横溝正史「迷路荘の惨劇」を読む。これはまだ一度も読んでいなかった。平成7年角川文庫第46刷版で読む。文庫で475ページの長編。
もともと「オール読物」昭和31年8月号に中編として発表されたものを長編化し昭和50年に東京文芸社から刊行されたものが初出らしい。
富士のすそ野、富士駅から北東に一里強の場所に、明治の元勲が広大な屋敷を構えていた。明治維新の戦功によって成り上がった古舘伯爵家の名琅荘だ。明治維新の刀槍を生き抜いた元老が作った屋敷は抜け穴と仕掛けだらけ?
昭和5年にここで2代目の古舘一人伯爵が、若い後妻加奈子と使用人尾形静馬が密会している場面に激昂し、夫人を日本刀で殺し使用人の左手を斬り落とすも、手負いの使用人に刀を奪われて殺されるという大事件が発生していた。
逃走した静馬の血痕は洞窟奥の井戸のところで絶えていた。おそらく井戸に身を投げて自決したんだろう…と処理された。
そこから20年。現在の屋敷の所有者である実業家篠崎氏から電報で呼び出された金田一さん。なんと富士駅から馬車でお迎えが来ていた。途中、左腕の袖がひらひらする男を目撃。
屋敷をあずかる老婆(初代の妾だったが屋敷にいついた)へ偽電話で来客があることが偽篠崎から知らされ、鳥打帽、メガネにマスク姿の男がやってくる。え、左腕がない?
洋館の一室に案内したのだが、ドアと窓に鍵がかかった状態でふっと消えてしまった。
という一昨日の事件で篠崎氏から相談を受ける金田一さん。
すると篠崎氏の若い後妻の元夫であり屋敷の元所有者である古舘辰人元伯爵が、金田一さんが乗せられてやって来た馬車の上で死体となって発見される。頭を殴られ首を絞めた跡がある。金田一さんは静岡県警の警部たちと一緒に捜査開始。
犯人は死んだと見せかけて実はまだ生きている静馬なのか?!
これ、読んでいてとても面白い。ここ最近読んだ横溝はどれもそれほど面白さが感じられなかったのだが、「迷路荘の惨劇」はすごくワクワクしながら読める。石坂浩二金田一で市川崑の画でイキイキと脳内再生しながら読める。
だがやっぱり中間部のアリバイ調査はぐだぐだして退屈。老刑事が無礼で嫌。金田一さんをヘボ探偵呼ばわり。
そして2人目の犠牲者が!これがとってつけたような中途半端な密室殺人。
そして地下道で行方不明だった女中の凄惨な死体が!さらに、篠崎氏の前妻との娘が頭を殴られ意識不明。やっぱり多くの犠牲者を出す金田一さん。
読んでてそれなりに楽しい大衆娯楽探偵小説。それなりに意外性もある。ラストでどんでんがえしもある。真犯人はあまりに悪人。
でもやっぱり2時間ドラマにするのは難しいだろうと思った。迷路荘は以前に上川隆也主演でドラマ化されているそうだが、見ないだろうな。
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