だがここでは長澤まさみのことだけにしか触れない。
3人にそれぞれの物語がある。まさみはバレエに憧れるも勤労奉仕工場労働という毎日。
遠くで空襲はあってもなぜか広島には空襲がない。漠然とした不安を抱えて生きている。
勤労奉仕の疲れとストレス。ヒロインは休み時間に同世代の少女とお喋りして暗い気を紛らわせる。
同じ工場で働く女の子がある理由で将校から目の仇のようにイジメられている。この将校は憲兵?
兵士は戦場へいくことが名誉。戦争が激しい最中に本土に残って少女たちを監視してるだけの簡単なお仕事。
あまりにつらいので逃げ出したら、その憲兵が執拗に、本当に邪悪な感じで執念深く追いかけてくる。このドラマで一番印象深いクライマックス。てゆうかほぼそこがメイン。路面電車の走る街をまさみと少女は逃げ回る。
日本の憲兵も世界各国の独裁国家の秘密警察のよう。人間は一体なぜそこまで間違った方向で仕事に全精力を傾けられるのか?
逃げおおせてほっとする。姉加藤あいは恋人玉山鉄二と結婚。ああ、よかったね。というそのときエノラゲイがやってくる。
このドラマは懸命に生きたその先に原子爆弾投下という、さらに理不尽な悲劇が待っている。
この一家は産業奨励館のすぐそばに住んでいた。戦争で苦しいなりに楽しみもあるささやかな暮らしが閃光とともにホワイトアウトで消えていく。なんとシュールな展開。

熱線によって一瞬のうちに消滅できた人はまだマシだったのかもしれない。身内や親しい人が全身大やけどで苦しんで数日後に死ぬとか…とてもじゃないが耐えられそうもない。
米国は人類史上初めて核兵器を一般市民の暮らす町に投下する栄誉を歴史に刻んだ。ヒトラーもスターリンも毛沢東も成し遂げていない偉業。その人の名前はハリー・S・トルーマン。

アメリカ人を怨んじゃいないが、アメリカ人に会ったら「人類史上唯一ってすごいよね!」って言ってやりたい。艦船も航空機もほとんど失い敗戦濃厚の、一般市民の暮らす都市で最初に新型兵器を試そうっていう発想はなかなかできることじゃない。底知れぬ悪意を感じる。
ちなみに、このドラマのロケは上海。あの上影。のちにまさみが語った情報によると、ここはロケ飯が超不味いんだそうだw 日本のロケ弁が美味しすぎるのかもしれない。

あと、工場労働シーンは静岡県島田市の某有名ロケ地。ここでまさみは全撮影を終えた。