2020年9月13日日曜日

アガサ・クリスティー「アクロイド殺し」(1926)

私的クリスティマラソン69冊目、アガサ・クリスティー「アクロイド殺し」(1926)を羽田詩津子訳2003年早川書房クリスティー文庫版で読む。一昨年12月に100円で見つけて確保しておいたものをようやく取り出して読む。
THE MURDER OF ROGER ACKROYD by Agatha Christie 1926
自分も中学生の時読んで以来の再読。(そのときは新潮文庫版だった)
初めて読んだときは、最悪なことに、犯人の正体を教えらた状態で読んだw この犯人の正体は世界初。(そうじゃないという説もあるらしい)
犯人を知ってて読むのでは楽しさ半減。だが、クリスティー作品はそういう状態で読んでも新たな魅力を発見しながら読む喜びもある。

キングズ・アボット村の医師シェパード氏はおしゃべりな姉と二人暮らし。村はフェラーズ未亡人の自殺(?)について噂話。そして、隣に住む小柄で口ひげの立派な、かぼちゃを育てる謎の外国人について興味津々。さらに、資産家アクロイド氏が自室で刺殺される事件が発生。

シェパード氏はアクロイド氏の屋敷で夕食後自宅に戻るのだが、アクロイド氏が殺されたと電話で呼び戻される。部屋から返事がないので執事といっしょにドアをぶち破って死体を発見。凶器はアクロイド氏の友人でハンターで著名人のブラント少佐が贈ったチュニジアのナイフ。

アクロイド氏はフェラーズ夫人の死が何者かによる恐喝が原因であることを夫人からの手紙で知っていた?
おどおどしてる立ち聞き執事も怪しいけど、従妹と婚約するもお金に困ってるアクロイド氏の義理の息子ラルフが事件当夜に村から逃げ去るなど不審な行動。婚約者フローラは村にリタイアして住んでいる高名な名探偵ポアロ氏に事件の調査を依頼する。

親友ヘイスティングズがアルゼンチンに去ってしまった。ポアロはシェパード氏に捜査協力を要請。一緒に村の関係者に話を聴いて回る。相変わらずポアロの聞き込みが意味不明。
それでもポアロは表面上に見えていない人間関係を見抜く。そしてアリバイの微妙な時間差を見抜いて犯人を指摘する。

今回読み返してみて、中学生時代も思ったことだが、やはりクリスティの最上位作品といえるようなレベルにないなと感じた。トリックとか、謎としてたいしたことない。

クリスティ作品をたくさん読んでる人なら知ってることだが、ポアロは物的証拠にこだわらない。なのでこの作品も証拠が何もない。殺人は絞首刑という時代なので犯人に自決を促す。

それに当時の探偵推理小説のルールを逸脱してるのが画期的だったのだが、こういうのは今では普通の小説ですらよく見る手法になってる。それほど驚かないのでは?
「アクロイド殺し」を褒めてる人はあまり推理小説を読んでいない層。批判してる人は「この条件では解を求められない」と数学の試験問題にクレームを入れるような秀才。

1920年代のクリスティの長編はどれもイマイチ。まだ作家としての力量不足。この2003年新訳は文体が平易すぎて登場人物たちの個性の差が感じられないが、それはクリスティにも原因があったかもしれない。

エラリーやヴァンダインみたいな証拠探しや全員の詳細な証言とか読んでいて面白くないしムダだと感じる。自分はクリスティをジョージ5世ジョージ6世時代の英国を感じられる面白い物語として読んでいる。英国人のユーモアとドライなところが好き。

これでクリスティのポアロもの長編全33作のうち32冊を読了。残すところ、クリスティの死後発表された「カーテン」のみ。

0 件のコメント:

コメントを投稿