2015年5月24日日曜日

市川崑 「悪魔の手毬唄」(1977)

市川崑「悪魔の手毬唄」も見る。TBSのテレビドラマ版は1977年の夏、映画版は4月公開なのでこちらのほうが先。

もう何度も見ている映画だけど、もう何から何までが完璧。無駄を一切省いた隙のないキリリと引き締まった構成。テンポの良さと映像美。さすが市川崑だわ。星5つの出来栄え。

登場人物の会話の節々にグギャと平家琵琶のように挟まれるエレキギターやピアノが現代音楽っぽい。会話に説明っぽさがないのに物語と登場人物が理解できる素晴らしい脚本。

人間ドラマを見せるカメラの構図の斬新さと妙。

三味線弾いてる岸恵子のところへ仁礼の旦那(辰巳柳太郎)がやってきて昔話になりそうになって、岸「云わんでつかあさい。思い出すのも耐えられんですけん。あの沼のことは」のセリフに間髪入れず「悪魔の手毬歌」のタイトルとテーマ音楽が始まる。ここがホレボレするほど完璧。自分はこのシーンが1分ほど前から「来るぞ来るぞ」と緊張する。

4年ぶりの再会を喜ぶ金田一さん(石坂浩二)と磯川警部(若山富三郎)のシーンのリアルな暖かさ。動きにも会話にも足したり引いたりするところがまったくない。仁科明子の雰囲気がヒロインにぴったり。名優たちの演技も見逃せない。

春江と恩田が逢引してた総社の宿のおかみ(山岡久乃)の金田一さんと話をしながら後方の襖を左手で閉めようとして、やっぱり右手で閉めるとか、今見ても新しい発見があるし面白い。

美術さんとロケハンも素晴らしい仕事をしてる。今ではもう出せない雰囲気が出まくってる。

この作品がなければ「金田一少年」も「TRICK」も存在していない。後世に多大な影響を与えた偉大な1本だ。石坂と若山が一緒に手紙を読みだすシーンはまんまTRICKで上田と山田で同じシーンがある。

PS. 先月9日に「犬神家の一族」で犬神竹子を演じた三条美紀の訃報を聞いた。86歳。ご冥福をお祈りします。

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