2018年10月21日日曜日

梅原猛「古代幻視」(1992)

梅原猛「古代幻視」(文春文庫)という本があるので読む。これは一昨年の12月にいつか読むだろうと買っておいたもの。
1990年から1992年まで日経新聞に掲載されたものの単行本化。自分が手に入れたものは1997年文庫版第1刷。100円で購入。

学術書というわけでなく新聞読者向けのエッセイなのでとても読みやすい。古代をテーマに自由に語り掛ける。

「縄文土偶の謎」
縄文時代の謎のひとつである遮光器土偶を自分は「宇宙人だろ?」と思っていた。だが、目は大きく見開かれているのに真一文字に目が閉じている独特の表現は死者の目を表している?
アイヌのお婆さんに直接話を聴いた梅原氏は、アイヌ社会では妊婦を葬るとき、妊婦の腹を切り裂いて胎児を取り出すという風習にヒントを求めた。遮光器土偶はおそらく妊婦の葬式用の道具。

妊婦をそのまま葬ることは祟りのあることとされていたため、妊婦の腹を切り裂いて胎児を取り出し藁人形と3体にして葬るという風習があったらしい。明治22年に福島県で死体損壊事件として問題となったということを初めて知った。
そういえば雛人形も結婚せずに死んだ人を供養するためのものだと聞いたことがある。物事のルーツは呪術として始まってる。現代日本人も縄文人の思想を受け継いでいた…。

「人麿・人生とその歌」
柿本人麻呂という人物は古代史においてとても重要だけどよくわかっていない。梅原氏の「水底の歌」はよく読まれている本だが自分はまだ未読。この章は柿本人麻呂という人物について、作品を通して人物を解説してくれる。
「万葉集」を読むことが歴史を知るうえで大事という梅原氏らしい思考。知らなかったことを学んだ。

「吉野ヶ里考」
吉野ヶ里を徐福伝説、甕棺というキーワードで自由に想像をめぐらせる。

「清少納言の悲しみ」
自分、清少納言という人のことをほとんど知らなかった。藤原道隆の娘定子に仕える女官。だが、道隆一族は零落していく。悲しみをユーモアと笑いで包み隠して枕草子を書く。
同時代の才女・紫式部は和泉式部を褒めるのとけなすのが半々だが、清少納言は批判ばかり。そこを読んで三谷幸喜「紫式部ダイアリー」を連想したw

「北野天神縁起の謎」
怨霊となって時平一族と天皇までも呪い殺した菅原道真とは何者だったのか?日本社会が縄文人から受け継いだ怨霊史観。

あと残りのページは梅原氏もすべては読んだことがないという「今昔物語」の世界。そんな大作なのか。
ここだけ芥川龍之介を意識した小説のようになっていて戸惑う。ささっと読み飛ばした。

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