2018年12月7日金曜日

高山一実「トラペジウム」(2018)

乃木坂46の高山一実(24)が11月28日に角川書店から「トラペジウム」という長編小説本を出した。つまり小説家デビューだ。

発売からまもなく書店では初版が入手が出来ない状況になるほど売れたらしい。自分の乃木友は高山推しなので難なく発売直後に初版本で読めている。作家デビュー作を発売直後に初版本で読むということは自分はほとんど経験がない。

自分、ぜんぜんブログとか読んでいない。日々のちょっとした日常を短い文章で読んだところでその人を理解できると思えない。だがきっと、この長編小説を読めば高山一実という人の持つ哲学のようなものが垣間見える。
(自分の高山一実イメージは「乃木坂ってどこ?」での「高山一実ドケチ裁判」と「人生ゲームを語る」でほぼ完全に固まってしまっていた。)

高山は地元では進学校へ通っていた。乃木坂メンのなかではわりと常識と行動力があって独力でなんでもでき有能。それにロジックのある話し方をする。
だが、どこか人と違う方向へ情熱を燃やす三枚目ポジション。アイドルが好きな男子にとって、女の子に面白いという要素は不要。

「ダヴィンチ」で連載されていたのだが、自分はまったく目を通していなかった。どうせアイドルの書いた小説などたかが知れてると。
だが、それは完全に間違いだった。この本は最初からぐんぐんページをめくっていける面白さ!
友人によれば連載時よりも編集校閲とアドバイスが加わって表現が改まった箇所もあるとのこと。(自分は確認してないけど)

高山は人知れずずっとこの小説の構想を練っていた。日々妄想していた。こうなりたいという自分を。
この本の主人公も密かに心に秘めていたある計画を実行する。その地域で東にある高校に通っているヒロインはまず南のお嬢様高へ行き、強引にテニス部のお蝶婦人のようなカワイイ女の子と友達になる。

次に、西にある高専にいる可愛いことで有名な女の子とも強引に友だちになる。
自分、ここまで読んで、これは高山版「南総里見八犬伝」では?!と思ったw
実はこのヒロインは地元で可愛い子を集めてアイドルグループを作りたい!という野望を持っていた。そして実現しようと動き出した。(ある意味、里見八犬伝と言って間違ってないかもしれない)

このヒロインは高1なのだが、人を見る目は鋭い。ときどき毒をはらんだ表現が面白い。
高専で出会った男に対し
「なんだろう、この漂う童貞感は」
「しかし、この男、さっきから斜め下ばかり見ているのも謎である」
「角膜レベルでの変態は救いようがない」
とか、どう考えても握手会で培った見識だとしか思えない。高山の人間観察力に関心しかない。高山は鋭い。

そして北の美少女と出会う。ここで「鼻はシリコンプロテーゼ、おそらくL型のものを使用し、まぶたは埋没させている。目頭も切開済みだ。」と分析している箇所を読んで、自分はすごくゾワゾワしたw アイプチ、メザイク、アイテープの解説まで…。
アイドル好きの高山は乃木坂メンと楽屋でそんな踏み込んだ話までもしていたんだろうか?
昔「乃木どこ」で西野に逆ドッキリをされた回のこともちょっと思い出したが、「完全に作られた顔」というと自分はあるメンバーの目が頭に浮かんだ…。

あと、ヒロインは他校へ行く前に警備の状況を確認するためにヤフー画像サーチをしているとか、友だちになるために事前にAmazonで6万円もするロボット製作キットまで購入するとかw その下準備、まるで司馬遼太郎の歴史小説でも読んでいるかのようだ。

「新製品が安い」家電量販店とか、買い物に出かけるのは木更津か?メンバーがパソコンを買いに行くのに付き合っても他人を観察。
「全面鏡張りになっているエスカレーターでは各々の本性が見えて面白い」
「左右の鏡をチラっと覗いて自分の身なりを確認していたのを私は見逃さなかった」
「ここは人間の大半が隠し持つナルシシズムが解放される数少ないスポットだと思う」
という箇所も知られざる高山の内面を覗いたように感じた。いつもそんな観察眼で乃木坂メンバーを見守っていたのかもしれない。

自己啓発本の批評や、カタカナ英語が通じないというカナダで受けた屈辱、SNSは残り続けるのが怖いのでやらないとか、安房高校時代の高山の考えていたことも垣間見えた。

この本、開始数ページはヒロインを完全に高山で脳内再生していた。だが途中からもっと可愛らしい子でイメージw 西野に言わせると登場人物には乃木坂メンも垣間見えるという。自分はこの4人に誰も乃木坂メンを重ね合わせることはできなかったけど。

アイドルが好きでアイドルになりたいと夢見る策士のヒロイン、テレビに映るために城跡のボランティアやって情報番組に出たりする。やがてビターな現実。そして再スタート。乃木坂の高山の姿が重なる。

この本の著者に完全にしてやられた。自分にはこんな本はとても書けないという敗北感だった。尊敬しかない。広くオススメする。
江國香織、川上弘美を読むよりも面白い。たぶん、そのぐらいの才能。
たぶん、綿矢りさのデビュー作にも面白さで勝っている。綿矢が23歳のときに発表した「夢を与える」という美少女アイドル女優転落小説も想い出した。

この本、映画化することを提案したい。高山をプロデューサーにしてほしい。主演は…山下美月がいい!w

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