2019年7月1日月曜日

ブラム・ストーカー「吸血鬼ドラキュラ」(1897)

世界で最も有名な怪奇小説と言っていいブラム・ストーカー「吸血鬼ドラキュラ」(1897)を読む。ドラキュラを世界的に有名にした一冊。548ページにおよぶ大作。
DRACULA by Bram Stoker 1897
平井呈一訳の創元推理文庫版(1971年)で読む。こいつが本邦初の全訳版らしい。
2014年になって角川文庫で新訳版が出たのだが、そちらの評判があまりよろしくない。なにより表紙イラストがまったく原作の雰囲気を伝えていないのが嫌だったので創元版を選んだ。

まず英国人弁理士ジョナサン・ハーカーの日記形式の手紙が90ページ続く。
ヨーロッパ文明からもっとも遠いカルパチア山脈のなかほどに位置する、トランシルバニア、モルダヴィア、ブコヴィナの三州の真ん中あたりにあるドラキュラ伯爵の居城へ、英国人青年は汽車と馬車を乗り継いで向かっている。ロンドンで地所を購入した法手続きの代行のために。

ミュンヘンからブダペスト、そしてビストリッツ。19世紀中ごろの車窓風景の描写が貴重だと思った。そして村人たちの何かを恐れるような表情。道行く人が自分を見て十字を切る。馬車に乗り合った客がお守りをくれる。宿屋の女将も行かない方がいいと説得してくる。

真夜中になってドラキュラ城へ到着。伯爵自らが門まで出迎え。あれ?執事とか召使とかいないの?
伯爵とは色々と話は弾むのだが、食事をしているところを見たことがない。どこにも鏡がない。外部と連絡がとれない。狼の遠吠えが聴こえる。謎の吸血女たちがいる!伯爵が城の壁を蜥蜴のように這って移動してる!
何、ここ、やばい!ひょっとして自分、監禁されてる?!

そしてハーカーの婚約者ミナとその友人で夢遊病のルーシーの書簡が続く。これが話の本筋とあまり関係がなく冗長な印象。
この小説、ずっと日付入り書簡、電報のたぐいがひたすら続く。なので読者は過去にあったことを読んでいく。推理小説や怪奇小説でよくみる手法。

そして舞台は英国へ。難破船が漂着。航海日誌によれば船員がひとりずついなくなり、最後に残った機関長と船長も黒い背の高い幽霊に殺された?
なにやら犬が上陸した?背の高い黒い男、ヒラヒラと夜空を飛ぶ蝙蝠。ドラキュラが英国上陸したっぽいけどハッキリ書かない。じわじわ恐怖。
ミナはハーカーが精神を病み入院していると知り単身現地へ。

ジャック・セワードという精神科医によるレンフィールドという患者の観察日記が多い。この患者が蝿や蜘蛛を飲み込む狂人。
途中からぜんぜんドラキュラは出てこなくなる。読んでも読んでも進展しないw

3分の1ほど読み進めると、ようやくアムステルダムのヴァン・ヘルシング教授が登場。頼もしい人に見えたのだが、原因がわからず、ルーシーは何度輸血してもどんどん衰弱していく。にんにくの花を飾るしかない。

ルーシーは死んだ。だが、夜な夜な幼児をさらう吸血鬼へと変貌。ヘルシング教授はセワード、ルーシーの婚約者だったアーサー、アメリカ人キンシーとルーシーの墓をあばき、胸に杭を打ち込み首を切断。これでようやくルーシーは天に召された。
そしてすべての元凶ドラキュラ伯爵を倒すことを誓う。ここまででようやく本の中間地点。

Dr.セラードは口述を記録するのに当時の最新技術である蠟管蓄音機を使っている。ジョナサン&ミナ夫妻は速記で日記が読み書きできて、ミナはこれも当時の最新技術のタイピングができる。読者は蠟管に記録された音声をタイピング起ししたものを読んでいる。

人間の英知で神出鬼没不死身の怪人と戦う。だが、敵が箱の中で寝てる間に退治しようっていう。まるで害虫駆除みたいな展開で肩透かし。

当時としては未知の新鮮な怪人を創造した点で驚異の長編怪奇小説だったかもしれないが、自分としては読んでも読んでも展開しないじれったさを感じた。長すぎた。

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