中公新書にある高橋正衛「二・二六事件 昭和維新の思想と行動」(1965)を読む。この本も2.26事件に関するわりとよく読まれている基本書。関係者の多くが存命中に書かれた本なので、本人に聞いてみて事実確認ができた時代。
自分がこの本を読むの、実は3回目。人生で初めて2.26事件の本を読んだのがこれ。だが、初めて手に取ったのが高校時代。自分は日本史を選択してなかった。そして2回目がそこそこ大人になってから。過去2回は読んでちんぷんかんぷんだった。あまりに帝国陸軍のことについて未知すぎて追いつけなかった。
で、今回3回目。1998年の増補改版で読む。以前よりも知識と理解が進んでいてすらすら読めた。長年いろいろと2.26事件関連の本を読んで、陸軍と青年将校たちの名前も頭に入ってる。
事件から30年。渋谷区宇田川町に慰霊像の除幕式に700人ほどが集まった場面からこの本は始まる。この像がある場所が青年将校と民間人19人が処刑された現場。渋谷区の恐ろしい歴史。
事件当日の朝から事態の収拾、そして裁判までを詳しく教えてくれる1冊。人気作家が書くような劇的な興奮や面白さはない。固く真面目に事件の展開とその原因を学ぶための1冊。十月事件、三月事件、相沢事件、5.15事件など、みんな絡み合っての昭和11年2月26日。
昭和天皇の怒りが思いのほか強くて、真崎、荒木、香椎、山下らの空気がササーっと変わっていく。政治の冷酷さ。
やはり重要なのは「大臣告示」の疑惑と奉勅命令。え?「今からでも遅くない」という言葉はこのとき生れて流行語になった?それ、知らなかった。
この事件は東京の市民には何も知らされていない。新聞もラジオも止められている。人から人へ、うわさがあっという間に広まる。何か恐ろしいことが起こってる。
それでも事件を起こした歩兵第一、第三に子どもたちを預けてる父兄たちが騒ぎ出していたということを自分は知らなかった。青年将校たちの勝手な行動で、自分の子どもや身内が反乱軍にされてはたまらない。
渡辺錠太郎教育総監が狙われたのは、天皇機関説に関する発言が青年将校たちの気に入らなかったから。え、それだけ?そんなことだけで自宅が襲撃されるの?
銃殺処刑された青年将校の最年少は22歳。まだ分別もついてない。リーダーの村中や磯部、栗原、安藤ですらも自分たちの行動が矛盾してることもよくわかってない。自分たちの想いが天皇と一致するはずだという思いこみのもたらした悲劇。
明治以来の徴兵制は農民に過酷だった。徴兵制がなくなってくれてよかった。
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