2020年8月14日金曜日

ナチス第三の男(2017)

日本でも邦訳版が出たローラン・ビネ「HHhH プラハ、1942年」を原作とした英仏ベルギー合作映画「ナチス第三の男」(英題はThe Man with the Iron Heart)を見る。
監督はセドリック・ヒメネス。ナチスを描いた映画だが全編ほぼ英語でドラマは進行。

映画自体は2017年のものだが日本では2019年に公開(アスミックエース)。この映画を見ている人はたいてい「ハイドリヒを撃て!」(日本では2017年公開)も見ているという。

ナチス親衛隊SSのナンバー2「ナチス第三の男」のラインハルト・ハイドリヒ(1904-1942)はチェコスロバキア人青年によって早々に暗殺されたので、日本ではそれほど有名じゃなったナチス幹部。
だが、「ユダヤ人問題の最終的解決」の企画実行者で史上最狂の悪魔。占領地を虐殺部隊を率いてユダヤ人、ロマ、スラブ人たちを大量に殺していった。殺されたから忘れていいという問題でもない。現に欧州の人々は忘れていない。

女性問題から軍法会議でドイツ海軍を不名誉除隊となったハイドリヒ(ジェイソン・クラーク)は軍人として出世の道を断たれた挫折と絶望で荒れ狂う。

だが、ナチスに入党すると親衛隊情報部で共産党員を徹底的に取り締まり成果を出しヒムラーに好まれた。金髪碧眼長身の容姿風貌がドイツ人青年として理想的だったっぽい?
突撃隊のレームらを次々と粛清。メキメキと出世。ヒトラーから「鉄の心臓を持つ男」と呼ばれる。

こいつが愛する妻子がありながら、なぜにポーランドの村々で母子を平然と虫やネズミのように残酷に殺せるのか?ナチス映画にしてもまるで地獄映画。
ハイドリヒの虐殺を非難する軍の大将も娼婦を買った後ろめたい過去で脅す。

このハイドリヒが実際のハイドリヒとイメージが違う。写真で見たハイドリヒはキツネのような顎のシュッとした面長で涼し気。ジェイソン・クラークががっしりした顔で老けている。

てっきりハイドリヒ目線から暗殺事件を描いた映画だと思いきや、途中から暗殺者側からハイドリヒを見る映画になる。計画と潜入、そして実行シーンもある。思ってたよりも長い。「ハイドリヒを撃て!」とかぶるシーンもある。なかったシーンもある。描き方が違う。

ハイドリヒはずっと蛮行。支配者としてゲシュタポとして容赦なく反対勢力を殺す。なので早く暗殺シーンをやれ!と待望するようになる。
暗殺シーンはチェコ人ならドラマや映画で何度も見て、小説なんかで読んでよく知ってるシーンかもしれないが、日本人はこの2つの映画でほぼ初めて見た。

祖国の自由のためにナチ幹部を殺すということが恐ろしい結果をまねく。計画実行者のせいで無実の市民が報復として多く殺された。幼い子どもにも拷問とか人非人。
ハイドリヒの葬送シーンに合わせて、「撃て!」では台詞にしか出てこなかった村殲滅シーンも挟む。怖い。

暗殺実行部隊が全滅した教会銃撃戦がこの映画でもしっかりある。アメリカへ逃れる夢を果たせずヤンとヨゼフは自決。二人がトラックの荷台で初めて出会った雪のポーランドでのシーンを回想して映画は終わる。

戦争は怖ろしい。今のうちに中国を止めないと遠くない未来に世界はこうなるかもしれない。

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