TAKEN AT THE FLOOD by Agatha Christie 1948「満潮に乗って」というタイトルはシェイクスピアの「ジュリアス・シーザー」から採ったものらしい。上手く潮に乗ってチャンスを逃すな!という意味らしい。
この本も大富豪が死んで親類たちが遺産相続でザワザワする話。
大富豪ゴードン氏が自宅の防空壕で、空襲によって家族と家政婦とみんな一度に死亡する。だが、結婚して間もない、娘ほどに年の離れたロザリーン夫人だけが生き残る。
ゴードン氏は遺言状を残していなかったので遺産はすべて未亡人へ。ゴードン氏の兄(弁護士)夫妻、弟(医者)夫妻がお金に困窮し未亡人に借金を申し込む事態に…。
しかも未亡人のバックにはやり手の兄デイヴィッド(無職)がついている。ロザリーン未亡人は兄のいいなり。
軍を除隊し田舎へ戻ったゴードン氏の姪リン、出征せず田舎で農業をやっていた甥のローリイという美男美女のカップル(婚約者)も登場しラブストーリー感も出す。デイヴィッドとリンはお互いに愛し始めている。
心の中でみな未亡人が死んでくれたらなあ…と漠然と思う状況。お金がみんなに均等に行きわたればみんな幸せになるのに。
だがそこに、未亡人の前の夫はじつはまだ死んでいないのでは?という疑惑が持ち上がる。ゴードン氏との結婚は重婚になり成立していないのでは?という情報をもたらす何者かがホテルで後頭部を叩き割られて死んでいる…。
ポアロは本の真ん中あたりになって、検死審問でやっと登場。
殺された男は未亡人の前の夫か?夫人はまるっきり違うと云い、夫と友人だった少佐は本人だと云う。この少佐も自宅で拳銃自殺。一体何が起こってる?!
文庫カバー裏に書かれている内容のあらましが、読んでみてまるで印象と違うなと感じた。
結局3つ殺人が起こるのだが、ポアロはそれぞれが意図しない事故、自殺、殺人だと云う。
クリスティー愛好家では評価が高い人もいるようだが、話がだいぶ入り組んでいる。こんなの読者は誰も言い当てられない。わかりにくいしピンとこない。
それに当時の英国の電話のしくみがよくイメージできない。交換手のトリックがわかったようでよくわからなかった。
古典ミステリーでよくある人物の入れ替わりだが、そのへんを詳しく描いていないので、そんなことが可能か?とちょっともやもや。
古典ミステリーでよくある人物の入れ替わりだが、そのへんを詳しく描いていないので、そんなことが可能か?とちょっともやもや。
証拠がないことにポアロは目をつぶって極悪人だけ裁く。それってどうなの。
英国も戦後すぐは食糧難で食材を買うのに行列とかしてたって知った。戦争で英国人の多くも酷い目にあった。
外国人であるポアロもホテルで婆さんから「外国人は国元へ帰れ!」と罵倒されていた。この当時の英国と比べれば今の日本はそれほど右傾化してるとは言えない。
巻末にクリスティー全作品リストがあって便利。長編、短編、戯曲、ウェストマコット名義、マローワン名義まで完備。これはありがたい。
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