2016年7月9日土曜日

YASHICA 35-ME を手に入れた

YASHICA 35MEというカメラを、もう昨年秋ごろのことだが、いつものようにジャンク箱から拾い上げた。
ファインダーのガラスが外れている。それに巻き上げてシャッターを切るとパチーンという威勢のいい音はするものの、シャッター羽根がまったく動いていない…。

500円の値札が付いていた。修理できるかな…と躊躇した。だがこれまで何台も修理に挑んできた自分ならできるかもしれない。修理できなかったとしても授業料だと思えばいい。カメラ立国日本の偉大な産業遺産と触れ合うという高尚な趣味。

それに藤子・F・不二雄マンガにそのまま出てきそうなTHIS IS カメラ!というムダのないデザインが良い。自分にとって初ヤシカ!ちょうどヤシカも1台欲しいなと思っていたところだったのだ。

YASHICA 35MEは1973年製で輸出用モデルとして発売。翌年から国内でも販売された目測ゾーンフォーカスのAEカメラ。シャッター速度は1/30~1/650、レンズはYASHINON 38mm/F2.8

で、2週間かけて少しずつ難関を突破しながら分解・修理・清掃して上の写真の状態に仕上げた。
トップカバーを外し、底部を外し、前面の皮をはがしてレンズ部分をバラしていく。やっとシャッターユニットにたどり着く。花ネジが慣れていないので取り外すときに周囲を傷つけまくり。

リード線は作業の邪魔なのでハサミで根元から切り取った。もちろん再組み立てのために、どの線とどの線が付くのかを正確に記憶しておかないといけない。
で、メーターもはずしたYASHICA35MEのシャッターユニットがこれ。
このシャッターが粘っていて、ポッチを指で動かしてもなんとなくしか動かない。カバーを開けるとき内部から黒い土のようなものが出てきた。劣化したモルトがシャッター羽根に入り込み、油分と固着しているんだと予想。
これがYASHICA35MEのシャッターユニットの構造。

②はセルフタイマーのレバー。その上にある金色の巨大な歯車ユニットはまるまるセルフタイマーのためのもの。本来であれば注油したいところだが、シャッターに油が回るとやっかいなのでよしておく。セルフタイマーも本調子とは言えないが、自分はほとんどセルフを使わないし、この時代のカメラのセルフはなるべく使いたくない。今回の不具合とは関係ないので省略スルー。

③のレバーでシャッターをチャージ、①がシャッターボタン。シャッターを切ると留め金が外れて、④の爪が⑤の金色の円盤を蹴り上げる。この円盤が回転してバネで戻ってくる間、シャッターが開いている。

円盤は上にある銀色のてこと連動している。⑨の露光メーターが読み取った針の位置を測定し、⑥アームが、シャッターが開いているべき時間と空間を伝達する。⑦の間隔がシャッター速度と絞りの開きを決める。

ガイドナンバーを決めるダイヤルをオートの状態にするとシャッター速度が1/25になる。つまり⑦の間隔こそがF2.8で1/25。アーム先端の斜めになってるエッジが、このカメラの露出をシャッターユニットに決めさせる。

自分が手に入れたジャンク品は⑤の円盤部か、その上のてこ、シャッター羽根のいずれかが動きが悪いようだ。シャッターを切ってもぼんやりとしか動かない。たまにまったく動かないときもある。これでは写真を撮ったとき、すべてアンダーになるか、何も写っていないだろう。

だがしかし、シャッター機械部分とシャッター本体を接合している4つネジのうち、2本のネジ頭を酷い虫歯のごとくナメてしまった…。

さて困った。考えたあげく、このシャッターユニットまるごとベンジンをなみなみに注いだタッパーに漬け置き洗浄することにした。これでよくなるかもしれないし、ネジがはずれるかもしれないし。
で、そのままキャンプに出かけ、72時間後に取り出した。そして24時間乾燥させたら…、気持ちいいぐらいにパコーンとシャッターが全開するようになった。
(なお、タッパーは密封性でベンジンの保管に適していないため、使用後は別の薬品を入れるためのビンに移し変える。別の用途のために取っておく。)
で、次に再組み立て。これがまたやっかい。リード線はほとんど取り替えた。1センチほど長めにして取り付けておく。シャッターユニットの小さな穴(内部でカギ状に曲がってる)に3本リード線を通すのは相当に手先が器用でないとムリ。細かいハンダづけ作業。すごく時間がかかるので気長に少しずつやるのがよい。

あと、自分の手に入れた固体には、AUTOとガイドナンバーを選ぶリングにクリック感を持たせるための鉄球が欠落していた。カメラの内部に落ちてないのか?とも思ったのだがいくら探してもない。
で、渋谷へ行って東急ハンズでリード線と一緒に、2mmステンレスボールを買ってきた。

だが、ボールがデカくて穴に入らないw ちゃんと事前に大きさを測らないで買いにいくからこうなる。
しょうがないので穴よりやや大きいネジをねじ込んだり、ドライバーの先でぐりぐりやっていたらだんだん大きくなった。やがてスポっとはまりこんだまま2度と取れなくなってしまった…。

だが、球の中心がやや面よりも低い場所に安定してはまっている。結果オーライでそのまま利用する。本来であればスプリングの上に乗っかって回転している状態が正しいのだが、これでも十分にクリック感がある。それに、自分の残された人生でこのダイヤルを何回ぐりぐり回すのだろう?ここは妥協。

そして、ゆっくり考えながら組み立てる。レンズを外すときに、元あった場所や外れた場所にチェックの書き込みなんかをするのが本来なら正しいのだが、自分はわからなくなってしまった。なので、CDケースにコンビニレジ袋を貼り付けた簡易すりガラスをフィルム面に密着させ、シャッターユニットのポッチに輪ゴムで引っ掛けバルブにして遠景にピントが合ってる状態にする。

そしてレンズのヘリコイドを距離リングと固定するのだが、また難題。無限遠にしようとするとやたらに固い。試行錯誤の結果、レンズをやや浮かせた状態に回してから固定。
ここ、ネジ止めがしてあったけど、またいつか修理しないといけないかもしれないのでそのまま。固定ネジが3本あるから大丈夫だろう。

そしてやっと組み終わったかと思いきや、カウンターが「S」になってない…。また開いて手直しして閉める。そんな繰り返しの末に……
やっと、完成!!こうして見るとなんと愛らしい。今後また劣化モルトが悪さをしそうなので最後にモルトも交換。フェルトを適当に切って貼る。これもかなりめんどくさい作業だ。

あと、ファインダーのガラスを適切な場所にボンドで貼る。ここがこのカメラの欠点。ガラス板をはめ込むような溝がなく、ただ貼り付けているだけなので、またズレる可能性が高い。このガラスが外れた個体が多い。

電池はMR44水銀電池用を使用する設計になっているのだが、現在入手できないのでLR44で代用。電池ボックスがやや大きいのでアルミホイルなどで空間を埋める。cds素子が劣化しているかもしれないが、その分電圧が高いLR44を使うとなんとか調度いいかもしれない。窓の外に向けるとメーターの針も快調に動く。快調にシャッターも切れる。

いや~、カメラ修理って大変だ。こんなめんどくさくてストレスたまる作業もう2度としたくないw 

それではまたいつものようにフィルムを入れてテストに出かける。昼前に家を出るときは晴れていたので業務用フジISO100を入れて横浜へ出かけた。だが、午後はどんよりと厚い雲に覆われて、露出のメーターが地をはう感じだった。(昨年の12月ごろのこと)
ええっ?暗い曇りの日だったので、どうせ大してよく撮れていないだろうなとナメていた。今まで曇りの日はフィルムで撮るべきでないって考えていたけど、曇りの日のほうが味がある。

室内で撮った写真はメーターの針がほぼ一番下。なのでF2.8、1/30で撮っている。どれも予想外な写真が撮れた。これからは暗い室内でも思い切ってシャッターを切ってみよう。
横浜の街を遠景で撮った写真は角隅が流れている。

後日、晴天の日に撮った写真はこちら。
いや~、良い写りだわ~。YASHICA35ME、良いカメラだわ。自分で修理したので愛着もわく。

だが、1本目のフィルムを撮り終え、しばらく放置した後にいじってみたらまたシャッターに粘りがある。また分解するはめに…orz

どうやら配線をテキトーにぐしゃっと押し込んだだけだったので、リード線がシャッター機構と接触していたようだ。シャッターユニット右上のネジ穴の外側へ迂回して配線すればいいっぽい。再び組むとき短い線をハンダづけするというさらに難しい状況になってしまったので、またリード線をすべて交換…。

2 件のコメント:

  1. カメラ修理、素晴らしいです。当方も少しだけカメラ修理しますが、ここまで大変な修理はしたことがありません。愛着絶対に湧きますね。

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    1. カメラ修理を趣味にしようかと考えましたがめんどくさすぎてやめましたw それに、もうジャンクフィルムカメラが安く手に入らなくなってしまいました。

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