2020年2月25日火曜日

アガサ・クリスティー「ABC殺人事件」(1936)

クリスティマラソン62冊目、アガサ・クリスティー「ABC殺人事件」(1936)を読む。今回手に入れたものは田村隆一訳1987年ハヤカワ・ミステリ文庫版。

クリスティーの名前を知らなくても、ちょっとミステリーに関心のある人なら誰でもこの作品タイトルは知ってるに違いない。ミステリの女王クリスティーの代表作のひとつ。
THE ABC MURDERS by Agatha Christie 1936
これ、中3のとき読んだことがある。そのときは新潮文庫版だったのだが、面白かったという記憶がない。
読んだ当時は「そんな手間のかかることする?」って、ちょっと納得できなかった。

連続殺人事件においては名探偵や名刑事たちは背後にある動機を探る。だが、このABCは変化球。この背景動機はたぶんクリスティーの発明。
この本を手に入れる前に、2018年マルコヴィッチBBC連ドラ版を見てしまった。映像で見たことのある作品は読書中、そのイメージに引っ張られる。

BBCドラマ版はアレクザンダー・ボナパート・カスト氏をもう一人の主人公にして、そのサイコパスっぷりと、外国人が英国で活きる哀しみを強調するダークなもの。

原作では南アフリカから戻ったヘイスティングズによる手記スタイル。たまにカスト氏主観の文章が挟まれ、その存在いによって読者をミスリード。
クリスティの原作は無差別連続殺人というホラーであっても、ポアロのドライなユーモアが印象的。

マルコヴィッチ版では老いたポアロの悲哀も強調していたのだが、原作にそんなシーンあったっけ?と思ってた。
原作には頭部がやや禿げあがってきたヘイスティングズに対して髪が黒々としたポアロも実は染めているというシーンが冒頭にあった。みんな年をとったねと。

事件の構造と真犯人を知ったうえで読むと、被害者遺族たちが集まって作戦を練るシーンとかムダで冗長に感じる。でも、こういったミスリードがないとストーリーとして読者を納得させるのが難しかったかもしれない。

原作で読むとはるかに納得がいった。ポアロが真相に近づいていく思考にも納得がいった。ポアロは外国人だからと侮蔑的態度を取ったやつらを許さない。
ラストはちょっとハッピーエンド。ポアロの最後の台詞はなんと「スポーツ万歳!」

「ABC殺人事件」は有名すぎて今更読む気が起こらない人もいるかもしれないが、やはり重要な一冊だと感じた。

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