エラリー・クイーンの事件簿２（1942）

ひきつづきエラリー・クイーンの事件簿２（1942）を読む。ラジオドラマ用脚本を小説化した2本の短編と、映画用脚本を小説化した中編1本（青田勝訳）を集めた創元推理文庫（1974）の一冊。

THE ADVENTURE OF THE LAST MAN CLUB （1940）
THE ADVENTURE OF THE MURDERED MILLIONAIRE （1942）
THE PERFECT CRIME （1942）
        by Ellery Queen

「生き残りクラブの冒険」80Pの短編。
期待しないで読んだのだが面白かった。エラリーの短編の中でも上位に好き。ニッキーとエラリーのやりとりも面白い。読者への挑戦もある。
犯人を絞り込むアレはもう古今の探偵推理小説では見慣れたものかもしれないが、それでもコンパクトにまとまっていて良作。ラジオドラマとしても面白かったに違いない。

「殺された百万長者の冒険」75Pの短編。
エラリー探偵事務所に助けを求めた老資産家。殺されるという被害妄想を持っているらしいと思われたのだがやっぱり自宅で頭を叩き割られて死んでいるのが発見される。それほど強い動機を持っているものはいないと思われたのだが、エラリーくんは屑籠のガムを包んだ紙くずから犯人を指摘。
正直、この短編はそこそこ。探偵推理小説を読み込んだ人にはそれほどの新鮮さと驚きはないかもしれない。

「完全犯罪」177Pの中編。
悪辣な相場師ジョンに騙され古書コレクションを失ったガーテン氏に代わって、娘の婚約者ウォルターが小切手を切ってエラリーくんに古書の競売を依頼。次々と古書を競り落としていくエラリーくんを見てニッキーは「仕事のし過ぎで頭がおかしくなっちゃった」と青ざめ最後には気絶する。
その後、伯父ジョンが自殺したとウォルターは証言する。だが検死医プラウティ博士は他殺と即断。

遺言書と遺産相続。お互いを誤解してかばい合いなど、入り乱れてのややこしい事件。
正直、これは読んでいてぜんぜん状況が頭に入ってこないし面白くはなかった。映画で見れば状況がわかりやすいかもしれない。

エラリーくんに雇われているはずの秘書ニッキーが自由すぎ。チンパンジーの件は「モルグ街」か？と思わせておいて関係ないｗ　とんだお騒がせ秘書だ。

この本で面白かったのは「生き残りクラブの冒険」のみ。これ以外はEQ作品のすべてに目を通さないと気が済まないという人にしかオススメしない。