2020年4月30日木曜日

小野不由美「営繕かるかや怪異譚」(2014)

小野不由美「営繕かるかや怪異譚」(2014)という本があるので読む。
平成30年6月刊の角川文庫。昨年12月に買っておいたもの。新しいピカピカの本なのにもう100円になっていて、これは自分が読むしかないと思った。

たぶん「鬼談百景」のような、怪談ライター小野不由美の本領発揮の一冊だと推測。6本の短編を収録。こういう本はきっと中高生によく売れるに違いない。

奥庭より
あまり親しくもなかった叔母から相続した古い町屋家屋に何かいる!という話。城下町の古い町並みにある間口が狭く奥に細長い家。何度閉めても開いてる襖がある。箪笥を置いて塞いである。奥からカリカリ、コトコト音がする…。
工務店に相談すると「営繕かるかやの尾端」という男が現れる。こいつのアドバイスの通りにしたら不審な現象がなくなった。「残穢」みたいなものを期待して読んだら「遠野物語」みたいな感じだった。

屋根裏に
これも古い城下町の旧家に住んでる住人目線。痴呆が始まった母親が屋根裏に何かいると騒ぎ出す。
この本の短編はすべて営繕かるかや尾端が終盤になるとすっと現れる。梁に置いてあった瓦をもとに戻せば?というようなアドバイスをする。こいつも「遠野物語」ぐらいのちょっと不思議な話。

雨の鈴
雨が降ると、土塀と石畳の小路に喪服姿でうつむいた女が見える。この女が訪問した家では誰かが死ぬ。ということは死神?
自分はジャパニーズホラームービーとしての映像イメージがしっかりできた。これは映像作品にしても面白そうだ。

異形の人
田舎に引っ越したら中学生の娘にだけ、その家に知らないお爺さんが蹲っているのが見える。何か食べ物も漁ってる。
中学生娘主観なのだが、このお爺さんの話をするとノイローゼ扱い。この話に至っては尾端は終盤そこに風景としているだけで話すらしていない。

潮満ちの井戸 
海抜の低い河口の古い城下町。祖母から相続した古い家。庭に井戸がある。庭仕事にハマった夫が井戸の傍にあった古い祠を壊して処分したら、庭の植物が枯れ、生臭い臭いを発生させる何か生物のようなものの気配が。
これも尾端がふらっとやってきてアドバイスするだけで解決。この人、霊能者でも僧侶でもないのに問題解決において有能。単なる家の修繕のプロ。

檻の外
出戻りシングルマザーが親戚から格安家賃で借りてる家。格安で手に入れた車で娘を保育園に送りパートへ行くのだが、エンジンの掛かりが悪い。そして「ママ…」という子どもの声が車の中からしてくる…。

これも普通の業者にすぎない尾端がふらっとやって来てアドバイス。この若者の存在感が主人公にしては異常に薄い。何も詳しいことが書かれていない。こんな主人公見たことない。そしてどの家も生活カツカツの庶民。

中学生から大人まで楽しめる。ライトでそれほどホラーでない現代の「遠野物語」。雑誌記事でも読んでるような短編。

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