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2017年6月20日火曜日

谷崎潤一郎「少将滋幹の母」

きまぐれで谷崎潤一郎の「少将滋幹の母」(しょうしょうしげもとのはは)という本を読みだした。自分が出に入れたものは2006年の中公文庫版。108円で購入。

谷崎文学は子供が読んでもわからないと思っていた。この本を読むことが自分にとって初めての谷崎文学。自分は学生の頃、平安古典文学にも現代文にも相当に苦しめられたトラウマがある。以前の自分なら絶対に手に取ることもないのだが、もう残された人生で今これを読まねばもう一生読まない気がした。「少将滋幹の母」は谷崎作品の中でも有名なので読んでみることにした。

巻末解説を書いている千葉俊二氏によれば、芥川龍之介は「小説家中森鴎外先生を除き谷崎潤一郎君の如く日本の古典に通ぜる人は恐らく一人もなかるべし」と言ってるそうだ。谷崎は源氏物語の権威。
昭和24年から25年にかけての新聞連載小説。中公文庫版では連載時と同じ小倉遊亀(1895-2000)の挿絵が使用されている。

まず平中こと平貞文の色好みエピソードが語られる。イケメンで三枚目キャラとして描かれる。読んでいて意外に面白い。
自分はこの本を歴史小説だと思っていたのだが、「今昔物語」を種本に谷崎が適当に配列し直して自由に創作した文学作品だった。現代語なので読みやすい。

70代半ばの老人・大納言藤原国経は北の方と呼ばれる20代の絶世の美女を妻としていた。国経と北の方には70過ぎてできた子供・滋幹がいたらしい…と確認してから谷崎が自由に書き始めた。

菅原道真を追放して権力の頂点にいた藤原時平が酒の席で強奪w 以後、母と息子は離れ離れ。
現代日本では不倫への批判がめちゃめちゃ強い。だとしたら源氏物語とか平安時代の和歌とか、こどもの目に触れさせちゃいけない。

後半は妻を奪われた老人の悲哀が、子どもからの目線で語られる。だがそこは谷崎。老人と若い妻の性生活について両者の心理を事細かに想像。
平中は権力者時平のもとへご機嫌伺に足しげく通うのだが、侍従の君というツンデレ意地悪ドS姫に夢中。意地悪の末に嫌いになろうと決意。美しい女も排泄物は汚いはず。見れば嫌いになるはず。童女からおまるを強奪。そして…、このあたりは読んでいて呆れた。女子中高生なら思わず本を投げ捨てる…かもしれない。

この本の主人公は滋幹のようでいて、常に男たちの中心にいる北の方。

ラストで40代になった滋幹は、尼僧となった老いた母と幼少時以来の再会。
この本はそれほどボリュームはないけど内容は豊か。文学作品としてとても味わい深いことは鈍感な自分にも感じられた。

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