2014年8月18日月曜日

吉高由里子の場合

ちょっと前に、電車の吊り広告で「吉高由里子 平成の吉永小百合」って書かれていてびっくりした。朝ドラはそこまで影響力があるのか。吉高は映画での仕事が多くCMでの変なテンション芸で、どちらかというとマニアックな男性ファンしかいないと思っていた。

今が旬なのかもしれない吉高由里子の資料もだいぶたまってきたので整理したい。自分はあまり吉高を追いかけていない。映画もドラマもすべて見たわけでもない。

もう1年ぐらい前に手にいれたSWITCH 2011年4月号「吉高由里子を知っていますか」

これは350円ぐらいがでよく見かけていたのだが、105円で見つけてそのまま購入。吉高基本書のひとつ。2011年の「婚前特急」を中心にしたインタビューと浜野謙太との対談、これまでの映画出演作と監督からのコメント、CM撮影に密着した全24ページ、空前の吉高特集号。

だが、この年の春は震災で「婚前特急」という映画は不運にも存在をあまり知られない作品になってしまった……。この映画で吉高は自分勝手でワガママで他の女の子に好戦的という「嫌な女の子」を演じた。実際に演じてみてどうだった?という質問に
「嫌でしたよ、わたしも」

「台本を読んでいても、演技していても、自分が喋る台詞も、全部『まったく好きになれない!』と思いながらやっていました。『なんでこんな女の子に5人の男の人がいいように振り回されているの?』って」
なおこの作品で前田監督は執拗で厳しいリハーサルを繰り返し、吉高は「次のテイクもNGだったら、わたしこの仕事辞める」と思うまでに追い込まれたという……。

酷い監督といえば「紀子の食卓」の園監督。2006年、16歳当時のことを語りだす
「監督からは『死ね!馬鹿野郎!』とか『もう現場来るな!』みたいな罵声をひたすら浴びせられて。あんな罵声野郎はホントにいないですね」

「あと覚えているのは、監督に『このシーンが終わるまではひと言も喋るな』って言われて、『はい』っていったのに速攻でエキストラの人に話しかけられちゃって、返事をした瞬間、バコーンって殴られて『喋るなって言ったろ!』って、ちっちゃい箱に閉じ込められて。『お前はそこに入ってろ』って」
インタビュアーによるとこんな酷い話を「嬉しそうに」語っていたという。
「でもそういう監督は今のところ最初で最後ですね。あとはみんな優しい監督ばかりで。その楽な部分に甘えていた。甘い蜜に吸い付いていたなという自覚は、少し前からあったんです」
と吉高の大人ぶりと、現場の偉い人の人間性の酷さを強く感じたインタビューだった。自分が役者なら速攻辞めてる。訴訟に持ち込んで映画をぶっ潰してる。他人を痛めつけて、それで評価の高いものを作り出せているのだろうか。

この後、吉高は「蛇とピアス」という、これまたしょうもない作品に出演。精神が参ってしまい、正常な判断ができていなかったのかもしれない。映画ではヌードになってしまった。
「オールヌードということに(父は)絶対的に反対していたから。それで、わたしのほうはもともと自分に決まるとも思っていなくて、ふわふわしたまま行ったらふわふわ決まっちゃったから、オールヌードという横文字もわたしの中でちゃんと定まってなかったんです。『どういうことってああいうことだろうな』みたいな」
そんな大事なことが「ふわふわ」決まっていいはずがない。吉高がこの映画に出演したことは、自分は今でも疑問のままだ。

Switch201104a

だが、最大の危機は「蛇とピアス」クランクイン直前、2007年9月に交通事故に遭ってしまったことだった。最近ファンになった人は知らないかもしれないが、吉高由里子はこのとき生死の境を彷徨った。ICUから5日間出られなかった。
「交通事故に遭って、仕事を全部蹴ってしまったんです。事故の翌日、取材が13媒体入っていたらしいんですけど。」

「でも実は最初、自殺するんじゃないかと心配されていたみたいで。顔の半分がベローンって剥がれちゃっていたんです。顔だけじゃなく、右半身全部。でもどうなっているのか全然見せてもらえなかった。ただ、触るとすごいザラザラ、ボロボロする。どんなに払っても取れないんですよ。それで、鏡見せてくださいって言ったら、無いですって言われて。『無いわけないじゃん!』って。起き上がろうとしても腰を痛めていて、自分の力じゃ寝返りもまともに打てないし、トイレも行けない。」

「ある真夜中にバーンとベッドから落ちて、そのまま匍匐前進でトイレまで行ったんです。で、フッと鏡を見たら……(一部省略)とにかく包帯でぐるぐる巻きになっていて、まずそれにびっくりしたんですよ。包帯をしていることを忘れていたから。それで、『そうだ、傷が気になってたんだ』って思い出して、恐る恐る包帯を取ってみたら、皮膚が全部剥がれちゃってて。『やばい、どうしよう!』って、頭が真っ白になって、突然大声で笑い始めちゃったんです、トイレの中で。そうしたら看護婦さんが飛んできて『早まるな!』って。わたしがこういう仕事をしているのも病院は知っていたし、女の子だし、ものすごいショックを受けるから絶対に鏡は見せるな、トイレには行かせるなってお達しがあったらしいんです。」

「看護婦さんには『大丈夫です!絶対によくなります!』って言われたんだけど、『う、うん……』って返事してそのまま寝ちゃいました。三日間ぐらい起きなかったですね。結局、フィルムみたいのをずっと貼ってたら、整形も何もしないで綺麗に治っちゃったんです。いやあ、若くてよかったなって」

「怪我の容態は当初は全治半年から一年と言われていたんです。でも一ヶ月で退院しました」
それ、笑いながら話せることじゃないだろ。吉高は若いながら地獄を見てきたのだった。以後吉高は生きてることに感謝しながら、女優として大活躍をつづけている。

他人を罵倒することはその人の運命を左右する。望んでいない仕事を任せられることも。その結果、ずっとそのことをぼんやりと悩んで考え続けるようになるかもしれない。命を奪うことになるかもしれない。

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