2018年7月4日水曜日

アガサ・クリスティー「愛国殺人」(1940,1941)

アガサ・クリスティー「愛国殺人」の加島祥造訳ハヤカワ・ミステリ文庫(昭和52年版)がそこにあったのでゲット。昭和56年の第10刷。100円。この作品も存在をまったく知らなかった1冊。
THE PATRIOTIC MURDERS by Agatha Christie 1940,1941
ちなみに「愛国殺人」はアメリカ版のタイトル。英国版の原題は「One Two Buckle My Shoe……」というマザーグースにちなんだタイトルがついている。

日本人はマザーグースをまったく理解しないが、20までつづく数え歌。各章のタイトルがそれ。ただし、見立て殺人というジャンルではない。

ポアロも歯医者さんへ行く。治療が終わってポアロが帰ったすぐ後に歯科医師が拳銃自殺しているのが発見されるという事件。

自殺なんてするはずがない!と捜査を開始するジャップ警部とポアロ。
秘書が偽電報でおびき出されている間の犯行?歯科医師が死の直前に診察した謎のギリシャ人も不審死してる!?

同じ日に来ていたマダムまでもが、夫が諜報部勤務という婦人のマンションで、顔面を破損した腐乱死体となって発見される。
さらに、同じ日に診察に来ていた英国最大の銀行の頭取の命が狙われている?!

スコットランドヤードにも英国外務省から捜査中止命令。そしてポアロにも脅迫の電話。これ、半分まで読んでスパイスリラーものだと思った。だがそれは違ってた。

ずっとポアロが何をやっているのかわからずイライラする。話が入り組んでて誰が誰だかでわかりにくい。読んでいてぜんぜん頭に入ってこない。他の多くの人がそうらしい。
ポアロが婦人たちの靴と踵に日ごろからよく注目していることを自慢げに語っていて笑った。

あのメンツがあの日あの時同一時間に歯医者に来ていたことに恣意はないの? 犯人が歯科医内部に詳しすぎる。カーターという人が狙撃の濡れ衣を着せられた拳銃の仕掛けがよくわからなかった。

最後にポアロが犯人と対峙して真実がパズルのピースがピタッと合うのが爽快。誰が誰で実はアレがああなって…というのが横溝正史が好きなひとも楽しめる。この作品は乱歩も評価してたらしい。さすがクリスティ女史だ。傑作と呼んでいい。

0 件のコメント:

コメントを投稿