2019年1月25日金曜日

新垣結衣「恋するマドリ」(2007)

2018年の話題作ドラマだった「獣になれない私たち」も結局1回も見なかった。
だが、このドラマのキャストを見て2007年公開の「恋するマドリ」と同じじゃんと気づいた。新垣結衣松田龍平菊地凛子が共演している。

引っ越しから始まる物語。出会い、そして三角関係、そして別れ。ほろ苦い青春を描いている。
10年ぶりぐらいに見てみた。この映画はぜんぜん地上波でもBSでもCSでもやらない。サブスクでも見ない。

だが、映画女優新垣結衣11年の歴史でこの作品こそが最高傑作。同年公開の「恋空」はガッキーがカワイイことしか取り柄のないどうでもいい駄作。
姉(江口ひろみ)の出来ちゃった結婚で北品川の平屋一戸建てから目黒川沿いのアパートへ引っ越す美大生ガッキー。ボソボソ喋る挙動不審コミュ障男・松田龍平と出会う。

この男が実は研究室を構えて有機EL研究をしている技術研究室の主任。骨折してバイトができなくなった友人に代わってバイトへ行って正体を知る。実験の手伝いなんかしているうちに、いつのまにかなぜか恋心。

前の部屋に入れ替わって住むのが菊地凛子。忘れ物を取りに戻って交流が始まるのだが、菊池もかつての美大生(現在は一級建築士)で、ガッキーのように椅子をデザインしていた。

松田と菊池が元恋人同士(今も?)ということを知ったガッキー、なぜか和菓子屋でふたりを偶然を装って再会させようとする。挙動不審になるガッキーが良い。
ガッキーが手順を間違えたために、足りなかった緑色イエローの発光量が偶然アップ。これで発表会に間に合った!と思ったのだが、準備中にガッキーがミスで資料を破壊。

代わりになる資料を持っている心当たりは一つしかない。元恋人の菊池がそれを持っている。松田も菊池もまだガッキーが両者と知り合ってるということを知らない。

新垣「それください!あなたにもうそれは必要ない」あまりの剣幕に菊池は直観的に「イヤ!」と断る。
この二人は前のシーンでも知らず知らずに「置いていったものは他人にとられちゃう」という会話もしていた。そんな人生の機微のようなものがよく描けていて感心する。

ガッキーのがんばりが松田の窮地を救う。ハッピーな気分。だが、菊池の家に知らない別の男(世良公則)がいるのを目撃。傷つく松田。
実は男は菊池の父親だった。連絡がとれなくなる。だが、あれ?いつの間にか部屋に戻ってる。「実家の奈良の山にいたから電波届かなかったわ」
菊池は今日インドへ留学へ旅立とうとしていた。ガッキー「早く追いかけて!」

だが、ぼんやりのんびり男の「やっぱやめとくわ」にガッキー激怒。このへんのやりとりはガッキーによくある演技演出。菊池から「父です」と真実を告げられるシーンのガッキーの表情もよく見るガッキー。

ガッキーは空港へと走る。ガッキーを引っ越し業者中西、屋形船の船頭世良が助ける。このへんのシーンがロックを感じる。ちなみに音楽担当はスネオヘアー。
警備員を振り切って今まさにインドへ向けて飛ぼうとしてる飛行機に、展望デッキから「出てこい!」と叫ぶガッキー。このシーンが異常に面白い。警備員に引きずられていくガッキーはこの映画でしか見たことない。

この映画、ガッキーの隣人内海桂子師匠が大活躍。「若い人って可哀そうだねえ」のシーンとかなにげに名場面。上手くいったと笑みを浮かべてスポーツカーを運転して去っていくシーンも名場面。

別れかけていた松田と菊池を再びくっつけた恋のキューピッドとなったガッキーは部屋でひとりぼっち。切ない。そして桜の咲く季節にまた引っ越し。新垣結衣の歌う「メモリーズ」がバックに流れ旅立っていく。とても爽やか。
この映画、公開当時は「何も起こらなくて退屈」「パッとしない」と言われていた。「恋空」のほうが人気が集まった。当時の人々は一体何を見ていたのか?

ガッキーが好きな人はもちろん、そうでない人も見ろ!と言いたい名作。

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