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2017年7月28日金曜日

新田次郎「珊瑚」(1978)

友人がこの本を持っていたので借りて読んだ。新田次郎「珊瑚」(新潮社 1978年)の単行本。
これはまだ読んでいなかった。オビには「俺たちの夢は海の地獄に眠っている」「待望の海洋小説800枚!」とある。

長崎県五島列島の福江や富江を舞台に、五島の南にある男女群島で命がけの一攫千金サンゴ漁師たちの青春を描いたLOVEロマン作品。
ラジオ天気予報もエンジンもない時代の話(日露戦争直後)なので、漁は船頭のカンと経験が頼り。毎年、大風(台風)で漁師たちは海で命を落としてた。

明治38年8月7日に襲来した台風は多くのサンゴ船を沈め多くの命を奪った。この本は冒頭でいきなり嵐の洋上。この物語の主人公3人の少年時代からこれまでの歩みと、暴風雨と難破船サバイバルを行ったり来たり。

明治時代のことなのでみんな貧しい。3人は瀬戸内で14歳から船に乗って漁師の手伝いでなんとか生きている。究極にブラック職場。
やがて珊瑚はお金になるらしいと知って五島列島の福江島へ。「お金を貯めて瓦葺屋根の家を建てたい!」

24歳になった3人は1人の女性に恋をする。長崎では美人を「みじょか」と呼ぶ。このことは長濱ねるに教わった。長濱ねるは五島出身なので、この小説を映像化するならヒロインは長濱か、福江出身の川口春奈だろうな。

「みじょかヒロイン」はま(18)は父を亡くし継母に女衒に売られる。酷い。そもそも血もつながってない継母に自分が売られる意味がわからない!w そんな権限ないし。女衒の中年男がムカつく。なんで人身売買を正当な権利でもあるかのように振舞っとん? ま、日本は今でも大して変わってないけど。

結局金で手を打つ。大風の大量遭難事故を命からがら生還した金吾が大切に守って運んできた珊瑚を売って作った金と、それまでに貯めた貯金全部で身柄を解放。
やがて3人の中から1人、婿を選ぶ。これが残酷。自分が当事者だったらと思うと怖い。

婿に選ばれた1人忠治は解放にかかった費用を残された2人に全額弁済するべきだろう!と思ったw
福江では祝言を挙げたあとの男女は、一緒に床に入る様子を障子に穴をあけて覗かれる風習があったんだな。そういうのインドネシアとかにもあったかと記憶している。たぶん現在では軽犯罪法的にアウトなのでできないはず。

翌年の明治39年台風はなんと1回で1000人以上の漁師が死ぬ大惨事。サンゴ漁師のほとんどを失う。若くて体力がある漁師たちが避難した無人島の入り江でほぼ全滅する。絶句。

明治から昭和まで、瀬戸内から五島の富江へ移った3人の若者を描く大河ロマン。明治の人はみんな必死に生き抜いた。五島のサンゴ漁とサンゴ枯渇後のサンゴ産業の歴史も学べる。島の漁師の生活がどういうものだったのかも知る。

島で生存していた古老たちから直接話を聴いて取材した新田次郎氏は、役場の資料に記された死亡者の数字の誤りも正していた。新田氏の事前調査には毎回感心させられる。

瀬戸内の島から福江にやってきた3人が、福江の畑がすべて楕円形で驚く箇所がある。巻末の筆者あとがきによれば新田次郎氏も驚いたっぽい。福江島をグーグル航空写真で見てみると、今も本当に小判型の楕円形畑だらけだ!

五島出身の長濱ねるにこの本を薦めたい。

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