開始してしばらく、この映画の舞台はいつ頃だろう?と悩み始める。おそらく80年代。景気がいいみたいなのでバブル初期?って考えながら見ていた。主人公の長崎の父親がライオンズファンだったことから平成以前ではないかと推測していた。
吉田修一は1968年生まれ、ということは、1987年か88年に大学入学の年なのでその時代に違いない。「ノルウェイの森」よりも20年ほど後の時代の東京での大学生ライフを知る映画。80年代に見えるように美術衣装スタッフが努力したことが感じられる。
この映画、ついうっかり感動してしまった。いい映画だったと言っていい。どこにも感動を押し付けるところがない。
入学式の日に知り合った朝倉あきが「初対面ですよね?!」と池松に怒り出し泣き出すシーンから「何かおかしい」って気づき始める。固定カメラワンカットが長い!予測の1.5倍は引っ張る。そのぶん才能溢れる役者たちの演技を心行くまで堪能。
80年代と、十数年後の世之介が死んでしまった後とを回想して行き来するのだが、深く関わったはずの人々の反応が意外にドライ。そう、この映画は泣かせようと強いる部分がない。画面だけ見てると主人公が死んでしまったことがわからない。
ヒロイン吉高はようやく登場したかと思えば「出オチ」みたいな存在。廃土処分業者の社長のお嬢様。登場するたびに独特のテンションで笑いを誘う。吉高、それほど美人と思うことは少ないが、とんでもない個性派でギリ可愛い。
プールで水着のシーンがあるのだが、戦前の上流階級みたいな水着。アニキたちがメンズノンノ時代の風間トオル、阿部寛みたいだった。夜の海岸でデートしてると難民がボートで上陸。この時代はこんな事があったのか。このシーンは後に吉高お嬢様が選ぶ仕事の伏線になってる。
綾野剛が夜に公園に行きたがる理由がリアルすぎた。伊藤歩と黒川芽以を久しぶりに確認できた。池松壮亮、江口のりこ、脇役たちも存在感を出していた。
だがやはり、信じられないほどのずうずうしさと人懐こさを持つ好青年を演じた高良健吾が素晴らしかったように思う。
この映画の終わりのほうで主人公はカメラマンと出会い写真に目覚める。バルナックライカっぽいカメラを持っているので調べてみたらCanon IV- Sbって。カメラ初心者大学生に貸すようなカメラじゃない。そりゃ失敗写真だらけになるわ。
かつて青春時代をいっしょに過ごした友人、恋人、みんなやがて別れて記憶が薄れていく。昔あんなヤツがいたなぁと。こんなことがあったなぁと。そうやってみんな思い出だけを積み上げ抱えて生きていく……。名場面だらけのとてもリアルで笑えるいい映画だった。
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吉田修一の本は書店でよく目につきますが、まだ手に取ったことがありません。
映画の「横道世之介」なかなか評判もいいようだし、
ブロガーさんの感想もいいので観たくなりました。
レンタルでもしましょうかね。
朝ドラの吉高。子役から変わったばかりですが、私は予想外にいいと思います。
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朝ドラ吉高、まだ1回も見ていない。
「横道」、吉高がふにゃふにゃした清楚なお嬢様でユニーク。