2020年8月12日水曜日

アイヒマンを追え! (2017)

「アイヒマンを追え! ナチスがもっとも畏れた男」というアイヒマン裁判を扱った映画が以前から気になっていたので見た。
クロックワークス=アルバトロス・フィルム配給で2017年に日本で劇場公開された。監督脚本はラース・クラウメ。ドイツ語原題はDer Staat gegen Fritz Bauerたぶん「国家対バウアー」みたいな感じか?

有能なサラリーマン部長のごとくユダヤ人を収容所に輸送し続け、戦後ブエノスアイレスに逃亡潜伏していたアドルフ・アイヒマン(1906-1962)は、イスラエルの諜報機関モサドが本国に拉致し裁判にかけられ絞首刑になった人物ということはなんとなく知ってる。

この映画はいきなり老人がバスタブで死にかけるシーンから始まる。戦争が終わって12年のフランクフルト、ヘッセン州検事長でこの映画の主人公フリッツ・バウアーは睡眠薬と酒で浴槽に沈んでるところを救出される。
ナチス戦犯訴追に執念を燃やす検事長は様々な嫌がらせと圧力を受けていた。
戦前のドイツ人はみんなナチみたいなもんだからナチを追及する側の人材の質に問題もある。

ブエノスアイレスで暮らすアイヒマンの息子の恋人の父親からバウアーの元へ手紙が届く。(アイヒマンは家族と一緒に逃亡してたのかよ)
バウアーはその情報をイスラエルに通報するという、ドイツの公務員として逮捕されかねない違反を決断する。

エルサレムのホテル目隠しされて荒野の道を車で運ばれる。モサド長官と直々に捜査報告。イスラエルに渡って特務諜報機関と接触できるということはバウアーはユダヤ人だったのか。ナチス政権が崩壊したとはいえ、よく戦後すぐにドイツへ戻れたな。

ブエノスアイレスからの手紙の線にモサドは否定的。「今は協力できない」
ドイツ国内でもアデナウアー政権に元ナチがいっぱい。アイヒマン裁判を望まない人々がたくさんいる。バウアーはドイツ人から白い目。

バウアーの部下の青年検事のスキャンダルをネタに、バウアーとイスラエルの件についての情報を強請る警察が悪質。さすが元ナチス。えげつない。
それと交際情勢はバウアーの思惑を超える。アイヒマンの身柄捕獲はイスラエルの勝利でしかなく、ドイツ国内の元ナチをあぶりだせない。

元ナチスを追及することは絶対的な正義だと思ってたら違うのかよ。イスラエルとの接触は国家反逆罪で逮捕される可能性があるのかよ。検事長に脅迫が届くのに警察は捜査に非協力的とかマジかよ。
献身と犠牲。こんなことがあったとか今までぜんぜん知らなかった。どこの国でも悪を裁くことはこんなにも難しい。

クウェート潜伏の偽情報を流して安心させモサドにアイヒマンを拉致誘拐させた状況はもうちょっと詳しく見たかった。だが、それはもう他のアイヒマン映画で十分やってることかもしれない。この映画はとても地味でひたすら硬派だった。

「アイヒマンを追え! ナチスがもっとも畏れた男」という邦題タイトルはあまり合っていなかったように思う。バウアーの完全勝利というわけでもなかったし。それに予想に反しアイヒマン裁判自体はまったく出てこなかった。

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