2017年6月13日火曜日

アガサ・クリスティ「オリエント急行の殺人」(1934)

この半年ほど古本屋では海外ミステリーの文庫本コーナーを必ずチェックするようになった。先日いつものようにエラリーやカーを探してみて「ないか…」と失望したのだが、この本が108円で売られていたのが目に留まった。誰もが名前を知っているミステリーの女王アガサ・クリスティの代表作「オリエント急行の殺人」だ。

今回手に入れたものはハヤカワ文庫のクリスティー文庫シリーズの「8」、2011年の山本やよい訳版の2014年第9刷。読みこまれた跡のないとてもキレイな本だった。

イスタンブールからパリ、ロンドンへ向かう豪華寝台国際列車がユーゴスラビアで雪のために立ち往生し、資産家のアメリカ人が全身めった刺しで発見される。乗り合わせた名探偵エルキュール・ポアロが捜査に乗り出す。

ちなみに、自分はこの本を中学1年生のときに読んでいた。そのときはハヤカワミステリ文庫の、細い線で描かれた青っぽく暗いイラスト表紙のやつ。おそらく自分が初めて読んだ海外ミステリーだったはず。思い入れが深い。

13歳だった自分に1930年代のヨーロッパアジア情勢、地理関係もきっとわからなかった。コンパートメントのある寝台列車、上下2段になっている寝台というものはヨーロッパを鉄道で旅した人でないとよくイメージできないかもしれない。大人になって久しぶりに読んでみてさらに理解が進んだ。

今回のクリスティー文庫で新訳というやつに初めて触れたのだが、以前に読んだものとだいぶ印象が違う。
それに、クリスティー文庫版は字が大きくて読みやすい。まるで小学校の国語の教科書並みに1ページの活字が少ないw さらさらとめくれる。

この本を結末を知らない状態で読めた人は幸せだ。そういわれてるらしい。何も知らないまま初めて読んだとき、ひょえ~、さすが世界の傑作ミステリーだと思った。

あまりに意外な結末によって超有名作なので、昔からいろんな場所でネタばれを起こしている。
欅坂46のメンバーが総出演した2016年夏のTX系ドラマ「徳山大五郎を誰が殺したか?」でも劇中で、オリエント急行殺人事件の犯人の正体が誰なのか?みんな知ってるという前提で、渡邊理沙長濱ねるの逆尋問をツッコむシーンがある。
犯人の正体を知ったうえで最初のページから読み進めていったとしても、それでもこの本は面白い。ポアロ探偵は紳士なのでムダなことは一切しない。論理的に適切に可能性を絞り込んでいく。クリスティの筆も冗長さがまったくない。

アガサ・クリスティはたとえこの1作だけしか残していなかったとしてもミステリーの女王だと思うわ。まだ海外ミステリーを読んだことのない中学生高校生に「最初にこれを読め!」って言いたい。

アメリカ人と英国人、フランス人、イタリア人、双方が互いにディスりあうw お国柄による人物評がぶっちゃけていて面白い。この本を読むと世界が広がる。

名探偵ポアロの人を見る目と分析力は「人は見た目が100%」という言葉を思い起こさせる。人は着ている服装と言葉遣いだけでだいたいのことは分析されるw

PS. なんと、いつの間にかケネス・ブラナー版「オリエント急行」が作られていた!日本では12月に公開予定。
げ、ジョニー・デップが殺される金持ちアメリカ人・ラチェットなのかよ!
クリスティのミステリーはロマンと戯曲らしさもあるのだが、たぶん役者として一番技量が必要な役はポアロでもミス・デブナムでもアーバスノット大佐でもなくミセス・ハバード。

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