2020年10月30日金曜日

島田荘司「暗闇坂の人喰いの木」(1993)

島田荘司「暗闇坂の人喰いの木」(1993)を読む。1994年講談社文庫版で読む。これも2年前の初夏に100円で見つけて買って積んでおいたもの。なにせ671ページの大作でなかなか手を出そうと思えなかった。

プロローグは1945年4月のスコットランドの片田舎で、男が少女を猟奇的に殺して建設中の家の壁に埋める事件のあらましが語られる。
そして昭和16年の横浜に舞台が飛んで、少女行方不明事件とその後の惨殺死体発見。

そして1984年の横浜の暗闇坂にある藤並家の洋館の屋根の上で、その家の長男が死んでいる。死因は心不全?だが、その直前に男の母親も頭蓋骨陥没骨折で瀕死の状態で発見される。
石岡は事件の前に、石岡のファンを名乗る女性から面会を求められ、石岡が未婚かどうか?年収は?などの初対面とは思えないようなことを聴かれていた。この女性の交際相手だったハンサムで嘘つきの卓が被害者。

御手洗と石岡が登場。かつて処刑場でその後にガラス工場、銭湯、外国人学校、アパートとなった場所で利き込み開始。被害者男性の妻に強引に話を聴く。
被害者男性の弟譲は処刑の歴史などを研究する変わった男。御手洗は人間力(?)で相手に取り入って家の中に入り込んで捜査。御手洗と石岡のホームズワトソンコンビのやりとりが楽しい。

暗闇坂の英国人校長ペイン氏の残した手稿が、山の中の防空壕の壁に少女の死体を埋め込んだという異常な物だった。御手洗、石岡は被害者の妹で美人モデル女優レオナとなかよく一緒にスコットランドへ現地調査。
で、問題の家を掘り返しても死体は出てこない。その間に横浜では譲と母が殺されているのを発見される。

再び横浜。御手洗はもうだいたいのことは分かった様子。だが、事件の事は放置したまま次の仕事へ。石岡にも刑事にも口をつぐむ…。

これ、新本格のようで怪奇ホラー。樹齢2000年の禍々しいまでに巨大に成長した大楠が人を喰う呪いの大樹?幻想怪奇な雰囲気がよい。幼児を惨殺していたサイコパス紳士の周辺で起こった事件の意外な真相。

卓と譲の殺害トリックがバカトリック!w 「斜め屋敷の犯罪」を思い出した。島田荘司は日本のディクスン・カー?
読んでるときはわくわくしながら面白く読めた。屋根の鶏とオルゴールの暗号とか。
スコットランドの山奥の防空壕で死体が発見できなかった理由がユニークで、これはちょっと面白かった。

だが、自分としてはそれほど気に入ってない。こういうの、高校生の時だったらもっと楽しめたかもしれない。
ボリュームに見合う壮大で恐ろしい大風呂敷ホラーだった。地下室で惨殺された幼児の遺体が次々と見つかるシーンとか、御手洗はよく平然としてられる。

「占星術殺人事件」に匹敵する大作だった。自分としては「異邦の騎士」が一番好き。これをもってしばらく島田荘司から離れようと思う。

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