A POCKET FULL OF RYE by Agatha Christie 1953投資信託会社社長レックス・フォテスキュー氏がロンドンの事務所でお茶の時間に突然苦しみだし搬送先の病院で死亡。どうやら死因は水松(イチイ)から抽出した遅効性毒物タキシンらしい。そして上着右ポケットの中にはライ麦が。
自分、この本を読んで、日本でも東北から北海道にかけて広い範囲で普通に見られるイチイが猛毒であることを初めて知った。赤い実は食べても平気だそうだが、種は大人が数粒食べただけで致死量という恐ろしい代物だった。そんなものがその辺に生えているのにこの国では毒殺事件があまり起こっていないことが不思議。
ニール警部がベイドン・ヒースのフォテスキュー邸「水松荘」へ出向いて聞き込み捜査開始。被害者社長はやり手で多くから恨みを買いやすい人物。最近は性格のムラ気で会社の経営も危うくなっていた。
社長が死ねば利益を得るのは経営者の長男、妻、娘。妻にも娘にも犯行を唆しそうな愛人もいる。
勘当されていた次男が帰宅。やがて被害者フォテスキュー氏の30歳年下の「性的魅力のみ」という美人妻がお茶の時間に青酸カリで死亡しているのが発見される。
そして仕事中にふらっといなくなった小間使い少女までが庭先で絞殺されているのが発見される。しかも鼻に洗濯ばさみが鋏んである!
真ん中あたりまで読んだところでようやくミス・マープル登場。「殺された小間使いは私が育てた」と事件現場に乱入w しれっと館の関係者に聞き込み捜査開始。しかも当家に宿泊。
そして、一連の殺人事件はマザーグースの見立てになっていることを指摘。
鼻に洗濯ばさみとか死者への冒涜!と憤怒のミス・マープルは聴き込みだけで犯人と事件の犯罪の構造をあて推量で指摘。あとは警察で証拠を探してね…って、まるでクリスティー女史そのものw
ラストでセント・メアリ・ミード村の自宅へ帰宅したマープル。殺されたメイドから誤送で遅配された手紙を受け取る。そこには決定的な証拠が!
怒りに燃える正義のマープルは、恋する少女につけこんだ冷酷な犯人への復讐をはたす喜びに涙を流す。このラストがオシャレ。
だけど、この長編にはアリバイとか物的証拠とかトリックとかいったものがほとんどない。実はこの家の家族関係はこうでしたというパズルを解き明かすだけのドラマ。
マープルものの代表作として世間の評価は高いようだ。みんな大好き見立て殺人だが、そこにあんまり理由はなかったw
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