2019年7月17日水曜日

今村昌弘「魔眼の匣の殺人」(2019)

今村昌弘「魔眼の匣の殺人」(東京創元社 2019)を読む。今年2月に書き下ろし作品として発表されたシリーズ第2作。

第1作「屍人荘の殺人」が本格推理 in ゾンビパニックという作風だった。今回は人里離れた場所に打ち捨てられた研究施設で霊能力者の予言通り人が死ぬというクローズドサークル本格ミステリーホラー。

前作と同様に大学ミステリー研の葉村くんと比留子のふたりが主人公。サークルの部長と5000人が死んだゾンビパンデミックの原因を作った秘密組織・斑目機関の謎を追って連続殺人に巻き込まれる。

ヒロイン比留子は超絶美人女子大生ですっとぼけていて恐ろしいほどに頭が良い。私(葉村)を手玉に取ってる感じがする。ちょいちょいコミカルなふたり。

今回も舞台設定がいい。どんどん引き込まれてページをめくれる。
すべての村人が姿を消した集落に主人公2人、高校生カップル、墓参りに訪れた元地元民女性、バイクがガス欠でさ迷い歩いていたハンサム男、大学教授とその息子、オカルト雑誌編集者が、朽ち果てたコンクリートの箱のような建物に集まってしまう。そこには予言者の老婆と付き人のような婦人が暮らしていた。

いきなりそこで「男2人女2人の4人が死ぬ」という予言をされる。たまったもんじゃないw
唯一の吊り橋も焼き落される。周囲は崖と滝。逃げ場がない。救助が来るまでここで過ごすしかない。

この作者の作風は半分ファンタジー、半分ガチロジック本格。
必ず当たる予言というものの存在を認めないといけない。ある意味デスノート。
「そんなバカな?!」という状況下で、生き残った者たちが相談し協力し、相互に疑心暗鬼になりつつ、自分たちが生き残るために必死で犯人をあばく。90年代以降の正しい本格。

殺害現場に弾痕がなかったことと破壊された時計の件は面白かった。伏線回収の具合もさすがだ。かなり丁寧に練り込んである。

だが、まるで数学の証明問題のごときややこしい思考実験と場合分けはしっかり読み込まないとついていけないと思う。
若干20歳でこんな思考ができる人は日本を支配できる階層だと思う。
オカルトを100%信じてしまうような犯人が、エラリーのようなガチロジック比留子さんに太刀打ちできないと思う。

屍人荘は今年東宝系で映画が公開される。主演は神木隆之介と浜辺美波。監督は木村ひさし、脚本は蒔田光治。きっとTRICKシリーズの上田と山田のようなふざけきったコメディベースに本格推理になることが眼に見えている。
この情報のせいでヒロイン比留子が完全に浜辺美波でぴったり脳内再生。

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