2014年3月6日木曜日

ダ・ヴィンチ 2005年10月号 長澤まさみと遠藤周作

長澤まさみが表紙のダ・ヴィンチ 2005年10月号を見つけた。とても状態がよかったので連れ帰った。105円。

映画「タッチ」公開時期のインタビュー。このころがアイドル女優長澤の第1期黄金時代か?まさみ18歳の夏。このころのインタビューがとても多い印象。
「原作では、南はずっとタッちゃんを想っていることになってますけど、二人の男の子に好かれて、どちらか一人に決めきれずっと迷っていたんじゃないかなって、私は思うんです。映画の中で、南が思わずタッちゃんにキスするシーンがあります。そのときはほっとけなくて、なぐさめたい気持ちと、恋する女の子としてすごくキスしたい気分になっちゃって、あ、今だっ!みたいな感じだったんじゃないかな。」
思わずキスしたくなる…って、認めない。俺も毎日まさみに傷つけられているのでなぐさめてほしい。

さて、この雑誌は「本読み」のための雑誌。まさみがこの表紙で手にしている本は遠藤周作「わたしが・棄てた・女」(講談社文庫)だ。なんでも、友達の母親に薦められて読んだそうだ。

というわけで、読んでみた。自分が手に入れたものは2010年の講談社文庫版。表紙のまさみが持っているものと違う。105円だったので即購入。

実はこの本が自分にとって初めての遠藤周作だった。遠藤周作と云うとカトリック信仰と、「沈黙」「海と毒薬」といったスーパーヘビーな重たい作品を思い浮かべる。「わたしが・棄てた・女」(1963)はどちらかというと通俗的な作風。先に読む遠藤周作があるように感じたが、まさみを理解するために手に取った。
戦後間もない東京、貧乏学生吉岡は器量に恵まれない田舎娘のミツを体目的で誘い出し、目的を遂げると棄て去った…。過酷な運命を背負いながら懸命に愛に生きていくミツ…というのがだいたいのあらすじ。そして、まさみのコメントを引用
「たった一度のことで、自分の人生が左右されてしまうなんて、今の時代ではなかなかないことですよね。日本にもこんな時代があったということは、もう本などでしか知ることができないけれど、読んでいて古い話とは思いませんでした。

『世界の中心で~』も少し前の話だけど、私たちの世代にもフィットしたように、この作品からもいろんなことを考えさせられました。読み終わったときは、ミツがあまりに報われなくて、かわいそうで、やりきれない気持ちになりましたけど、たった一度でも人生最高の時間をもてたミツはしあわせだったのかもしれない。

吉岡はミツを棄てたつもりでも、ずっと心に引っかかっていたんですよ。人生の中で完全に消し去ることのできる記憶なんてないんだなと思いました。体にしみついてしまったものは忘れられない。本のタイトルにはそんな吉岡の気持ちが表れていると感じました」
「ぼく」(吉岡)目線で書かれている箇所が読んでいてムカムカする。この大学生は他人の気持ちに無関心で冷たく、だらしなくずるい。「カネと女」、情欲と出世にだけ関心を持つドイヒー男。
男なら一度や二度こういうことあるでしょ?と何ら反省なし。こういう男は現代でもよくいるタイプ。自分も今まで何度も見てきた。

一方、森田ミツ目線の語りの悲哀が痛切。まったく救いがない。どうして、まさみの友達の母はこの本をまさみに薦めたのか?

前半を読んでいると、愚鈍な田舎少女が東京で悪い男に騙されて、体を許したら棄てられる……という展開なので、てっきり、東京の華やかな芸能界でひとりで生活する少女へ向けて、そんな目に合わないようにという「警告」「戒め」の意味でまさみに贈ったメッセージか?って思ってた。まさみもヒロインに自己を投影して読んでいたはずだ。
だが、それは間違いだった。この本はそれだけじゃない。

後半、ヒロインはハンセン病院へ入院する。さらに救いがない展開に。でも、いい本だと思った。友達の母は「ラストがいい」と薦めたそうだが、その通りだと思った。自分もついうっかり涙した。自分の心に深いダメージを残した1冊になった。高校生以上であればオススメ。

まさみも一回共演しただけの男とつきあうとか、この本を思い出してやめてほしい。野心的で頭のいい男はこんな思考と下心を持っている。

さて、この時期、まさみは「演じてみたいヒロイン」として、「天然コケッコー」の「そよちゃん」をあげていた。
「中学生や高校生の恋愛とは思えないくらい、大人の恋愛っぽく描かれているところがいいなぁって。大沢くんとそよちゃん、ほんとにいいんですよ。私は、ただ果てしなく恋愛の話ばかりのマンガってダメなんです。『タッチ』も恋愛だけではなくて、甲子園という夢に向かって一生懸命な人たちのスポーツものというのがよかったし、『天然コケッコー』はストーリー全体も細かいとことも本当にすばらしい作品なんです。そよちゃんは自分に似てるところもあるし、こんな子になりたいって思わせてくれる存在です」
「天然コケッコー」は2007年に山下淳弘のメガホンで、まさみより4つ年下の夏帆主演で映画化された。自分としては「タッチ」「ラフ」はいらないから、まさみの「そよちゃん」が見たかった。女優のしごとはタイミングが大事だな。
Masami_davinci200510c

2 件のコメント:

  1. 川崎鶴見U2014年3月6日 20:42

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    「私が棄てた女」は浦山桐郎の映画しか知らない。遠藤周作の原作は読んでいないけど、
    ブログを読む限り、どうも原作と映画は乖離しているようです。
    遠藤周作はやはり「イエスの生涯」。子供の頃だったけど震えるほど感動しました。
    その影響で、読書はずいぶんキリスト趣味に走ったけど
    いまは、ずいぶん日本的なキリスト像だったなあ・・と思っています。
    伊勢崎町のブックオフで長澤さん表紙のキネマ旬報を見つけました。
    2006年9月下旬号。表紙は長い脚を強調してすごく綺麗。他にインタビューと写真の3P。
    「涙そうそう」のころですね。
    「タイヨウのうた」各国上映のNEWSもほんとうにちょこっと。

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    映画になってるって知らなかった。
    次は「イエスの生涯」か「反逆」を読もうかと思ってたけど、この冬たくさん本を買いこんだ。
    そのキネマ旬報、出たとき買ったので持ってる。まさみが美しすぎる。「タイヨウのうた」の記事が載ってたって気づいてなかったかも。
    けど、ブックオフで見たこと一度もない。セカチューのとき大沢たかおと一緒に表紙をやった号がほしいけど、以前350円で見つけたけど高いのでスルーして以来一度も見ていない。

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