2020年9月10日木曜日

本田翼「新聞記者」(2019)

昨年の話題作「新聞記者」を見る。スターサンズとイオンエンターテイメントの配給。
望月衣塑子記者の「新聞記者」を原案とする邦画ではめずらしい政権批判っぽい硬派な社会派ドラマだと期待して見る。監督は藤井道人。制作プロデューサーは河村光庸。

公開時から口コミで話題になっていることは知っていた。てっきり松坂桃李が新聞記者かと思ってた。外務省から内閣府に出向してる人物の役。
ポスターなどのビジュアルをよく見ると「内閣官房VS女性記者」と書いてある。松坂は苦悩しつつ内閣府側から女性記者に味方する人物?

この映画が作られ公開されるまでには紆余曲折があったらしい。これは大手芸能事務所の人気女優は二の足を踏む役どころ。主演の日本人記者をアメリカ育ちの日本人設定にして韓国人女優シム・ウンギョンが演じざるをえなかった?
最優秀主演女優賞を受賞したことも大きな話題になった。授賞式での呆然絶句と涙のスピーチはよく覚えてる。

「官邸からの圧力」とか、政権のお友達の不祥事「もみ消し」とか、近年なんとなく見聞きするネタを固有名詞を変えたリアリティ社会ドラマ。政権揶揄映画。
たぶんツイッターSNSに潜む底知れぬ悪意もテーマ。

杉原(松坂)は外務省から内閣官房に出向してマスコミの監視と工作をやらされてるという役どころ。
カチャカチャとネット工作をやってる暗い部屋が不気味。世論を誘導するようにツイッターに書き込み。その仕事、世間様に胸張って誇れるの?まるで追い出し部屋みたいな仕事。

その妊婦妻が本田翼。本田翼が出てなかったらたぶん見ていない。本田はエリートの妻らしくない。
本田はすでに母親役もやっているのだが、妊婦役は初めて見るのでちょっと一瞬言葉を失ったw 松坂本田夫妻は夜景を見下ろす大きな窓に囲まれた部屋に住んでいる。松坂は大きなニュースになってる話題を妻にも知らないふり。

冷徹そうな田中哲司がゲシュタポかシュタージか人民解放軍のごとく、性被害を訴えた女性記者も野党と繋がりのある人物(ハニートラッパー)であるかのように捏造して拡散を指示。ああ怖い。これも日々ネットで目にした覚えのある事案。
田中は重大な使命を感じちゃったようだ。がんばれば論功行賞で出世できるのだからしょうがないw

主人公女性記者吉岡(アメリカ帰り)を変わり者だと周囲の男たちも冷笑してる。北村有起哉(無能デスク)のいう事も酷い。「俺の言う事も察しろよ」
なぜ新聞をやってる?もうちょっとマトモに価値のある記事を書け。

田中は捏造などのやり方に疑問を持つ松坂に「嘘か本当かを決めるのはオマエじゃない。国民だ。」本当に酷いw 松坂は情報と人物関係チャート図が流出してる件ですでに田中から疑われてる?リークするような人物は内閣府に出向してる者しかいない。

吉岡は文科省からは通らなかった新設大学に内閣府が関わってることに疑問を持ち追いかける。
北京の大使館で杉原の上司だった神崎(高橋和也)が内閣情報調査室からマークされていた?!そして神崎は「すまない」と杉原に言い残して飛び降り自殺。何があった?杉原顔面蒼白。
田中のところに問いただしに行くと「子どもが生まれるんだよな?」
妻本田は破水し危険な状態?!やだこわい。
近年見聞きしてきた官邸とジャーナリズムの戦いを愚直なまでにそのままわかりやすく描いたドラマ。
ただ、大学設立の目的が壮大ファンタジーすぎてササーっと冷めたw ここがあんまり脚本として気に入らない。もっとせこい金もうけ目的でリアルに徹してほしかった。
ただ、政治家がひとりも出てこないとこはリアリティがあった。

もし日本がこんな国だったら絶望。「私たち、このままでいいんですか?」という問いかけが重く響く。権力の監視は必要。
この映画の価値は大きい。たまにはこんな映画がなければ日本は中国とたいしてかわらないように思われる。松坂桃李は俳優としてさらにハクがついた。

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