2018年6月30日土曜日

村上龍「ラッフルズホテル」(1989)

友人の本棚にこの本があったのできまぐれで読んだ。村上龍「ラッフルズホテル」(1989)の1992年集英社文庫版。

村上龍はハルキと並んで海外でも有名な日本人作家なのだが、自分、今まで1冊たりとも、1文たりとも読んだことがなかった。村上龍も1冊ぐらいは知ってないといけないな…という理由で読みだした。

ベトナム従軍カメラマンの過去を持ち、帰国後に事業で成功した妻子持ち男(狩谷)が再びポートレートカメラマンとして成功するのだが、心に空洞をもっている。
ニューヨークに滞在中に訪ねて来た日本の若い女優(萌子)に「私を撮って」と言われて面食らう。そこ、男女双方からの視点でなぞるように繰り返して描かれる。

やがて女に恐怖を感じた男はシンガポールへと逃げる。なんとなくカンで追いかける女。現地で大金持ち限定の観光アテンドサービス業の若者(結城)が加わる。そして舞台はマレーシアへ。

ざっくり説明すると、ちょっと頭のおかしい女優が80年代シンガポールを舞台に、ふたりの男を振り回す話。この女優が他者とまったく会話が成立しない。

あ~、お金に不自由しない男女って嫌だね~って小説w かみ合わない会話をしながら高い酒を飲む。

これ、なんの予備知識もなく読み始めたのだが、同名映画のノベライズ作品だった。バブル時代を代表する小説?
格調の高さも感じる文芸作品になってる。ちょっと真似のできない作風だと感じた。

村上龍の文体には感心した。読者を酔わせ、ピリッと辛辣で鋭い言葉で満ちていた。細部にリアリティも感じた。龍は武蔵美在学中に群像で新人賞、芥川賞という輝かしい天才だったことも納得。
シンガポールで悲しんでる人間に会ったことがない。みな、へらへら笑って生きてるような気がする。この国では、悲しみという概念が成立しないのだと思う。
この本、ところどころでシンガポールをディスってる?

シンガポールって80年代から今もイメージがたいして変わっていない。社会の底辺を外国人労働者が支え、庶民からむしり取った金でできた薄っぺらいビルと豪邸の金融都市。薄っぺらい国。行ってみたいと思うこともない。たぶん英語もできないような日本人もばかにしてる。
金融で成功した大金持ちシンガポール人とか、今後の人生で関わることもないだろうと思う。

2 件のコメント:

  1. 本棚の一角を占めていた村上春樹は四散してしまいましたが、村上龍と中上健次はまだ生き残っています。
    『五分後の世界』『コインロッカー・ベイビーズ』あたりが好きだった。

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  2. ハルキより好きになれそうな感じでした。ほんとは「コインロッカー」を読みたかったのですが。
    じつはまだ中上健次も読んだことないです。

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