THE FRENCH POWDER MYSTERY by Ellery Queen 1930自分はずっとこの作品を「フランスしらこ」だと思っていたのだが、まえがきに「フランスおしろい」とフリガナが書いてあった。そうだったのか。
フランスと国名がついていてもエラリーの場合まったくフランスとは関係がない。事件が起こったニューヨークの百貨店がフレンチさんの経営するフレンチ百貨店だからという理由のみ。
なので、パリ凱旋門からシャンゼリゼの表紙イラストはこの作品のイメージを何ら伝えていない。
デパートのショーウィンドーの中で経営者の夫人の死体が発見される。前の晩に娘(麻薬中毒)といっしょに上の階のアパートにいた?トランプカード、タバコの吸い殻、家を出たときの衣装と靴、書籍に書かれた謎のメモ書き。つぎつぎと証拠を発見していくエラリーくん。
前作の「ローマ帽子の謎」よりはページをめくる推進力はあった。最後の関係者を集めた場でのエラリーくんの独壇場が爽快。ロジックで重役たちと司法関係者をねじ伏せる知性のヒーロー。
犯人は意外っちゃ意外だけど、消去法で絞り込んでいく過程で気づく人は気づくだろうと思う。自分は最後3ページでやっとわかったw
戦前の英米ミステリーを読むと必ずイメージできないものが登場するのだが、この作品でもやっぱりよくイメージできないものがたくさん登場。壁寝台?オニックス製ブックエンドのフェルト?靴の収納法?
これまでエラリー国名シリーズを、オランダ→エジプト→シャム→ローマ→フランスと読んできたけど、「フランス白粉」はロジックの美しさにおいて「オランダ靴」の次に好き。
ただ、この井上訳がとても古く感じた。
重要な証拠が「口紅棒」だったり、ジューナがコーヒーを注ぐのが「茶碗」だったり、死体を発見して気絶する女性が「黒ん坊の女」で尋問では「ごめんでごぜえます」とか、身分の低い人々の話し言葉が今の基準だと可笑しすぎる。
警視と守衛の会話も「ひと晩中、なにごともなかったか」「いいえ、警視さん」「よろしい」も日本語としてとても不自然。
2012年に中村有希訳版が登場するまで創元推理文庫にはこんな訳しかなかったということが驚き。
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