2014年6月29日日曜日

司馬遼太郎 「燃えよ剣」を読んだ

司馬遼太郎の代表作のひとつといっていい「燃えよ剣」(上下巻 新潮文庫)を読み終わった。面白かった。さすが国民的作家だ。

司馬遼太郎、見てきたかのように土方歳三の情交を描く。いきなり多摩の「夜這い」祭りから書き始める。日本って不思議だ。そんな祭りが大正時代ぐらいまでつづいてた。

東京の多摩の田舎で農家に生まれ、京都で人を斬り殺していた新撰組の土方が、最終的に函館で戦死するまで、自分は何もイメージできていなかったので、この本は幕末を理解するのに大いに役立った。

遠い昔、函館の五稜郭に行ったことがあるのだが、ほとんどなにも印象に残っていない。これを読んでから行けばいろいろと楽しめただろうと思う。

NHK大河ドラマは戦国時代と幕末ばっかりだ。この時代の面白さは格別。だが、それにしても人が死にすぎた。

上巻は八王子で斬った相手との因縁で七里研之助に付きまとわれる。京都に上ると長州土佐の浪士を斬りまくる。下巻になると京都での殺人集団の青春も終わって大政奉還、鳥羽伏見の戦い、戊辰戦争、函館政府まで……。

下巻は読み進めるうちにだんだんと虚しさと哀しさが満ちてくる。墓碑銘を読んでいく。時代に逆らおうとした若者たちの大きすぎる犠牲。江戸幕府の最期はあまりにあっけない。多くの人が早々に幕府を諦めて、変節していく。喧嘩だけが取り柄の土方歳三と云う人は変人すぎた。

愛想のまったくなかった土方は意外にも俳句が趣味。聞かされる沖田総司の心の声(つっこみ)が清涼剤のような楽しさだ。沖田総司もこの本にはたくさん登場するが、その最期は孤独死……。人を斬った者の哀れな末路。

2004年にNHK大河ドラマで「新選組!」が放送された。近藤勇の特技に拳を口に入れるという設定があったかと記憶しているのだが、これはてっきり三谷幸喜の創作だと思っていた。だが、司馬遼太郎は「燃えよ剣」下巻で沖田総司にこんな台詞を言わせている。
「あんな大きな口のひとは日本中にいないでしょう。京都で酒宴をしてたときなど、土方さんはあれで案外、端唄の一つもうたうんですよ。ところが近藤さんの芸ときたら、拳固を口のなかに入れたり出したりするだけで、それが芸なんです」
ええぇっ?!それ、司馬が最初?それとも史実?

PS. 「坂の上の雲」全巻と「龍馬がゆく」全巻をオトナ買い。全部古本だけど。これ、いつ読み終わるかわからない。今年中にどちらか読めるかな。他にも買いだめしてある本がたくさんある。
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2 件のコメント:

  1. 川崎鶴見U2014年6月29日 20:07

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    子母澤寛の「新選組始末記」を読まれるといいと思いますよ。
    複数の出版社から文庫で出ているし、あらゆる「新選組」のバイブルですからね。
    ドキュメンタリーというより歴史語りという感じ。
    生の「新選組」や個々の隊士のキャラも全部ここからきています。
    司馬遼太郎も自分の「新選組」を創るにあたっては、子母澤に教わったそうです。
    ��「座頭市」や大河ドラマの「勝海舟」の原作者でもあります)

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    沖田総司に子供の頃遊んでもらったという老婆に司馬も直接取材しているけど、子母澤寛は多くの関係者に直接話を聞いているのがすごい。子母澤がいなければ司馬はこんなにいきいきした作品は書けなかった。
    子母澤の本はまだ1冊も開いたことがない。

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