2014年5月17日土曜日

新田次郎 「武田信玄」全4巻 読んだ

Nitta_shingen
新田次郎「武田信玄」(文春文庫)全4巻(風の巻、林の巻、火の巻、山の巻)は古本屋で状態のいいものでも1冊105円で容易に見つけられる。もう1年以上前に4冊まとめて買っておいたものをようやく読み通した。

新田次郎は諏訪の出身で、隣国甲斐の武田信玄には高い関心を持っていて信玄の本をよく読んでいたそうだ。史実に忠実でありたいということで、山本勘助は軍師ではなく今川の二重スパイとしてしか登場しない。

風の巻 青年時代の武田信玄(武田晴信)を、信虎追放から、諏訪頼重、小笠原長時、村上義清といったライバルたちとの小競り合い、高遠、佐久、安曇などの信濃を手中にしていくまでを描く。

「英雄色を好む」とばかりに、信濃の里美(禰津氏)、湖衣姫(諏訪氏)といった絶世の美女を手に入れる。「労咳(肺の病)」になると性欲が強くなるという記述は本当か?家臣から温泉療養を強く勧められても、温泉からこっそり抜け出して逢いに行く。この二人の美女の記述が多い。

司馬のように面白さは感じないかもしれない。労咳で疲れやすく怒りっぽい青年。無謀な戦争で有能な家臣を次々に失い、数百人単位で兵を失う。佐久攻略では残酷な一面を見せた。

林の巻 色と欲の信玄、さらに油川氏の娘も側室にゲット。ええっ?!巻末のあとがきによると湖衣姫、里美、恵理って名前は新田次郎が勝手にネーミングした名前!?この時代、女性はどこの氏族の出なのかだけが重要で、下の名前は歴史書に残らない。げ、湖衣姫が勝頼を生んだのは15歳のとき!

三国同盟、長尾景虎、織田信長、そして永禄4年の川中島大合戦へ。ぶっちゃけ活字で合戦の進行状況を読んでいても、土地のイメージができなくてよくは理解できない。勘助の死は今までのイメージと違ってた。「甲陽軍鑑」によらない山本勘助像を描く。

火の巻 もはや上杉謙信はライバルではない。40代後半の信玄は碓氷峠も越える。嫡男義信の逆心、信長の上洛に焦るも、勝頼のたくましい成長、そして駿河侵攻。そして北条の小田原も攻撃。そして三増峠の合戦での大勝利。信玄が小田原も攻撃してたって知らなかった。今川の没落っぷりが悲哀。

山の巻 北条との和が成立すると織田・徳川との対立が始まる。水軍を見方につけたり、伊勢長島顕証寺との姻戚関係やら工作やらで意外にも真田昌幸が大活躍。比叡山の焼き討ちがひどい。信長の人間性は酷い。

そして遠州攻略と三方ヶ原の合戦へ。信玄はず~っと病弱だったのが印象的。信玄終焉の地と遺骨の行方には諸説あってよくわかっていない。自分は野田城攻撃のときに銃撃されたことが元で伊那で死んだって聞いてたけど、新田版武田信玄はその説をまったく採らない。新田次郎は様々な資料から合理的に選んで採ってる。

いや~、長かった。歴史読本に100ヶ月間かけて100回連載されたものなので、それは長いはずだ。小説としては自分にとって最長読書だった。最初のほうはもう覚えていない。膨大な登場人物と死者の数。

今、自分は武田信玄にとても詳しい状態だ。新田次郎には「武田勝頼」という小説もあるが、いずれ読むかもしれない。

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