2014年4月9日水曜日

司馬遼太郎 「新選組血風録」(1962)

以前からこの本を読もうと思っていた。司馬遼太郎「新選組血風録」(角川文庫)。司馬遼太郎は国民的作家でとても人気が高くて、ほとんどの文庫本は105円で手に入るのだが、これはなかなか状態のいいものに出会えなかった。ようやく105円で見つけた。

実は、自分は新撰組が何なのか?今までほとんどまったく知らないで生きてきた。京都のお土産屋さんで水色の半被を売っているイメージしかない。これ、読んでみて驚いた。

新撰組って、幕末の京都を舞台に、血なまぐさい戦闘と殺戮、暗殺、隊士の粛清と棄て殺しに明け暮れていた、政権公認のヤクザみたいな組織じゃん!京都の治安悪すぎ!誰も怖くて逆らえない。京の町人たちからも忌み嫌われる。

局長の近藤勇と副長土方歳三は東京多摩の出身で、郷土の偉人扱いでわりと高感度を持っていたけど、とてもジャニーズや二枚目俳優が演じていい役じゃない。厳しい規律に背いた隊士は切腹、斬首されてしまう。脱退すら許されない。無能であっても粛清、殺される。完全にカルト集団。

近藤は芹沢鴨とその一派を暗殺して独裁者になって、伊東甲子太郎といったちょっとは学問があったり策士だったりした隊士はみんな殺してしまい、単純バカ殺人マシーンみたいな隊士のみ選りすぐった。

土方歳三は涼しい目元のハンサムな若者イメージに反して陰険。沖田総司はいつも子どもと遊んでるつかみどころのない不思議ちゃん。人の命も簡単に斬って棄ててた若者たちが不幸な最期をとげても同情はしない……。

新撰組の関係者や目撃者は昭和のはじめまで生きていたので、細かいエピソードもたくさん残ってる。殺人マシーン集団にあっても普通な人はいた。望まないのに隊士になってしまったり、妻子ができて命が惜しくなったり、40ちょっと過ぎなのに老人扱いされたり、そして衆道(大島渚の映画になってる!)……。司馬ならではの目線で隊士ひとりひとりのエピソードを、哀しみとユーモアを交えて語る。

土方 「沖田総司が妙な咳を最近しているんだが」
近藤 「咳って、どんな?」
土方 「蝶をたなごころに入れてぱたぱたさせているような咳かな」
近藤 「わからん!オマエの例え方はわからん!!」

どのエピソードから読み始めても構わない。さすが司馬遼太郎の本は面白い。ずっと手元に置いておきたい1冊だ。次は「燃えよ剣」を探して来よう。

0 件のコメント:

コメントを投稿