BSプレミアムでシリーズ深読み読書会「孤島の鬼」が放送された。
乱歩作品出演本数で現役最多を自称する俳優・佐野史郎、綾辻行人、鹿島茂、高橋源一郎の4人が「孤島の鬼」(昭和4年連載開始)を語る。
乱歩の長編ではこれが最高傑作という扱いらしい。だが乱歩は長編を書くのにかなり苦しんでいた様子。「孤島の鬼」も「こんなものしか書けなかった」と自分に失望していたらしい。
綾辻先生によれば「孤島の鬼」は本格探偵小説と怪奇冒険小説のキメラ。この本は第1部と第2部でガラッと雰囲気が変わる。
それに日本家屋での密室殺人事件を描いている。当時の東京は震災復興期。近代的ビルが立ち並び始めたものの日本人は日本家屋に住んでいる。東京という街自体もキメラ。
この番組は毎回話の要点をイラストで教えてくれる。自分はこの本を読んだとき、2軒長屋の仕組みがよくわからなかった。今回この番組を見たおかげ、密室殺人の様子がイキイキと理解できた。ありがたい。
高橋源一郎氏が「孤島の鬼」第1部での衆人環視での殺人と子どもという要素はエラリー・クイーンの「Xの悲劇」「Yの悲劇」パクリ説…という発言は「おおぉ」と思った。だが、「孤島の鬼」のほうが3年早い。それに叙述トリックまで!乱歩は時代を先取りしていた。
鹿島茂氏による「乱歩は谷崎潤一郎になりたかった」「だが、乱歩には谷崎の本質的変態性はなかった」「乱歩は健全だった。大衆文学へと向かった。」という話にも関心。
「幽閉された美少女は人類が根源的に憧れるゴシックロマン。ジェーン・エアと同じ」とかも関心。
この本は大正14年が舞台。この当時は障害者というものに世間はまったく冷たい。時代は優生思想による富国強兵が求められていた。
乱歩はそんな社会へ反抗心と異議を持っていた。なぜ唐突に乃木将軍の石膏像だったのか?そういうことだったのか。
この本には同性愛者とたくさんの障害者を登場させる。なので映像化がほぼ不可能になっている。
乱歩には来る戦争と大量殺戮の予感があったのかもしれない。この連載と同時期に「芋虫」も書かれていた。
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