松岡圭祐「万能鑑定士Qの事件簿」の第1巻と第2巻「力士シール篇・上下」(角川文庫)を読んだ。
平成22年の書き下ろし文庫。自分が読んだものは4年後の平成26年の第18刷。このシリーズは人気でよく売れたらしい。
自分、まだ1冊もこの作家の本を読んだことがない。
以前に綾瀬はるか主演映画で万能鑑定士を見て、ちょっと面白かったのと、友人がこれを数冊持っていたので読もうとした。
だが、都心のガードレールなどにゲリラ的に貼られつづける謎のシールという地味事件と、ヒロイン凜田莉子の波照間島でのバカ女子高生時代が細かく長いのとで、途中で読むのを止めていた。今回が2度目のトライ。
18歳のヒロインが沖縄から上京し就職を目指すも、不況の最中どこにも就職口がないという悲哀をかみしめる。そして小さなリサイクルショップでバイト。オーナーから学習するコツを学び、鑑定士としての知識を蓄えていく過程が描かれる。
「使える豆知識」を披露しつつ、バナナを使ったトルコ料理教室を隠れ蓑にする犯罪らしき何かを見破るのが第1巻「力士シール篇」の上巻。
読んでいて「へえ」と思うこともあるのだが、面白いと思うこともなく読み進めた。
ただ、話の途中で舞台となっている日本がハイパーインフレに陥りアジア最貧国になり下がっているという設定はまったく新しい。シミュレーション小説なの?
第2巻である「力士シール篇・下」は正体不明の偽札造り犯とアジトを追うのだが、公共交通は完全にマヒ。社会も大混乱。物価は数十倍で日本円は紙くず同然という、まるでSFな状況でヒロインと角川の記者・小笠原は孤立無援の独自追跡。
ヒロインは新聞記事から百科事典、カタログのたぐいまでほとんどすべて暗記しているような、シャーロック・ホームズのような人物。ケンミンSHOW的な知識、その業界の人しか知らないような知識、過去の判例までも熟知。エアコンの室外機を見ただけで地域を言い当てる。
苦労して沖縄まで渡航し調査するもムダ脚。だが、最後にたどり着いたのは…。
スケールの大きな意外な動機と犯人。期待しないで読んだけどそれなりに面白く感じられた。
そうか、お金のない人々は社会をハイパーインフレにしてしまえばいいんだ!
あまりリアリティはない。だが、ルパン三世とか好きな人は楽しく読めるかと思う。
この本で描かれる政府首脳と官僚、マスコミはもうちょっと冷静に事態を分析できないものか。無能すぎ。
次の世代のことなどお構いなしに自分だけお金をいっぱい貯め込んだのに、人手不足で老後にサービスを受けられなくなる老人たちのことも想いながら読んでいた。
だが、移民を受け入れよう(カネで奴隷を買おう)と言い出すのが経済界の偉い人たち。国の有り様を変えても自分たちだけ逃げ切ろうという…。
この本を読んで、そんな浅ましさのこともちょっと思い浮かべた。
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