2016年6月19日日曜日

橋本愛 「くちづけ」(2013)

ようやくこの映画を見てみた。演劇人である宅間孝行の原作・脚本を、堤幸彦監督が映画化した「くちづけ」(2013)。

演劇の間合いとテンションで芝居が進む。映画としてリアルを追求するよりも演劇。すべてのシーンが家の中から一歩も出ない。
こういう評判のよかった芝居を映画にしました的な映画って、映画ファンからはあんまり歓迎されないんだよな…と思いつつ見る。

知的障害を持つ娘(貫地谷しほり)を連れて、住み込みで働ける自立支援を目的としたグループホームにやって来た元漫画家イラストレーターの初老男性(竹中直人)。
グループホームの仕事を手伝っている女子高生が橋本愛

DVDジャケットが明るくPOPな感じだが、やがて見るものすべてを絶望させる重くてヘビーな内容へと変貌していく。
知的障害者を家族に持つということがどういうことか教えてくれる。酷すぎる現実がそこにある。

知的障害を持った男女同士のグループホーム内の恋愛って、地上波ドラマでは見たことないな。ま、できないか。

知的障害者たちへどのような視線が向けられるか?橋本の友人だというギャル(デブ)がちん入。思ったことをそのまま言葉にしてつっこみまくり。コイツの出現がドラマにカオスをもたらす。「ごめん、あんな子だと思わなかった…」w

このホームに出入りする若い警察官の男、なにげに「刑務所内にいる人間には軽度の知的障害者が多い」という話をする。この発言に温厚で冷静な竹中演じる男が激怒。「冗談じゃないよ~」、自分としてはこの映画の最初のクライマックスだった。

この国の司法と警察は戦中・戦後と多くの冤罪事件を偏見にまかせたままに知的障害者に押し付けてきた。今もなんら反省がないから末端の警察官からこんな発言が出る。
自分は昭和の名刑事と呼ばれる人々、日本の警察の自画自賛ぶりをまったく評価していない。

この映画、かなりコミカルでフザけた要素と展開を見せつつ、熱いメッセージの詰まった大変に真面目なテーマの演劇舞台映画だった。

「自分が死んだらこの子は浮浪者か刑務所に…」と思いつめた男が、最愛の娘に手をかける…という、最悪に哀れな末路に、見るものすべてが絶望に落とされる。涙する。

だが、新聞の三面記事ではめずらしくもないニュースかもしれない。老人が老人の介護に疲れた末に…というニュースはよく聞く。日本の福祉はすでに完全敗北…。
橋本を見ていてかわいくて何度もタメ息が出た。

すごくテンション高い演技でベテラン舞台役者たちと台頭に渡り合う。
おい、おっさんたち!橋本愛の前でち●ことか何度も言うな!

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