2014年9月14日日曜日

司馬遼太郎 「王城の護衛者」

司馬遼太郎の「王城の護衛者」という本を見つけたので買ってみた。講談社文庫の新装版。108円で購入。

幕末テーマの5編を収録した1冊。「人斬り以蔵」は新潮文庫版もあるけど、表紙が劇画っぽくて違う版を探してた。いつごろ書かれた作品なのか、本の何処を探しても書いてなくてわからない。

「王城の護衛者」 は会津中将・松平容保が主人公。自分は今までどうしてこんな政治的感覚に乏しい黒目が大きいひ弱そうな若者(26歳)が京都守護職という日本の運命を左右するような重大な職務についたのか疑問に思っていた。家老たちも反対したのだったが、政事総裁職・松平春嶽と将軍後見職・一橋慶喜の強引な説得に折れたため。

一時は長州を宮廷から追い出すのに成功した。だが、愚直で真っ直ぐなだけの容保は老獪な公卿たちや薩摩にはかなわない。気がつくと大阪城。春嶽も慶喜も変節。もうこの若者には何がなんだか分からなくなっていた。

容保は亡くなるまで孝明天皇からの直筆の手紙を大切に持っていた。容保を信頼し忠誠をよろこび、長州と公卿たちを奸賊と罵倒する私信。容保は泣いた。自分が楠正成だと思った。その書簡は「いまも松平容保の怨念は東京銀行の金庫にねむっている。」と書いて司馬はこの短編を閉じている。

「加茂の水」 では幼帝を薩摩と共に操った岩倉具視が主人公。佐幕派の逆臣と看做され洛北岩倉村で蟄居中に謀臣・玉松操という老人と図って倒幕の密勅も「錦旗」も偽造する。

岩倉具視という人物を自分は今までよく知らなかった。自分が見た幕末モノで岩倉はいつも怪物のような存在。ま、暗い部屋の中で他人のハンコで歴史を動かした人物。

「鬼謀の人」 桂小五郎の目を通して描かれる蘭医・村田六蔵こと大村益次郎の活躍。自分は靖国神社に大村益次郎という人の大きな銅像があることは知っていたのだが、どういう人なのか知らなかった。この本によると「容貌、醜劣」で言葉少なく愛想もなくそっけないが天才的戦術家。時代を先駆けたスーパーマンだったが、薩摩から憎まれ暗殺される……。

「英雄児」 は越後長岡藩の家裁で独裁者・河井継之助が主人公。自分はこの人物の名前を聞いたこともなかった。

勉強はまったくできなかったが、藩の財政をイッキに建て直し、利殖に励み、兵制を改革し、最新鋭の武器を大量に購入。北越の小藩でありながら武装中立の軍事集団をつくりあげたスーパーマン。薩長を「偽官軍」と看做して善戦。
この人は長岡をプロイセンにでもするつもりだったのか。生まれる場所と時代を間違えた「謙信の再来」とも云われた人物。死後、長岡の人々からも嫌われた……。

「人斬り以蔵」 岡田以蔵という人物のことも今回初めて知った。「龍馬伝」で佐藤健がやってた役ということぐらいしか知識が無い。武市半平太から「犬」程度にしか思われてない哀しい人斬り浪士で快楽殺人者。

というように、以上の幕末の登場人物を知るためには手軽に読める1冊。

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