2020年3月20日金曜日

泡坂妻夫「湖底のまつり」(1978)

泡坂妻夫「湖底のまつり」(1978)という本がそこにあったので読んでみた。1994年創元推理文庫版の2017年第12刷。

泡坂妻夫(1933-2009)もわりと有名な推理作家だったのだが自分はまだ一冊も読んだことがない。わりと新品同様の1冊がそこに100円で置いてあったので確保しておいたものをやっと読む。

職場で上司に凌辱され傷心の紀子は温泉宿に投宿。ハイキングで川の中にある岩に腰かけていると突然増水し取り残される。激流に呑まれ溺れかかったところを村の青年晃二に助けられる。ボロ家に招かれお風呂と着替え。独身者なのになぜか女性下着も出される。その夜、女は男に体を開く。このへんの描写がすごく官能小説っぽい。

翌日、村祭りの風景。紀子は晃二の姿を探すがどこにもいない。神社にいた老婆に晃二について聞いてみた。すると、ひと月前に殺されていた。一夜を共にした男の正体は?出会った場所を見に行くと水の底…。

第2章では晃二目線で村のダム建設推進派と反対派の争い。そして、川の中の岩に取り残され溺れかかった女を助けるまったく同じシーンが繰り返される。だが、こんどは工事関係者の測量士補の緋紗江という別の女。やっぱり同じように官能シーンが繰り返されて、ふたりは結婚。車が好きな男は土地を売って東京へ出て整備工場を開業する予定。

買い物へ出かける妻を車でバス停まで送る。そこにうずくまってる女を助ける。第三の女粧子登場。だが、この女に毒物を盛られ晃二死亡?!出戻り娘を持つ中年刑事館崎が捜査開始。

この本、なんの予備知識もなく読んだ。社会派推理小説かなと予想して読み始めたのだが、ラスト付近で大仕掛けのあるサスペンスタッチと文芸タッチの恋愛小説だった。格調が高くて今までに読んだことのないタイプの推理小説だった。

読んでる途中は何がどう繋がるのか?ずっとモヤモヤする。だが終盤になると地面がグラグラと揺れて崩壊していくような展開に驚いたし呆然としてしまった。

なぜこの本が有名になっていなかったのか?映画やドラマになっていないのか?これも映像化不可能だ。これ以上はあまり詳しく語れない。

この本は現代でも十分に通用する。2020年の今も価値を失っていない。知らない人が読むと現代の野心的な新人かと思うかもしれない。2016年に復刻刊行してくれた創元社の編集者たちに感謝だ。100円で買って申し訳ない。100円文庫で久し振りのヒットだ。

この本は広くオススメしたい。だが、女の子にはオススメできないかもしれないw
というのも、「えっ?!そんなバカな?」と誰しもページを戻って確認したくなる箇所がある。そのポイントが18禁だ。人によってはこの本をエロミスと呼ぶらしい。

坂道グループメンバーでキャストを考えながら読んでいたのだが、エロすぎて無理だったw 

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