2017年4月30日日曜日

チャイルド44 森に消えた子供たち(2015)

英国人作家トム・ロブ・スミスが、スターリン時代のウクライナでのサイコシリアルキラーを描いた「チャイルド44」は新潮文庫でよく古本で見かける。読もうかと思ってたけど、2015年にハリウッドで映画化されてる。今になってやっと見た。137分、長い。

製作にリドリー・スコットの名前がある。この人、もう80近いはずだがまだまだ盛ん。監督はまだ30代のスウェーデン人、ダニエル・エスピノーサ。登場人物全員がロシア人という役柄だが英語で演技。

これを見ていて、ロシアで上映されたかな?と思って調べてみたら、やっぱり上映されていないw 英国とアメリカ側が描く収容所国家ソビエト。党とタテマエの絶望国家。クリミア情勢をめぐる西側とロシアの対立下での両陣営の政治も垣間見る。

日本も戦前の治安維持法時代、憲兵や特高刑事はこの映画のMGBソ連国家保安省のように、容疑者は国家の裏切り者として容赦なく連行、拷問。この映画での冷酷無比ぶりはすさまじい。弁明の余地もない。きっと今の北朝鮮はこんな感じ。粛清の嵐。

1933年の飢饉で多くの孤児が発生。ウクライナの孤児院から逃げ出す少年。森の中で出会った将校にレオという名前を与えられる。ソ連軍によるベルリン陥落でそこにいたレオはソ連国旗を掲げて写真に収まり英雄に。やがてMGBの有能捜査官として容赦なく裏切り者を検挙していた。

社会主義の楽園に殺人事件は存在しないというタテマエなので、真実を知りたいとか、犯人を追うとか、それはそのまま国家への反逆。みんな知らんぷり。警察は市民の監視で忙しい。少年の死体発見時の状況も当局は嘘を重ねていく。

スパイ容疑で密告されると突然連行されていく。見てはいけない。抗議しても質問してもいけない。
農民の家も襲撃。裏切り者をかくまった者はその場で妻もろとも射殺。だが、部下のワシーリーが子供も殺そうとすることには激怒。

いい人そうだが、主人公レオ・ディミドフ(トム・ハーディ)も党国家の走狗。殺伐としてる。友人の息子が殺されたことが明らかでも事故死として報告。やがて妻にスパイ容疑がかけられるのだが、これって絶対的服従のテスト?妻をかばうと左遷され民警に落とされ地方都市へ。
絶望的状況下で妻と一緒に連続少年殺人の犯人を追う孤独な戦い。

サイコシリアルキラーを追うサスペンススリラーとして見たのだが、ほとんどがソ連というスターリン独裁国家の異常性を描いてる。「この国では真相を求めることは危険」こんな国でどう生きられる?

平穏無事に出世する正解はどこにもない。ソ連市民は全員愚鈍化。目立たないようにふるまい死んだような眼をする。独裁国家は怖い。
市民を逮捕して不幸にする主人公も、連続殺人鬼もともに孤児育ち。絶望的に暗い。ぜんぶスターリンのせい。

登場人物たちがみんな醜悪。アクションにハラハラするけど、べつにだれも応援したくもかばいたくもならないw 遠い異国の遠い過去。今の日本人にはこの時代のロシア人のメンタリティーにそれほど共感もできない。見終わっても気分悪いまま。

スターリン時代のソ連を舞台にした連続殺人鬼を追うサスペンス作というとてもユニークな作品。当局の不寛容さと残酷さが強烈。ロシアからすると西側による史実歪曲映画だそうだが、けっこういい線いってリアルにスターリン体制下を描けてたように感じた。

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