2019年1月18日金曜日

芦辺拓「名探偵・森江春策」(2006)

芦辺拓「名探偵・森江春策」(創元推理文庫)がそこにあったので手に取った。
芦辺が創り出した森江春策という探偵の少年時代を描いている。
2006年に東京創元社より単行本化されたものをベースとした2017年8月の初文庫化の一冊。
SHUNSAKU MORIE, THE MASTER DETECTIVE by Taku Ashibe 2006
自分はまだ芦辺拓を「グランギニョール城」しか読んだことがないので2冊目がこれでいいのかちょっと迷った。だが、100円だったし、発売から1年ちょっとでピカピカなので読まないともったいないと買って帰った。

5本の短編からなる一冊。順番に読んでいく。

「少年は探偵を夢見る」(2003)
少年探偵団テイストのジュブナイルではありますまいか。謎の洋館に引き込まれるかのようにたどり着き犯罪に巻き込まれる推理小説マニア少年の冒険。

「幽鬼魔荘殺人事件と13号室の謎」(書き下ろし)
ディクスン・カー中学生オタ向けか?中学生森江の隣の部屋にすむ作家志望男目線で描かれる。安アパートでの密室殺人事件。これが住民が部屋を移動してるとか、以前はなかったはずの13号室が今はある!という、読んでいて非常にややこしい本格。

「滝警部補自身の事件」(2004)
これはエラリーオタ向けか?大学生森江が学生寮で起こった一見自殺に見える事件を、捜査もせず証拠もなく状況から断定。これはさすがに「え?!」と思った。これは「殺人喜劇の13人」という長編作への前段。

「街角の断頭台」(2004)
カー風味と横溝風味の生首!事件。死体の運搬とアリバイづくりの2つのトリックがアイデア。わりと標準的な、西洋っぽい短編。

「時空を征服した男」(2005)
タイムマシンで時空を行き来できると言いふらす科学者の完璧なアリバイ。かなり本格っぽいので長編にしてもよかったのでは?というアイデア。これも古典的本格推理っぽい。
だが、こんなの証人をもうちょっと追求すればアリバイは簡単に破綻するのでは?

ラストはまさかのSF的幻想的展開で森江少年の過去の事件の真相へ。

どの5編も乱歩、カー、エラリー、横溝を想わせるような短編。「幽鬼魔荘」「時空を征服した男」はかなりの力作。たぶん高校生大学生ごろに読んでいればもっと気に入ってた。

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