2019年5月17日金曜日

谷崎潤一郎「富美子の足」(大正8年)

谷崎潤一郎フェティシズム小説集という一冊が2012年に集英社文庫から出ている。なにそれ。
カバーデザインは沼田里奈という人によるものらしい。若者たちに手に取ってもらおうという意気込みを感じる装丁。

パラパラとめくってみたらまだ読んだことのない短編ばかりなので手に入れた。読みたいものから読んでいった。

刺青(明治43年)
とても有名な短編だが初めて読む。江戸時代が舞台のようだ。名人クラスの刺青師が使いに来た女の子(実は以前に街で見かけたカワイ子ちゃん。たぶん16、17歳)に、誰の許可も無く勝手に女郎蜘蛛の刺青を入れて自己満足…という話。
これ、とても短いのだで、ただ話のすじだけ追いがち。だがそこにサディズムやエロチシズムが!ということだが、こういう感情って十代の子に理解できるの?
それは国中の罪と財の流れ込む都の中で、何十年の昔から生き代わり死に代わったみめ麗しい多くの男女の、夢の数々から生まれ出ずべき器量であった。
とにかく谷崎の筆致と文体が芸術的に美しくため息。暗記したい真似したい表現だらけ。
自分、日向坂の小坂さんで脳内イメージ。

悪魔(明治45年)
汽車の旅が苦手で駅ごとに降りて休憩するような帝大生が主人公。いろいろ言い訳して学校へ行こうとしない。まるで太宰みたい。
だがやっぱりこいつも変態。下宿先にいる美人娘の洟をかんだハンカチを人知れず舐めるという愉悦に浸る。

憎念(大正3年)
仲良しだった丁稚の鼻の穴が醜いと気づいてから主人公のサディズム的なイジメが始まる。

富美子の足(大正8年)
洋画家志望の田舎書生が「先生」に手紙で語り掛ける形式。
日本橋村松町の質屋業の隠居は60歳なのに16歳の妾を家に入れていた。隠居と書生は同じ性癖を持っていた。今でいう脚フェチ。とにかく想像を絶する変態。

その少女の足の美しさの描写が谷崎以外誰にも真似できないほどに芸術的。これも暗記したいほどに素晴らしい、声に出して読みたい日本語。

およそすべての男は変態である。そんなことが少女の読者にバレてしまうような短編。
愛人の足で顔を踏まれて最期を迎える脚フェチどM老人の画がシュールすぎる。
自分もまさみの脚に日々見とれることはあるけど、踏まれた状態で死にたいとまでは思えないw
自分、お富美を日向坂の金村さんで脳内イメージ。ちょっと容姿は違うかもしれないけど。

青い花(大正11年)は中年男と美少女と衣服がテーマ。
蘿洞先生(大正14年)インタビューの最中、うわの空の答えしかしない40代先生の秘密。
この2本はとくに語りたいこともない。

以上6本の中で、やはり「富美子の足」が一番面白かった。レベルの違う変態と出会ったときの衝撃を感じた。

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